SHARE 大松俊紀アトリエによる「dusk」。建築家が継続的に探究するアルミ製椅子の一環。薄いアルミが浮いて見える状態を求め、4mm厚の二枚の板が“お互いを支え合う構造”の座面を考案。対比的な重量感のある脚と組合わせでも浮遊感を高める
大松俊紀アトリエが設計した「dusk」です。
建築家が継続的に探究するアルミ製椅子の一環として計画されました。建築家は、薄いアルミが浮いて見える状態を求め、4mm厚の二枚の板が“お互いを支え合う構造”の座面を考案しました。そして、対比的な重量感のある脚と組合わせでも浮遊感を高めました。
アルミニウムは、鉄や他の素材と違い、その表情は軽やかで、そして浮遊感があり美しい。
アルミニウムで椅子をデザインし始めた頃から、その浮遊感を強調するために、座面だけが浮いているように見える形態を考え続けてきた。
鉄板であれば耐えることの出来る薄い1枚の板も、柔らかい素材のアルミニウムの場合、3倍以上の厚みにするか、支え方を変えないと構造的に成り立たない。そこで、以前から薄い2枚の板がお互い支え合う構造の可能性を探ってきた。
アルミニウムの薄い板が翼のように空中に浮かび、夕暮れに沈む太陽と共に消えていく。そのような光景を思い浮かべていた。薄い翼のように、板を宙に浮かせるには、支える点は最小限にする必要があり、出来れば、支える点は一点にしたい。
そこで今回採用した形は、薄い翼のように反った4mm厚のアルミニウム板が、逆の形に反った脚に一点で接する。だがこの状態では、座った時に左右にバランスを取るのは非常に難しい。また、左右の先端近くに荷重をかけると、簡単にたわんでしまう。さらに、今までデザインしてきた椅子のように、100kgの荷重に支えられる構造を成立させるには色々と工夫が必要であった。
そこで真ん中に四角い穴の開いた2枚目の4mm厚のアルミニウム板を用意し、穴に脚を貫通させ、脚との接点を溶接する。その上に座面となる4mm厚のアルミニウム板を乗せ、両端を溶接し一体化することで、座面のたわみを抑えながらも左右のバランスを取ることが出来た。
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以下、建築家によるテキストです。
アルミニウムは、鉄や他の素材と違い、その表情は軽やかで、そして浮遊感があり美しい。
アルミニウムで椅子をデザインし始めた頃から、その浮遊感を強調するために、座面だけが浮いているように見える形態を考え続けてきた。
鉄板であれば耐えることの出来る薄い1枚の板も、柔らかい素材のアルミニウムの場合、3倍以上の厚みにするか、支え方を変えないと構造的に成り立たない。そこで、以前から薄い2枚の板がお互い支え合う構造の可能性を探ってきた。
アルミニウムの薄い板が翼のように空中に浮かび、夕暮れに沈む太陽と共に消えていく。そのような光景を思い浮かべていた。薄い翼のように、板を宙に浮かせるには、支える点は最小限にする必要があり、出来れば、支える点は一点にしたい。
そこで今回採用した形は、薄い翼のように反った4mm厚のアルミニウム板が、逆の形に反った脚に一点で接する。だがこの状態では、座った時に左右にバランスを取るのは非常に難しい。また、左右の先端近くに荷重をかけると、簡単にたわんでしまう。さらに、今までデザインしてきた椅子のように、100kgの荷重に支えられる構造を成立させるには色々と工夫が必要であった。
そこで真ん中に四角い穴の開いた2枚目の4mm厚のアルミニウム板を用意し、穴に脚を貫通させ、脚との接点を溶接する。その上に座面となる4mm厚のアルミニウム板を乗せ、両端を溶接し一体化することで、座面のたわみを抑えながらも左右のバランスを取ることが出来た。
浮遊する2枚の薄いアルミニウム板と相反するかのような重量感のある脚との組合せは、正面から見た時に、消え入りそうな浮遊感を座面に与えるであろう。
■建築概要
作品タイトル:dusk
デザイン:大松俊紀
製作:菊川工業株式会社
製作期間:2023年4月~2024年3月
写真撮影:大松俊紀
*この作品は、桑沢デザイン研究所における2023年度教員研究助成金で制作されました。
種別 | 使用箇所 | 商品名(メーカー名) |
---|---|---|
内装・造作家具 | 主材及び仕上げ材 | アルミニウム |
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Unlike iron and other materials, aluminum has a beautiful floating feel and light impression. Ever since I started designing chairs made of aluminum, I have continued to think of forms that emphasize the floating feeling, with only the seat appearing to be floating.
A single thin plate made of steel would be able to withstand it, but if it is made of aluminum, it will not be structurally viable unless it is made at least three times as thick or the way it is supported is changed. Therefore, I have been exploring the possibility of a structure in which two thin aluminum plates support each other.
A thin sheet of aluminum floats in the air like a wing, disappearing as the sun sets at dusk. I was imagining a scene like that. In order to make the plate float in the air like a thin wing, it is necessary to minimize the number of supporting points, and if possible, it is best to use only one supporting point.
Therefore, the shape I adopted this time is a 4mm thick aluminum plate that is curved like a thin wing, and touches the leg that are curved in the opposite shape at one point. However, in this state, it is extremely difficult to maintain balance from side to side when sitting.
Also, if a load is applied near the left and right tips, it will easily bend. Furthermore, in order to create a structure that could support a load of 100 kg, like the chairs I had designed up until now, various ingenuity was required.
Therefore, prepare a second 4mm thick aluminum plate with a square hole in the middle, insert the leg through the hole, and weld the contact point with the leg. By placing a 4mm thick aluminum plate that forms the seat on top of this and welding both ends together, I am able to balance the left and right sides while supporting the seat’s flexure.
The combination of the two floating thin aluminum plates and the contrastingly heavy legs gives the seat a floating feeling that seems to disappear when viewed from the front.
dusk
Design: Toshiki Omatsu
Material: aluminum
Manufacture: Kikukawa Kogyo Co., Ltd.
Design year: 04.2023 ~ 03.2024
Photo: TOSHIKI OMATSU
*This project is supported by Kuwasawa Design School Research grant 2023.