SHARE 田中裕之建築設計事務所による”さがみ野の家”
photo©太田拓実
田中裕之建築設計事務所が設計した神奈川県座間市の住宅”さがみ野の家”です。
photo©太田拓実
以下、建築家によるテキストです。
部屋と部屋、ものとものの隣接性を現在の住まい方や家族構成の変化などの条件に照らし合わせ、もう一度整理することで、明るく、快適な場所として住空間を再生することを目指しました。
この隣接性を考えるうえで重要な要素は大きく分けて2つありました。一つめは手入れのいき届いたひろく明るい庭、もう一つは暗く、けっして良好な状態とは言いがたい内部空間でした。
リノヴェーション後も残る、空間の記憶としてのこの庭を内部と関係づけること、また外部環境を内部の延長としてとらえて、心理的な広がりを持たせることで相互に良好な関係をつくる事ができました。また、隣接性という主題を採光と通風の問題として読み換え、開口部のデザインなどで採用することで、全体に調和とあらたなしつらえをもった空間ができました。
照明を、ある一定の場所を照らすという範囲を超えて、空間に相互に関係づけられる場所を創出する装置として室内に配置しました。具体的にはピンク(風呂と廊下)、イエロー(ベッドルームと玄関)、グリーン(リビングと収納)を2つの部屋(や場所)にまたがるように、ガラスやアクリル開口部をあけ、照明器具からの光を受けて空間に落とすことを考えました。つまり、照明器具からの光束、それを受ける受照面であるガラスや開口部、その先に照らされる空間という3段階です。
また、過度に照明器具に頼ることをやめ、外部に面する開口は、自然光をできるだけ多く内部に送り、その代わりに、自然光の届かない場所には積極的に照明器具で明るくするような配置計画をして省エネルギーを目指しました。さらに、外部を大きな照明器具と考え、その明かりが美しく切り取られ内部に注がれるような開口部のディテールにしています。そしてそれを一貫して内部の開口部においても踏襲し、統一感をもたせています。
■建築概要
所在地:神奈川県座間市
主要用途:住宅
主体構造:RC
延床面積:73sqm
竣工:2007年6月
設計:田中裕之建築設計事務所
担当 田中裕之、飯綱洋平
施工:セットアップ 福元成武
写真:太田拓実写真事務所
アートワーク協力(赤いペインティング):五月女哲平(青山|目黒)