桔川卓也 / NASCAによる、静岡・浜松市の「ヤタロー地産地消工場店」。バウムクーヘンで知られる企業の工場直売店。施主の“フードロス削減”の活動に着目し、理念を反映した“アップサイクル素材”で構成する計画を志向。地域産の小径木材で代表商品を想起させる“吊り什器”をつくる外観、敷地内の南側より見る。夕景 photo©淺川敏
桔川卓也 / NASCAによる、静岡・浜松市の「ヤタロー地産地消工場店」。バウムクーヘンで知られる企業の工場直売店。施主の“フードロス削減”の活動に着目し、理念を反映した“アップサイクル素材”で構成する計画を志向。地域産の小径木材で代表商品を想起させる“吊り什器”をつくる「ユアライブキッチン」 photo©淺川敏
桔川卓也 / NASCAによる、静岡・浜松市の「ヤタロー地産地消工場店」。バウムクーヘンで知られる企業の工場直売店。施主の“フードロス削減”の活動に着目し、理念を反映した“アップサイクル素材”で構成する計画を志向。地域産の小径木材で代表商品を想起させる“吊り什器”をつくる「治一郎ばうむ」コーナー photo©淺川敏
桔川卓也 / NASCAによる、静岡・浜松市の「ヤタロー地産地消工場店」。バウムクーヘンで知られる企業の工場直売店。施主の“フードロス削減”の活動に着目し、理念を反映した“アップサイクル素材”で構成する計画を志向。地域産の小径木材で代表商品を想起させる“吊り什器”をつくる「もったいないコーナー」からレジ側を見る。 photo©淺川敏
桔川卓也 / NASCAの外装デザインと店舗設計による、静岡・浜松市の「ヤタロー地産地消工場店」です。シーク設計がA工事の設計を行いました。
バウムクーヘンで知られる企業の工場直売店のプロジェクトです。建築家は、施主の“フードロス削減”の活動に着目し、理念を反映した“アップサイクル素材”で構成する計画を志向しました。そして、地域産の小径木材で代表商品を想起させる“吊り什器”をつくりました。施設の場所はこちら(Google Map)。
敷地は静岡県浜松市。治一郎のバウムクーヘンでも有名なヤタロー工場直売店の移転リニューアル計画である。
クライアントが昭和8年の創業以来、大切にしてきた「この街とともに」という想いを新しい形で表現すべく、「ヤタロー地産地消工場店」が始動した。「地元・浜松を元気にしたい」というクライアントの言葉が原動力となり、このプロジェクトを成功させたいという強い思いに駆られた。
私自身、18歳まで浜松で暮らし、大学進学で地元を離れて22年が経つが、いつの日か建築を通じて地元に貢献したいと考えていた。そのため、クライアントの想いに深く共感し、同じ目標に向かって取り組めると確信した。
ヤタローは製造小売業を主とし、商品開発から物流・販売までを自社で一貫して行う強みを持っている。この強みを活かし、「もったいない」をキーワードにアップサイクル商品を生み出し、フードロス削減の活動を続けている。
建築デザインにおいてもこの理念を反映し、ほとんどのマテリアルをアップサイクル素材で構成した。
売り場空間のシンボルとなる天井吊り什器は、使い道が難しい地元天竜杉の小径木材を用い、バラバラな状態の105角材をバウムクーヘンの輪型になるよう連ね、象徴的な売り場を創出した。
ライブキッチンの腰壁と垂れ壁は、工事の掘削土を用いた左官工事で仕上げた。土地に根ざした土の温もりと深みのある風合いを、店舗の中心となるキッチンに取り入れることを試みた。
他にも、再生紙と間伐材を組み合わせたペーパーウッドや、小さな木片や間伐材を原料とした建材など、さまざまな素材を用いて応えた。
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桔川卓也 / NASCAによる、静岡・浜松市の「ヤタロー地産地消工場店」。バウムクーヘンで知られる企業の工場直売店。施主の“フードロス削減”の活動に着目し、理念を反映した“アップサイクル素材”で構成する計画を志向。地域産の小径木材で代表商品を想起させる“吊り什器”をつくる外観、西側の駐車場より見る。 photo©淺川敏

桔川卓也 / NASCAによる、静岡・浜松市の「ヤタロー地産地消工場店」。バウムクーヘンで知られる企業の工場直売店。施主の“フードロス削減”の活動に着目し、理念を反映した“アップサイクル素材”で構成する計画を志向。地域産の小径木材で代表商品を想起させる“吊り什器”をつくる外観、敷地内の南側より見る。 photo©淺川敏

桔川卓也 / NASCAによる、静岡・浜松市の「ヤタロー地産地消工場店」。バウムクーヘンで知られる企業の工場直売店。施主の“フードロス削減”の活動に着目し、理念を反映した“アップサイクル素材”で構成する計画を志向。地域産の小径木材で代表商品を想起させる“吊り什器”をつくる風除室側から「治一郎ばうむ」コーナーを見る。 photo©淺川敏

桔川卓也 / NASCAによる、静岡・浜松市の「ヤタロー地産地消工場店」。バウムクーヘンで知られる企業の工場直売店。施主の“フードロス削減”の活動に着目し、理念を反映した“アップサイクル素材”で構成する計画を志向。地域産の小径木材で代表商品を想起させる“吊り什器”をつくる「治一郎ばうむ」コーナーから「マイベーカリーパーク」コーナーを見る。 photo©淺川敏

桔川卓也 / NASCAによる、静岡・浜松市の「ヤタロー地産地消工場店」。バウムクーヘンで知られる企業の工場直売店。施主の“フードロス削減”の活動に着目し、理念を反映した“アップサイクル素材”で構成する計画を志向。地域産の小径木材で代表商品を想起させる“吊り什器”をつくる「治一郎ばうむ」コーナー photo©淺川敏

桔川卓也 / NASCAによる、静岡・浜松市の「ヤタロー地産地消工場店」。バウムクーヘンで知られる企業の工場直売店。施主の“フードロス削減”の活動に着目し、理念を反映した“アップサイクル素材”で構成する計画を志向。地域産の小径木材で代表商品を想起させる“吊り什器”をつくる「治一郎ばうむ」コーナー photo©淺川敏

桔川卓也 / NASCAによる、静岡・浜松市の「ヤタロー地産地消工場店」。バウムクーヘンで知られる企業の工場直売店。施主の“フードロス削減”の活動に着目し、理念を反映した“アップサイクル素材”で構成する計画を志向。地域産の小径木材で代表商品を想起させる“吊り什器”をつくる「治一郎ばうむ」コーナー、什器の詳細 photo©淺川敏

桔川卓也 / NASCAによる、静岡・浜松市の「ヤタロー地産地消工場店」。バウムクーヘンで知られる企業の工場直売店。施主の“フードロス削減”の活動に着目し、理念を反映した“アップサイクル素材”で構成する計画を志向。地域産の小径木材で代表商品を想起させる“吊り什器”をつくる「ヤタローパン」コーナーから「マイフェイバリットパーク」コーナーを見る。 photo©淺川敏

桔川卓也 / NASCAによる、静岡・浜松市の「ヤタロー地産地消工場店」。バウムクーヘンで知られる企業の工場直売店。施主の“フードロス削減”の活動に着目し、理念を反映した“アップサイクル素材”で構成する計画を志向。地域産の小径木材で代表商品を想起させる“吊り什器”をつくる「ユアライブキッチン」 photo©淺川敏

桔川卓也 / NASCAによる、静岡・浜松市の「ヤタロー地産地消工場店」。バウムクーヘンで知られる企業の工場直売店。施主の“フードロス削減”の活動に着目し、理念を反映した“アップサイクル素材”で構成する計画を志向。地域産の小径木材で代表商品を想起させる“吊り什器”をつくる「ユアライブキッチン」から「もったいないコーナー」側を見る。 photo©淺川敏

桔川卓也 / NASCAによる、静岡・浜松市の「ヤタロー地産地消工場店」。バウムクーヘンで知られる企業の工場直売店。施主の“フードロス削減”の活動に着目し、理念を反映した“アップサイクル素材”で構成する計画を志向。地域産の小径木材で代表商品を想起させる“吊り什器”をつくるレジから風除室側を見る。 photo©静岡博報堂

桔川卓也 / NASCAによる、静岡・浜松市の「ヤタロー地産地消工場店」。バウムクーヘンで知られる企業の工場直売店。施主の“フードロス削減”の活動に着目し、理念を反映した“アップサイクル素材”で構成する計画を志向。地域産の小径木材で代表商品を想起させる“吊り什器”をつくる「治一郎ばうむ」コーナー photo©淺川敏

桔川卓也 / NASCAによる、静岡・浜松市の「ヤタロー地産地消工場店」。バウムクーヘンで知られる企業の工場直売店。施主の“フードロス削減”の活動に着目し、理念を反映した“アップサイクル素材”で構成する計画を志向。地域産の小径木材で代表商品を想起させる“吊り什器”をつくる「治一郎ばうむ」コーナー、什器の詳細 photo©静岡博報堂

桔川卓也 / NASCAによる、静岡・浜松市の「ヤタロー地産地消工場店」。バウムクーヘンで知られる企業の工場直売店。施主の“フードロス削減”の活動に着目し、理念を反映した“アップサイクル素材”で構成する計画を志向。地域産の小径木材で代表商品を想起させる“吊り什器”をつくる「治一郎ばうむ」コーナーから「ユアライブキッチン」側を見る。 photo©淺川敏

桔川卓也 / NASCAによる、静岡・浜松市の「ヤタロー地産地消工場店」。バウムクーヘンで知られる企業の工場直売店。施主の“フードロス削減”の活動に着目し、理念を反映した“アップサイクル素材”で構成する計画を志向。地域産の小径木材で代表商品を想起させる“吊り什器”をつくる「ユアライブキッチン」 photo©淺川敏

桔川卓也 / NASCAによる、静岡・浜松市の「ヤタロー地産地消工場店」。バウムクーヘンで知られる企業の工場直売店。施主の“フードロス削減”の活動に着目し、理念を反映した“アップサイクル素材”で構成する計画を志向。地域産の小径木材で代表商品を想起させる“吊り什器”をつくる「マイフェイバリットパーク」コーナー photo©静岡博報堂

桔川卓也 / NASCAによる、静岡・浜松市の「ヤタロー地産地消工場店」。バウムクーヘンで知られる企業の工場直売店。施主の“フードロス削減”の活動に着目し、理念を反映した“アップサイクル素材”で構成する計画を志向。地域産の小径木材で代表商品を想起させる“吊り什器”をつくる「マイフェイバリットパーク」コーナー photo©静岡博報堂

桔川卓也 / NASCAによる、静岡・浜松市の「ヤタロー地産地消工場店」。バウムクーヘンで知られる企業の工場直売店。施主の“フードロス削減”の活動に着目し、理念を反映した“アップサイクル素材”で構成する計画を志向。地域産の小径木材で代表商品を想起させる“吊り什器”をつくる「もったいないコーナー」から「青果」コーナーを見る。 photo©静岡博報堂

桔川卓也 / NASCAによる、静岡・浜松市の「ヤタロー地産地消工場店」。バウムクーヘンで知られる企業の工場直売店。施主の“フードロス削減”の活動に着目し、理念を反映した“アップサイクル素材”で構成する計画を志向。地域産の小径木材で代表商品を想起させる“吊り什器”をつくる「青果」コーナーから「ユアライブキッチン」側を見る。 photo©淺川敏

桔川卓也 / NASCAによる、静岡・浜松市の「ヤタロー地産地消工場店」。バウムクーヘンで知られる企業の工場直売店。施主の“フードロス削減”の活動に着目し、理念を反映した“アップサイクル素材”で構成する計画を志向。地域産の小径木材で代表商品を想起させる“吊り什器”をつくる「もったいないコーナー」からレジ側を見る。 photo©淺川敏

桔川卓也 / NASCAによる、静岡・浜松市の「ヤタロー地産地消工場店」。バウムクーヘンで知られる企業の工場直売店。施主の“フードロス削減”の活動に着目し、理念を反映した“アップサイクル素材”で構成する計画を志向。地域産の小径木材で代表商品を想起させる“吊り什器”をつくるレジ photo©淺川敏

桔川卓也 / NASCAによる、静岡・浜松市の「ヤタロー地産地消工場店」。バウムクーヘンで知られる企業の工場直売店。施主の“フードロス削減”の活動に着目し、理念を反映した“アップサイクル素材”で構成する計画を志向。地域産の小径木材で代表商品を想起させる“吊り什器”をつくる什器の詳細 photo©静岡博報堂

桔川卓也 / NASCAによる、静岡・浜松市の「ヤタロー地産地消工場店」。バウムクーヘンで知られる企業の工場直売店。施主の“フードロス削減”の活動に着目し、理念を反映した“アップサイクル素材”で構成する計画を志向。地域産の小径木材で代表商品を想起させる“吊り什器”をつくる什器の詳細 photo©静岡博報堂

桔川卓也 / NASCAによる、静岡・浜松市の「ヤタロー地産地消工場店」。バウムクーヘンで知られる企業の工場直売店。施主の“フードロス削減”の活動に着目し、理念を反映した“アップサイクル素材”で構成する計画を志向。地域産の小径木材で代表商品を想起させる“吊り什器”をつくる什器の詳細 photo©淺川敏

桔川卓也 / NASCAによる、静岡・浜松市の「ヤタロー地産地消工場店」。バウムクーヘンで知られる企業の工場直売店。施主の“フードロス削減”の活動に着目し、理念を反映した“アップサイクル素材”で構成する計画を志向。地域産の小径木材で代表商品を想起させる“吊り什器”をつくる什器の詳細 photo©淺川敏

桔川卓也 / NASCAによる、静岡・浜松市の「ヤタロー地産地消工場店」。バウムクーヘンで知られる企業の工場直売店。施主の“フードロス削減”の活動に着目し、理念を反映した“アップサイクル素材”で構成する計画を志向。地域産の小径木材で代表商品を想起させる“吊り什器”をつくる什器の詳細 photo©淺川敏

桔川卓也 / NASCAによる、静岡・浜松市の「ヤタロー地産地消工場店」。バウムクーヘンで知られる企業の工場直売店。施主の“フードロス削減”の活動に着目し、理念を反映した“アップサイクル素材”で構成する計画を志向。地域産の小径木材で代表商品を想起させる“吊り什器”をつくる什器の詳細 photo©淺川敏

桔川卓也 / NASCAによる、静岡・浜松市の「ヤタロー地産地消工場店」。バウムクーヘンで知られる企業の工場直売店。施主の“フードロス削減”の活動に着目し、理念を反映した“アップサイクル素材”で構成する計画を志向。地域産の小径木材で代表商品を想起させる“吊り什器”をつくる什器と床の詳細 photo©淺川敏

桔川卓也 / NASCAによる、静岡・浜松市の「ヤタロー地産地消工場店」。バウムクーヘンで知られる企業の工場直売店。施主の“フードロス削減”の活動に着目し、理念を反映した“アップサイクル素材”で構成する計画を志向。地域産の小径木材で代表商品を想起させる“吊り什器”をつくる外観、敷地内の南側より見る。夕景 photo©淺川敏

桔川卓也 / NASCAによる、静岡・浜松市の「ヤタロー地産地消工場店」。バウムクーヘンで知られる企業の工場直売店。施主の“フードロス削減”の活動に着目し、理念を反映した“アップサイクル素材”で構成する計画を志向。地域産の小径木材で代表商品を想起させる“吊り什器”をつくる外観、敷地内の南西側より見る。夜景 photo©淺川敏

桔川卓也 / NASCAによる、静岡・浜松市の「ヤタロー地産地消工場店」。バウムクーヘンで知られる企業の工場直売店。施主の“フードロス削減”の活動に着目し、理念を反映した“アップサイクル素材”で構成する計画を志向。地域産の小径木材で代表商品を想起させる“吊り什器”をつくる配置図 image©NASCA

桔川卓也 / NASCAによる、静岡・浜松市の「ヤタロー地産地消工場店」。バウムクーヘンで知られる企業の工場直売店。施主の“フードロス削減”の活動に着目し、理念を反映した“アップサイクル素材”で構成する計画を志向。地域産の小径木材で代表商品を想起させる“吊り什器”をつくる平面図 image©NASCA

桔川卓也 / NASCAによる、静岡・浜松市の「ヤタロー地産地消工場店」。バウムクーヘンで知られる企業の工場直売店。施主の“フードロス削減”の活動に着目し、理念を反映した“アップサイクル素材”で構成する計画を志向。地域産の小径木材で代表商品を想起させる“吊り什器”をつくる断面図 image©NASCA

桔川卓也 / NASCAによる、静岡・浜松市の「ヤタロー地産地消工場店」。バウムクーヘンで知られる企業の工場直売店。施主の“フードロス削減”の活動に着目し、理念を反映した“アップサイクル素材”で構成する計画を志向。地域産の小径木材で代表商品を想起させる“吊り什器”をつくる吊り什器詳細図 image©NASCA

桔川卓也 / NASCAによる、静岡・浜松市の「ヤタロー地産地消工場店」。バウムクーヘンで知られる企業の工場直売店。施主の“フードロス削減”の活動に着目し、理念を反映した“アップサイクル素材”で構成する計画を志向。地域産の小径木材で代表商品を想起させる“吊り什器”をつくるアクターネットワーク図 image©NASCA
以下、建築家によるテキストです。
ヤタロー地産地消工場店
敷地は静岡県浜松市。治一郎のバウムクーヘンでも有名なヤタロー工場直売店の移転リニューアル計画である。
クライアントが昭和8年の創業以来、大切にしてきた「この街とともに」という想いを新しい形で表現すべく、「ヤタロー地産地消工場店」が始動した。「地元・浜松を元気にしたい」というクライアントの言葉が原動力となり、このプロジェクトを成功させたいという強い思いに駆られた。
私自身、18歳まで浜松で暮らし、大学進学で地元を離れて22年が経つが、いつの日か建築を通じて地元に貢献したいと考えていた。そのため、クライアントの想いに深く共感し、同じ目標に向かって取り組めると確信した。
ヤタローは製造小売業を主とし、商品開発から物流・販売までを自社で一貫して行う強みを持っている。この強みを活かし、「もったいない」をキーワードにアップサイクル商品を生み出し、フードロス削減の活動を続けている。
建築デザインにおいてもこの理念を反映し、ほとんどのマテリアルをアップサイクル素材で構成した。
売り場空間のシンボルとなる天井吊り什器は、使い道が難しい地元天竜杉の小径木材を用い、バラバラな状態の105角材をバウムクーヘンの輪型になるよう連ね、象徴的な売り場を創出した。
ライブキッチンの腰壁と垂れ壁は、工事の掘削土を用いた左官工事で仕上げた。土地に根ざした土の温もりと深みのある風合いを、店舗の中心となるキッチンに取り入れることを試みた。
他にも、再生紙と間伐材を組み合わせたペーパーウッドや、小さな木片や間伐材を原料とした建材など、さまざまな素材を用いて応えた。
設計から完成までの約2年間、発注者と設計者がともに浜松の未来を元気にしたいと願い、無事にオープンを迎え、未来への第一歩を踏み出した。
新しい「おいしい」を、この街のために。
(桔川卓也 / NASCA)
地域のプラットフォーマー
設計するにあたって物販施設のビジネスモデルを考えてみる。
スーパーマーケットは、私たちの生活に密接に関係している。しかし、その実態はメーカー(生産者)→問屋→各店舗→個人(消費者)という流通経路であり、生産者と消費者は離れており、流れは一方通行である。
一方、道の駅はメーカー(生産者)→道の駅→個人(消費者)という流れで、地域に特化し、生産者と消費者をつなげる仕組みとなっている。ただし、道の駅は基本的に生産者が持ち込んだ商品を販売する場であり、建築は場所を提供する機能に留まる。
インターネットの世界では、メルカリは個人と個人をつなぐ仲介プラットフォームとして存在する。Amazonは店舗と消費者をつなぐプラットフォーマーであり、独自の配送機能も備えている。
ヤタロー地産地消工場店では、新しいビジネスモデルを目指した。
地域の素材を使用した商品を店舗で販売し、地域の生活を支えながら地域社会に貢献することを目標とする。
地域の食文化を支えるプラットフォーマーとして、ヤタロー、地域の店舗、そして消費者がそれぞれ利益を得られる関係を構築した。リアル店舗が個人と個人をつなぐプラットフォーマーとなるため、競合他社との協働や異業種とのコラボレーションを独自の方法で推進した。
浜松のような車社会では、広い駐車場を持つロードサイドの大型店舗が強く、街の小さな小売店はシャッター街になりがちである。長年地域に愛されてきたヤタローだからこそできることがある。
ヤタローは毎朝、地域のパン屋や農家を訪問して商品を集荷し、買い取った商品を店舗で販売する。小規模な店舗では売れ残った商品は廃棄せざるを得ないが、ヤタローが買い取ることでリスクがなくなり、安心して商品を供給できる。
ヤタローでは、売れ残った商品を独自の加工技術で活用し、例えばパンの耳をラスクに変えるなど、フードロス削減にも貢献している。このように地域の資源を集め、加工することで新たな付加価値を創出している。
さらに、店舗では出店者の顔写真や各店舗のポップを展示し、ヤタローに訪れた人々が出店者の店舗に興味を持ち、足を運ぶきっかけを提供している。
こうしてヤタロー地産地消工場店は、単なる販売の場ではなく、個人と個人をつなぎ、地域全体が活性化する地域のプラットフォーマーとして誕生した。
(桔川卓也 / NASCA)
■建築概要
作品名:ヤタロー地産地消工場店
所在地:静岡県浜松市中央区上西町1013-1
主要用途:物販販売店舗・事務所
建主:株式会社ヤタロー 中村伸宏
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外装デザイン・店舗 設計・監理
建築:NASCA 担当/桔川卓也、生田海斗
設備:トウサイ 担当/豊井伸昭、菊地浩二、久保一弥
照明:ModuleX 担当/遠矢亜美
サイン:KD 担当/鎌田順也、三本木千和
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A工事 設計・監理
建築:株式会社シーク設計 担当/久下谷結
構造:田中構造設計事務所 担当/山根智香
設備:Boru設計 担当/前岡昇
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施工
店舗工事:SPD明治 担当/斎藤勝男、江川佳佑
建築:イトー 担当/武藏島享、レーフィアン
電気:鈴木電工 担当/太田大斗
設備:ムラコー 担当/堀部真浩
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主体構造:鉄骨造
杭・基礎:独立基礎
建蔽率:19.39%(許容:60%)
容積率:32.16%(許容:200%)
階数:地:9,730mm
天井高さ:1階売場 3,500mm、2階事務所 3,000mm
主なスパン:9,100mm×7,100mm
地域地区:都市計画区域内、市街化区域、工業地域、22条区域
道路幅員:西 8.220m、8.370m・南 7.090m、7.360m
駐車台数:敷地内48台
敷地面積:3148.67㎡
建築面積:610.77㎡
延床面積:1041.97㎡
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店舗工事
設計期間:2023年11月~2024年3月
施工期間:2024年12月~2025年4月
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A工事
設計期間:2023年01月~2024年03月
施工期間:2024年10月~2025年4月
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写真:淺川敏、静岡博報堂