SHARE 能作淳平 / 能作淳平建築設計事務所による「富士見台団地のリノベーション」
能作淳平 / 能作淳平建築設計事務所が設計した「富士見台団地のリノベーション」です。
以下、建築家によるテキストです。
富士見台団地のリノベーション
世代をこえて日本の建物が持つ心地良さを残せないだろうか。
この改修は団地に家族3人の住まいと小さな仕事場をつくる計画だ。1965年に建てられたこの団地は戦災復興のために不燃である鉄筋コンクリート造でつくられた近代的な建物でありながらも、内部は畳や襖などの日本家屋の要素が50年経った今でも残されており、現代の集合住宅に見られない心地良さがある。しかしそのままでは使いにくい。例えば、キッチン以外の部屋は畳敷きの
和室のため、椅子は置けない。間取りも基本的に4畳半と6畳で構成されているため、大人数で集まるには少し狭い。なるべく団地の持つ心地良さを残しつつ、この不自由さを解消できないだろうか。そこで団地を間取りと部位に分けて考えてみることにした。間取りは用途や使用する人数など、使い方の大枠を決める。使い方が多様化している現代には当時の間取りは適応しにくい。
それに対して畳や襖などの部位は触り心地、使い心地など、手で触れる身体的な要素である。こちらは時代に影響を受けにくく、現代にも通じる要素であろう。そこで、この改修では仕切りを取払い、なるべく広くしつつ、各所に既存部位を残すことにした。例えば、畳は表替えをしてベンチにして、テーブルと畳を一緒に使えるようにしたり、襖を麻に貼りかえることで風通しを良
くし、エアコンを使わず涼をとれるように、押入れはそのまま残して仕事場用のデスクにした。
伝統を現代の生活のなかに工夫して入れ、伝統の持つ身体的な気持ち良さや豊かさを感じることが、結果として世代をこえて伝統を受け継ぐことにつながるのではないだろうか。