原田将史+谷口真依子 / ニジアーキテクツによる、東京・目黒区の住宅「扉の家」 photo©石川和央
原田将史+谷口真依子 / ニジアーキテクツ が設計した、東京・目黒区の住宅「扉の家」です。
扉を開けた時にふわっと風や光が入り込んでくる感覚を建築で表現したいと考えた。
敷地はデベロッパーによって元々旗竿形状であった土地をさらに細かく分筆して生まれた74㎡の極めて狭小の都市型敷地である。旗竿形状の中の旗竿形状となっており、道路から奥まった位置で周囲をぐるりと隣家に囲まれている。 この敷地を初めて訪れた時、接道部分から竿形状の通路を通して光や風が入り込み、それが奥で渦を巻いて満ち溢れている風景を感じた。私たちは建築によってこの渦を内部まで導き入れたいと考えた。
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原田将史+谷口真依子 / ニジアーキテクツによる、東京・目黒区の住宅「扉の家」 photo©石川和央
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以下、建築家によるテキストです。
扉を開き、招き入れる
扉を開けた時にふわっと風や光が入り込んでくる感覚を建築で表現したいと考えた。
敷地はデベロッパーによって元々旗竿形状であった土地をさらに細かく分筆して生まれた74㎡の極めて狭小の都市型敷地である。旗竿形状の中の旗竿形状となっており、道路から奥まった位置で周囲をぐるりと隣家に囲まれている。 この敷地を初めて訪れた時、接道部分から竿形状の通路を通して光や風が入り込み、それが奥で渦を巻いて満ち溢れている風景を感じた。私たちは建築によってこの渦を内部まで導き入れたいと考えた。
住まい手は30歳前後の若い夫婦と子どもの3人家族。
とても明るく気さくな家族は、明るく暖かい雰囲気のリビングと、多くの客人と楽しく過ごせる家を希望していた。
周囲を住宅に囲まれ、眺望はもとより採光や通風など周辺環境への期待は難しい。設計の手掛かりは竿状の敷地内アプローチと北側の斜線制限と並行に広がる南側の空であった。
斜線から生まれる整った家形のボリュームを敷地奥に配置し、外壁一面を扉のようにアプローチに向けて少し角度をつけて開き、斜線制限によって一生涯その先に建物が建たないであろう南側の高い位置にトップライトを設けた。
最高高さ10m近い家形ボリューム内に地上3階建も可能ではあるが、3階部分の床が斜線により削られてしまい、さらに窮屈になりかねない。その為、半階地面に埋めるような形をとり、3層分全て同じ床面積を確保し、最上階は日常のハイライトとなるように最高天井高5.6mと気積を大きくした。
各階を半階ずらしたことにより隣家との目線も合うことがなく、併せて一面は袖壁によってプライバシーが保たれている為、カーテンを必要とせず周囲と隔たる事なく生活が送れる。
尚、この袖壁はプライバシーの確保、光や風の引き込み以外に、構造壁・防火壁としても機能しており、アルミサッシでありながら大開口を可能としている。
この扉によって、人だけではなく、光や風、事象等あらゆる物事を招き入れ受け入れることのできる懐の大きい狭小住宅ができた。
この住宅の立ち姿は、まるで扉を開いて「いらっしゃい」とも「おかえり」とも言っているかのようである。
■建築概要
扉の家
所在地:東京都目黒区
敷地面積:74.09m2
延床面積:89.77m2
構造:木造 一部鉄筋コンクリート造
階数:地下1階・地上2階建
建物最高高さ:9.75m
用途:専用住宅
設計監理:原田将史+谷口真依子/ニジアーキテクツ一級建築士事務所
構造設計:大野博史/オーノJAPAN
施工:山菱工務店
竣工:2017.11
写真:Niji Photo+石川和央
受賞:ARCHITECTURE ASIA AWARDS FOR EMERGING ARCHITECTS 2019