遠藤克彦建築研究所が設計した、大阪市の「大阪中之島美術館」です。
エリアの“結節点”と言える敷地に計画されました。建築家は、人の流れ・公共的利用・浸水リスクを考慮し、周辺と連続し都市に開かれた“地形”の上に明快な幾何学の“建築”が浮かぶ構成を考案しました。そして、内部の“立体的なパッサージュ”は新しい都市体験を提供が意図されました。施設の公式サイトはこちら。
堂島川と土佐堀川というふたつの河川に挟まれた中洲である大阪中之島は、中世より流通・商業に利する場所として栄えた。この敷地も広島藩の蔵屋敷跡地であり、敷地の地面下には堂島川より積荷を載せたまま蔵屋敷内に船を係留できる「船入」という港があったことが知られている。
計画にあたって周辺を観察すると、敷地は中之島の東西を結ぶ重要な結節点であり、このことから人の流れを繋ぎ、各方向へと導くことが重要と分かった。そのため建物には「正面」をつくらず、全方向からの人の流れを、特定の動線ではなく複数のエントランスで面的に受け入れる計画としている。また中之島地域は河川氾濫等の浸水リスクもあることから、浸水被害を物理的に逃れられる3階以上に美術関係諸室を配置することが重要と考えた。一方、1・2階は都市に開いて、美術館を訪れる人以外も普段から利用できるような公共性を提供するという基本構成を想起した。
「地形」としてデザインした1・2階の上に、大きくマッスなボリュームの正方形平面を持つ明快な幾何学の「建築」をデザインすることで、都市に浮遊する美術館が形態として表現されることとなった。地形の一部となる2階レベルは周辺の公共施設と歩行者デッキで接続される。また、建物西側にも接続通路の延伸が予定されており、今後の中之島地域の賑わいに寄与することとなろう。