



礒健介 / 礒建築設計事務所が設計した、神奈川の「大磯の家」です。
“心を静かに整える場所”も意図された計画です。建築家は、この地の空気を感じられる住まいを求め、時間や気配と呼応する“外部と一体となった”存在を志向しました。そして、LDKと同面積の内庭で“外を暮らしの延長として取込む”構成を考案しました。
かつて別荘地として知られた大磯の海岸からほど近い場所に建つ平屋の住まいである。
建主は長年の仕事を終え、終の住処としてこの地を選んだ。温暖な気候と、どこかおおらかで緩やかな時間の流れを感じる大磯は、かつての記憶を引き継ぐような空気が今も残っている。建主は要望を多く語らず、「この地の空気を感じられる住まいにしてほしい」との一言が設計の拠り所となった。
近年の住宅は、省エネルギー性能や利便性を追求する一方で、外部環境との関係が希薄になっていることから、この地に流れる時間や気配に呼応し、光や風、素材の経年変化が立ち現れるような、外部と一体となった住まいを想い描き検討を重ねた。
比較的敷地に余裕があったことや庭とのつながりを重視して平屋を採用し、庭を暮らしの延長として取り込むことを意識した。LDKと内庭は1:1の面積配分とし等価に扱いながら、内外の境界を縁側や軒下、土間テラスなどの中間領域で緩やかに滲み合う関係とし、日常の中に外の気配が自然と入り込むような計画とした。
内部はできるだけ仕切りを少なくし視線や気配が連続する伸びやかな空間を心がけた。意匠は大仰な仕掛けで空間を操作するのではなく、家にいることが多い建主のため、光や風などの自然の移ろいを感じられるような素材を中心に構成し、登り梁で空間に穏やかなリズムと変化を与えた。内部から延びる杉板の壁は板塀まで連続し、植栽が落とす光や影のキャンバスになっている。

