


五十嵐理人 / IGArchitectsと五十嵐友子が設計した、東京の住宅「家の躯体」です。
生活と仕事の境界が曖昧な夫婦の為に計画されました。建築家は、大らかで“何処でも仕事ができる”住居を求め、7枚の床がズレながら重なり多様な役割を担う立体的な一室空間の建築を考案しました。また、都心に住む現実と小敷地での可能性を形にする事も意識されました。
夫婦のための建築。クライアントは生活と仕事の境界があいまいで、どこにいても仕事ができて、どこにいてもお互いの気配を感じられるそんな住宅をイメージされていた。その暮らしぶりを見て、小さな敷地でコンパクトに暮らす建築ではなく、大きな気積とスケール感のデザインで、内部、外部とのいろいろな関係性をつくり、どこか大らかに暮らすことのできる、強靭でやわらかい躯体の建築が良いのではないかと考えた。
建物は隣地の空地と連なる抜けをつくるように北側の壁をずらし、それに合わせて高さや奥行を変えながら床を渡す構成になっている。ずれた3枚の壁と7枚の床は高さや奥行を変えながら上下が途切れることのないように重なり、近隣との見合いを避けるようにして設けられた開口部から、内部に光や風を呼び込んでくれる。南側に開口部を設けていないことから、厳しい日射が直接内部に入ることは少ない。けれども北側の壁越しに、一日中光が差し込むので、時間や天気、季節の移り変わりを豊かに感じられるようになっている。
床に配された機能は、床の小ささ故に単独で完結することはなく、ずれた他の床にまたがるようにして成り立っている。さっきまで床だった場所が椅子になり、机になり、棚になり、天井になる。明確に使い方を決められた場所はほとんどなく、家の中全てが、ずれた床との関係性の中で居場所をつくっている。
玄関を入り、歩を進めるにつれて、ゆっくりとグラデーショナルに空間が変化していく様を感じることができる。単純な構成だが、生活の行為と結びつくと、そこには無限の使い方と広がりが生まれてくる。遺跡のように大きく、力強いRCの躯体の中に、人のスケールに合わせた階段や家具を配することで、人のために設えつつも、その設えたイメージを超える豊かさをつくりだそうとしている。















