


中村篤史 / Kraft Architectsが設計した、 岐阜・高山市の宿泊施設「cup of tea ensemble」です。
元銀行の建物を転用しました。建築家は、本来の機能に加え“森と共に生きる”という価値を作る場を目指し、地域の間伐材“約1000本”を用いた空間と家具を考案しました。そして、社会の仕組に入り込み様々な循環の中から構築できる新しい建築を追求しました。施設の公式サイトはこちら。
「旅の体験を引立てる簡素な宿」をコンセプトに、ゲストのcup of tea(それぞれの好み)な旅と時間を提供するホテルを目指しました。
このホテルは観光客が多く足を運ぶ古い町並みと市街地とのちょうど境界の位置にあります。もともと銀行だった建物をグループでの素泊に特化したホテルとして、1階全面を宿泊者や地域に開かれたラウンジ、上階を客室とし地域資源を生かした内外装でリノベーションしています。
従来の史実を辿る観光とも共存しながら、飛騨高山が次の100年後の文化に続く生きた地域の価値の起点を作る、未来を育む文化を生成する拠点としてのホテルのあり方を追求しました。
モダニズムが均質化した地域の固有性を次代に向け再構築するために建築に何が可能かを思考し、それらを構成する最小単位を近距離内にすでにある物事で再構築することから着手しました。土着であるバナキュラーを最短距離で実現可能なスケールへと細分化したものを「ミクロバナキュラー」と呼び、経済や法律を始めとする社会システムの大きな枠組みにうまく入り込み、環境や社会の循環の中から構築できる新しい建築の姿を目指しました。その建築行為を「あるものを生かす」とし、豊富に有している森と共に生きる文化に接続することで、最短距離での循環を空間に落とし込みました。