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トラフ建築設計事務所による、東京・清澄白河の、トーキョーバイクの旗艦店「TOKYOBIKE TOKYO」のレポート。コーヒースタンドやプランツショップも入店し売るだけでない今の時代に求められる店舗を構想
トラフ建築設計事務所による、東京・清澄白河の、トーキョーバイクの旗艦店「TOKYOBIKE TOKYO」のレポート。コーヒースタンドやプランツショップも入店し売るだけでない今の時代に求められる店舗を構想築58年の元倉庫を改修。 photo©architecturephoto
トラフ建築設計事務所による、東京・清澄白河の、トーキョーバイクの旗艦店「TOKYOBIKE TOKYO」のレポート。コーヒースタンドやプランツショップも入店し売るだけでない今の時代に求められる店舗を構想 photo©architecturephoto
トラフ建築設計事務所による、東京・清澄白河の、トーキョーバイクの旗艦店「TOKYOBIKE TOKYO」のレポート。コーヒースタンドやプランツショップも入店し売るだけでない今の時代に求められる店舗を構想 photo©architecturephoto

トラフ建築設計事務所が設計した、東京・清澄白河の、トーキョーバイクの旗艦店「TOKYOBIKE TOKYO」をレポートします。コーヒースタンドやプランツショップも入店し売るだけでない今の時代に求められる店舗が構想されています。店舗のウェブサイトはこちら。店舗の開店は2021年7月10日より。

こちらはアーキテクチャーフォトによるレポート

トラフ建築設計事務所の設計で、自転車ブランドTOKYOBIKEの旗艦店「TOKYOBIKE TOKYO」が、東京・江東区清澄白河に完成した。
築58年の倉庫をコンバージョンした建築である。建物の特徴はプログラムにもある。ブランドの旗艦店として自転車を販売するだけでなくファッションアイテムの販売もされ、また地元の自家焙煎コーヒースタンド「ARiSE COFFEE PATTANA」と植物を販売するプランツショップ「The Plant Society Tokyo Flagship」も入居している。そして、建物内のスペースの多くを明確な用途を持たない階段空間として設計がなされている。

一般的に自転車店と聞いて我々が想像するのは、店内に所狭しと自転車が並んでいる風景ではないだろうか。この店舗では、ショーウィンドウに自転車が展示されていたり、壁面に展示されているものの、お店の中に入っても自転車に圧倒されることはない。一見すると何のお店かわからないくらいのささやかさである。

店内に入ってまず目に入るのは、上階へ続く“大階段”である。トラフはこの階段を「イタリアのスペイン広場を思わせる大階段」と表現するが、実際に空間に身を置いてみると、吹き抜けのデザインや、開口部からの光によって自然と視線が上部に誘導され、プランツショップなども目に入り、上階へと昇り進みたくなる感覚を覚えた。入口右手側にあるコーヒーショップで買ったコーヒーを片手に階段に腰掛けるお客さんの姿も目に浮かぶようだった。階段と言っても、単純な階段ではなくその段差や素材は丁寧に設計されており、そこで佇むことがアフォードされるデザインである。この場所は、現在の社会状況が改善された頃には、様々なイベントが行われる舞台になるだろう。

階段を上ると、キッズコーナーがあり、更に奥まで歩いていくとプランツショップがある。キッズコーナーではトラフが結成される切っ掛けとなった「テンプレート イン クラスカ」をセルフオマージュしたデザインが施されており、建築ファンも楽しむことができるだろう。プランツショップは、メルボルンから出店されたそうで豊富な植物を閲覧することができ、この空間内を散策する目的地としても最適な配置がなされているように感じる。

ここまで建築を説明してきたが、TOKYOBIKEの自転車がどこに展示・販売されているかということも気になるのではないだろうか。その場所は、エントランス右奥と大階段下の比較的目に入りにくい場所に設計されている。主たる商品のはずの自転車がこの場所で販売されているという所に、トラフとクライアントの現代の物販店舗の在り方についての考察や未来への展望が込められていると感じ非常に唸らされた。

いまビジネスの世界を見てみると、ネットの普及、SNSの普及によって間違いなくモノの売り方は変わっている。テレビCMや広告ではなく、不特定多数の口コミが参照されたり、SNSでの反響からモノが売れるようになったりしている。ただ単に商品を強力にアピールして露出度を高めることが売り上げに直結する時代ではないのである。筆者が詳しいネット通販の世界でも同様である。著名な通販サイトではただモノを売るだけではなく、オウンドメディアとして読み物を提供したり、更にはドラマまで作ってしまう所もある。それらは直接的な商品を宣伝するものではないが、店舗の世界観や思想を伝えるものであり、それらのコンテンツに魅了された人々は、結果として「あのサイトが売っているモノなら」と信頼を感じ購入するようになるのである。直接的であるより間接的であることが重要なのだ。

この店舗「TOKYOBIKE TOKYO」でコーヒーを飲んだり、休憩したり、イベントに参加したり、植物を購入したりする。そんな風にこのお店が生活の中に根差していく。そんな時間の流れの中で、自転車が壊れたりして買い替える必要のある人たちも出てくるだろう。その時、彼らはTOKYOBIKEのことが頭に浮かびこのお店に足を運び実際に商品を手に取り購入していくのではないだろうか。そんな、お客さんにとってもお店にとっても幸せな関係が、この空間で構想されたことだろうと感じた。

建築空間として興味深いのは勿論であるが、プログラムすら決まっていない段階からトラフが関ったこの建築は、“トラフがクライアント共にこれからの店舗の在り方を世に問いかけた事例”としても捉えることができる建築だと言えるのではないだろうか。

【ap job更新】 規模や領域を横断しながら建築や都市の可能性を追求する「Open A」が、シニアアーキテクト・アーキテクトを募集中
【ap job更新】 規模や領域を横断しながら建築や都市の可能性を追求する「Open A」が、シニアアーキテクト・アーキテクトを募集中
【ap job更新】 規模や領域を横断しながら建築や都市の可能性を追求する「Open A」が、シニアアーキテクト・アーキテクトを募集中Under Construction(OpenAオフィス)(撮影:OpenA)

規模や領域を横断しながら建築や都市の可能性を追求する「Open A」の、シニアアーキテクト・アーキテクト募集のお知らせです。詳しくは、ジョブボードの当該ページにてご確認ください。アーキテクチャーフォトジョブボードには、その他にも、色々な事務所の求人情報が掲載されています。
新規の求人の投稿はこちらからお気軽にお問い合わせください

Open Aでは、企画から設計、監理まで、チームの中核となって、プロジェクトを動かし、支えてくれるメンバーを募集しています。

Open Aの仕事は幅広く、リノベーションを始め、居住空間からオフィス空間、公共空間まで展開しています。既存のビルディングタイプに分類できない建築への挑戦も続けているところです。個人から大企業、行政まで、規模や領域を横断しながら建築や都市の可能性を追求するのが、最大の特徴だと考えています。

ときに、本をつくったり、R不動産のようなメディアと連携したりしながら設計を進めるプロセスは、もしかすると落ち着きなく見えているかもしれません。
そんな私たちの仕事も、実は実直な設計作業の積み重ねに支えられています。
そのプロセスや成果をきちんと社会に提示し、還元すること。そんな姿勢を大切にしていきたいと思っています。

「Open Architecture」

会社の名前が、そのまま僕らの活動姿勢でもあります。
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もちろん、デザインや表現力も重要ですが、クライアント対応や役所調整、仕事や建築に対する価値観が共有できる人に来てもらえたら嬉しいです。(馬場正尊)

五十嵐淳建築設計事務所による、北海道・札幌市の、店舗とギャラリー「gallery 22.149 / MAGAACY」
五十嵐淳建築設計事務所による、北海道・札幌市の、店舗とギャラリー「gallery 22.149 / MAGAACY」 photo©IKUYA SASAKI
五十嵐淳建築設計事務所による、北海道・札幌市の、店舗とギャラリー「gallery 22.149 / MAGAACY」 photo©IKUYA SASAKI
五十嵐淳建築設計事務所による、北海道・札幌市の、店舗とギャラリー「gallery 22.149 / MAGAACY」 photo©IKUYA SASAKI

五十嵐淳建築設計事務所が設計した、北海道・札幌市の、店舗とギャラリー「gallery 22.149 / MAGAACY」です。同店舗の2階には同じく五十嵐が設計した美容室「nunuka」があり、こちらもアーキテクチャーフォトで特集しています。施設の場所はこちら(Google Map)

札幌市の円山エリアにある「日本一小さな複合施設」をコンセプトに古い木造建築を改修したプロジェクト。1階にはセレクトショップと小さな飲食スペース、地下にはギャラリー、2階には美容室がある。各階を貫く櫓のような階段は、地下から3階までの4層を程よい距離で繋ぐ。小さな空間ではあるが多様な事柄が混在することで生まれる賑わいを創出している。

建築家によるテキストより
岸和郎による進行中のプロジェクトまでを含む展覧展「時間の真実_TIME WILL TELL」の関連シンポジウムの参加申込が開始
岸和郎による進行中のプロジェクトまでを含む展覧展「時間の真実_TIME WILL TELL」の関連シンポジウムの参加申込が開始展覧会「岸和郎:時間の真実_TIME WILL TELL」の公式ポスター。

岸和郎による進行中のプロジェクトまでを含む展覧展「時間の真実_TIME WILL TELL」の関連シンポジウムの参加申込が開始しています。開催日は2021年7月24日で会場は京都工芸繊維大学センターホールです。
シンポジウムのタイトルは「現代建築と保存_文化庁京都移転を巡って」。岸がデザインアーキテクトとして参画している文化庁の建築について語られるとの事です(京都府庁の敷地内の旧府警本部の改修+新築が進んでいる)。

シンポジウム「現代建築と保存_文化庁京都移転を巡って」
日時:2021年7月24日(土)13:30-16:30
会場:京都工芸繊維大学センターホール
パネリスト:門内輝行、田原幸夫、古賀大、岸和郎
モデレーター:笠原一人
ゲスト:笠原隆
参加方法:事前申込制(定員130名。定員に達した時点で締め切り)
下記フォームから必要事項をご記入のうえ申し込みください。
シンポジウム申し込みフォーム

シンポジウム当日のギャラリートークは中止となりました。なお、7月24日(土)は17:30まで開館時間を延長いたします。

小山光+KEY OPERATION INC. / ARCHITECTSによる、東京・杉並区の、アニメーション制作会社のスタジオ「MAPPAスタジオ分室」。職場環境の向上も意識しデスク素材の選定やラウンジ空間を重視
小山光+KEY OPERATION INC. / ARCHITECTSによる、東京・杉並区の、アニメーション制作会社のスタジオ「MAPPAスタジオ分室」。職場環境の向上も意識しデスク素材の選定やラウンジ空間を重視 photo©小山光
小山光+KEY OPERATION INC. / ARCHITECTSによる、東京・杉並区の、アニメーション制作会社のスタジオ「MAPPAスタジオ分室」。職場環境の向上も意識しデスク素材の選定やラウンジ空間を重視 photo©小山光
小山光+KEY OPERATION INC. / ARCHITECTSによる、東京・杉並区の、アニメーション制作会社のスタジオ「MAPPAスタジオ分室」。職場環境の向上も意識しデスク素材の選定やラウンジ空間を重視 photo©小山光

小山光+KEY OPERATION INC. / ARCHITECTSが設計した、東京・杉並区の、アニメーション制作会社のスタジオ「MAPPAスタジオ分室」です。職場環境の向上も意識しデスク素材の選定やラウンジ空間を重視した設計となっています。クライアント企業の公式サイトはこちら

「呪術廻戦」、「進撃の巨人」などのアニメーション制作で知られるMAPPAのスタジオ分室。

建築家によるテキストより

2019年には2.5兆円規模となったアニメーション産業。その制作会社全国622社のうち、東京には87%にあたる542社、その中でも東映動画やタツノコプロが60年代に設立された杉並区と練馬区には241社も集まっている。制作会社では多くのアニメーターを必要とするが、このエリアには大きなオフィスビルが少ないため、スタジオ分室を設けることが多い。MAPPAでも荻窪の青梅街道沿いの本社とは別に阿佐ヶ谷などに既にいくつか分室を持っている。

建築家によるテキストより

近年、アニメーターの人材不足が深刻になっている。原因としては経済条件の良い中国のアニメ会社やゲーム業界への人材の流出などがあげられる。優秀な人材を確保するためにも、職場環境の改善が必要で、デスクを温かみのある木材にして、リフレッシュできるラウンジ空間を重視した。この制作会社では将来的には中央線沿線の大きな敷地に全分室を集めて、自然あふれるアニメーターズビレッジを作って、ファンも訪れる事ができるショップやカフェも併設できればと考えている。

建築家によるテキストより
佐野健太建築設計事務所による、台湾・雲林県の「恵生大薬局」。台湾の薬局の商法の変化に“まちなかの公園”にインスピレーションを得た空間を提案
佐野健太建築設計事務所による、台湾・雲林県の「恵生大薬局」。台湾の薬局の商法の変化に“まちなかの公園”にインスピレーションを得た空間を提案 photo©YYHLA
佐野健太建築設計事務所による、台湾・雲林県の「恵生大薬局」。台湾の薬局の商法の変化に“まちなかの公園”にインスピレーションを得た空間を提案 photo©YYHLA
佐野健太建築設計事務所による、台湾・雲林県の「恵生大薬局」。台湾の薬局の商法の変化に“まちなかの公園”にインスピレーションを得た空間を提案 photo©YYHLA

佐野健太建築設計事務所が設計した、台湾・雲林県の「恵生大薬局」です。台湾の薬局の商法の変化に“まちなかの公園”にインスピレーションを得た空間を提案しています。

薬局の数がコンビニエンスストアよりも多く、少子高齢化が深刻な台湾にあって、旧来型の薬局はおむつを主力商品とする商法からいかに脱却するかが死活問題となっている。

建築家によるテキストより

「恵生大薬局」を再生するにあたり、クライアントが掲げた目標はライフスタイルを提案する場所としての薬局であった。
薬を売るだけではなく、健康的な暮らしをサポートする。
一般的な商品売場や調剤室のほか、健康診断コーナーやお茶のスペース、お年寄り向けジムなどを設け、AIを駆使した遠隔健康管理や物理療法、高齢者のためのヘルスケア教室などのサービスを地方政府や協賛企業と共同して行う。

建築家によるテキストより

そのための空間として、まちなかの公園がヒントになるのではないかと考えた。お年寄りが集まってダンスや体操、太極拳などを楽しんでいる姿は台湾における日常の光景だ。機能や動線がある程度整理されつつ、自然がもたらす自由さを享受できる公園。その空間の持つ質を新しい薬局にも引き継げないかと考えたのである。

建築家によるテキストより
MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIOの原田真宏の基調講演と、エヌ・シー・エヌ取締役の福田浩史による実務セミナーが行われる“無料”ウェビナー「大規模木造の可能性と木造への取り組み方」が開催。参加者には『木構造ガイドブック』も進呈
MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIOの原田真宏の基調講演と、エヌ・シー・エヌ取締役の福田浩史による実務セミナーが行われる“無料”ウェビナー「大規模木造の可能性と木造への取り組み方」が開催。参加者には『木構造ガイドブック』も進呈

MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIOの原田真宏の基調講演と、エヌ・シー・エヌ取締役の福田浩史による実務セミナーが行われる“無料”ウェビナー「大規模木造の可能性と木造への取り組み方」が開催されます。主催は株式会社エヌ・シー・エヌ。参加者には、最新の木造事例や、大規模木造にまつわるQ&A等を全60Pにまとめた『木構造ガイドブック』も進呈されます。開催日は2021年7月12日(月)13:00~15:00事前申し込みはこちらから

木構造ガイドブック発刊記念セミナー
【大規模木造の可能性と木造への取り組み方】
開催日:2021年7月12日(月) 13:00~15:00
定員:400名

【参加者特典】
セミナー参加者へは、最新の木造事例や、大規模木造にまつわるQ&A等を全60Pにまとめた〈木構造ガイドブック〉を進呈します。

リリーステキストより
トラフ建築設計事務所による、東京・六本木の、ジュエリーブランドの店舗「Hirotaka 東京ミッドタウン店」
トラフ建築設計事務所による、東京・六本木の、ジュエリーブランドの店舗「Hirotaka 東京ミッドタウン店」 photo©太田拓実
トラフ建築設計事務所による、東京・六本木の、ジュエリーブランドの店舗「Hirotaka 東京ミッドタウン店」 photo©太田拓実
トラフ建築設計事務所による、東京・六本木の、ジュエリーブランドの店舗「Hirotaka 東京ミッドタウン店」 photo©太田拓実

トラフ建築設計事務所が設計した、東京・六本木の、ジュエリーブランドの店舗「Hirotaka 東京ミッドタウン店」です。店舗の公式サイトはこちらお店の場所はこちら(Google Map)

ジュエリーブランド「Hirotaka(ヒロタカ)」の、丸の内店、玉川玉川髙島屋S・C店に続く東京ミッドタウン店の内装計画。
2015年にトラフが設計したAesopの店舗の右隣で、通路に平行な間口12mx奥行2mの細長い区画が敷地となった。

建築家によるテキストより

この特徴的な敷地形状に着目し、ファサード面と店内の壁面を重なる2つのレイヤーと捉え、通路を行きかう人々に印象付けられるようにしたいと考えた。Hirotakaの幾何学的なジュエリーデザインからインスピレーションを得て、通路に面した長いファサードには正円のフレームに分割したガラス窓を配し、店内奥の壁面には間接照明を仕込んだ大きな三角形が連なるフレームを設置した。店外から見ると2つのレイヤーが重なり合い、屋外広場の緑や共用部に入ってくる日差しを映し出して、刻々と表情を変える。

建築家によるテキストより

区画の奥行きが無いことをポジティブに捉え、店舗の内外に広がりが感じられるよう工夫した。Hirotakaの世界観を凝縮した店舗自体が、東京ミッドタウン内にあるジュエリーを思わせる空間を目指した。

建築家によるテキストより
最も注目を集めたトピックス [期間:2021/6/28-7/4]
最も注目を集めたトピックス [期間:2021/6/28-7/4]

アーキテクチャーフォトで、先週(期間:2021/6/28-7/4)注目を集めたトピックスをまとめてご紹介します。リアルタイムでの一週間の集計は、トップページの「Weekly Top Topics」よりご覧いただけます。


  1. 石本建築事務所・石上純也JVが、神奈川の「厚木市複合施設基本設計」プロポで受注候補者に選定。提案書も公開
  2. 隈研吾が設計を進め2023年の完成を予定する、東京の「(仮称)江戸川区角野栄子児童文学館」の基本設計概要版が公開
  3. アルヴァ・アアルトがデザインした名作家具が、ガチャ(カプセル玩具)として発売。アルヴァ・アアルト財団とアルテックが制作を監修
  4. 中山英之が会場構成を手掛けた、庭園美術館での展覧会「ルネ・ラリック リミックス(新館ギャラリー1)」をレポート。邸宅を構想し、ここにしかない展示空間を設計
  5. 藤森照信・妹島和世・藤本壮介・平田晃久・石上純也・藤原徹平・会田誠による「パビリオン・トウキョウ2021展 at ワタリウム美術館」の会場写真。都内で公開される建築家たちのパヴィリオンに関する資料等を紹介
  6. 藤森照信が設計した、東京・渋谷区のパヴィリオン「茶室『五庵』」のレポート。藤森建築の言語が詰め込まれた国立競技場を臨む茶室
  7. 藤本壮介が設計した、東京・渋谷区のパヴィリオン「Cloud pavillion(雲のパビリオン)」のレポート。“雲”にインスパイアされた建築が様々な感覚を呼び起こす
  8. 小堀哲夫が特定された「東海国立大学機構(東山)プラットフォーム新営」設計プロポのプレゼン動画が公開。次点者の伊東や候補者の槇・千葉・SANAAの動画も公開
  9. 平田晃久による、東京・渋谷区のパヴィリオン「Global Bowl」のレポート。彫刻と建築の感覚を行き来するような作品
  10. 海法圭+鈴木岳彦による、東京・日本橋の、老舗卸店舗の上層階フロアの改修「MKKビル8階」。服飾のデザイン・生産・卸売・教育が集まるコモンズとなるスペースを持った施設
  11. 藤原徹平による、東京・渋谷区のパヴィリオン「ストリート ガーデン シアター」のレポート。木組みと植物が絡み合い都市に必要な人の居場所を提供
  12. 高橋勝建築設計事務所による、京都の町家を改修した飲食店舗「BAR Kingom」
  13. SANAAが計画を進めていた、パリの老舗百貨店「サマリテーヌ」の改修が完了して写真が公開
  14. MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIOの原田真宏の基調講演と、エヌ・シー・エヌ取締役の福田浩史による実務セミナーが行われる“無料”ウェビナー「大規模木造の可能性と木造への取り組み方」が開催。参加者には『木構造ガイドブック』も進呈
  15. 元木大輔 / DDAA LABによる、展覧会「Belt Furniture」の会場写真とレポート
  16. 石上純也による、東京・千代田区の九段ハウスでのパヴィリオン「木陰雲」の画像とコンセプトが公開。期間中には同じく石上が設計する“maison owl”のシェフの期間限定レストランもオープン
  17. フォスター+パートナーズによる、アメリカ・フロリダの、ゴルフツアー運営団体の社屋「PGAツアー本部」。パンデミック後のワークプレイスとして健康とウェルビーイングに焦点をあてデザイン
  18. トラフ建築設計事務所による、愛知の、名古屋駅隣接百貨店内のラムネ専門店「THE RAMUNE LOVERS」
  19. ピーター・ズントーによる、スイス・バーゼルの、バイエラー財団美術館の増築。展示棟・サービス棟・イベント棟の3つの建物がピアノ設計の既存美術館の周囲に建設
  20. 小堀哲夫が「東海国立大学機構(東山)プラットフォーム新営」設計プロポに特定。次点者の伊東や候補者の槇・千葉・SANAAの提案書も公開

ピーター・ズントーによる、スイス・バーゼルの、バイエラー財団美術館の増築。展示棟・サービス棟・イベント棟の3つの建物がピアノ設計の既存美術館の周囲に建設
ピーター・ズントーによる、スイス・バーゼルの、バイエラー財団美術館の増築。展示棟・サービス棟・イベント棟の3つの建物がピアノ設計の既存美術館の周囲に建設左側建物が展示棟(House for art)。右側建物がイベント棟(pavillion)。 Courtesy Atelier Peter Zumthor
ピーター・ズントーによる、スイス・バーゼルの、バイエラー財団美術館の増築。展示棟・サービス棟・イベント棟の3つの建物がピアノ設計の既存美術館の周囲に建設展示棟(House for art)。 Courtesy Atelier Peter Zumthor
ピーター・ズントーによる、スイス・バーゼルの、バイエラー財団美術館の増築。展示棟・サービス棟・イベント棟の3つの建物がピアノ設計の既存美術館の周囲に建設展示棟(House for art)の内部。 Courtesy Atelier Peter Zumthor © Successió Miró / Calder Foundation, New York / Art Resource, NY / 2017, ProLitteris, Zurich

アトリエ・ピーター・ズントーが設計した、スイス・バーゼルの、バイエラー財団美術館の増築です。展示棟・サービス棟・イベント棟の3つの建物がピアノ設計の既存美術館の周囲に建設されます。2021年6月に建築許可が下り2021年晩夏に建設がスタートするとの事です。

こちらはリリーステキストの翻訳・抜粋

2021年6月2日、バイエラー財団は、バーゼル州建物検査局(BGI)より、アトリエ・ピーター・ズントーによる拡張プロジェクトの建築許可を取得しました。これで建設開始への道が開けました。2020年夏、バイエラー財団理事会は、コロナウイルスの大流行にもかかわらず、この困難な時期にバーゼルとスイスの芸術と経済に前向きなシグナルを送ることを願い、計画申請を進めることを決定しました。この増築計画は、スイスで最も多くの人が訪れる美術館の長期的な発展にとって非常に重要であり、今後の活動を決定的に左右するものです。工事の開始は2021年の晩夏を予定しています。

この拡張工事により、美術館の建物はユニークなアンサンブルを形成し、一般公開される公園の面積は約2倍になります。スイスで最も訪問者数の多い美術館であるバイエラー財団は、21世紀になっても、訪問者や地域住民の期待に応え続けたいと考えています。

アトリエ・ピーター・ズントーが設計した増築部分は、芸術の家、管理・物流施設を提供するサービス棟、イベント用パヴィリオンの3つの建物で構成されています。最初の2つの建物は、現在の美術館の敷地に南側で隣接するイゼリン・ウェーバー公園に建設され、平屋建てのパヴィリオンは、既存の境界壁の隣にあるベラワー公園に設置されます。このパヴィリオンは、イゼリン・ウェーバー公園の新しい建物、ベラワー邸の歴史的建築物、レンゾ・ピアノの既存の建物の中で、重要な役割を果たす位置にあります。1,500㎡の展示スペースを持つ新しいミュージアム棟は、コレクションの展示や小規模なショーに適しています。サービス棟には、オフィスや技術設備があり、特に美術品の配送に力を入れています。

小堀哲夫が特定された「東海国立大学機構(東山)プラットフォーム新営」設計プロポのプレゼン動画が公開。次点者の伊東や候補者の槇・千葉・SANAAの動画も公開

小堀哲夫建築設計事務所が特定された「東海国立大学機構(東山)プラットフォーム新営」設計プロポーザルのプレゼンテーション動画が公開されています。次点者の伊東豊雄建築設計事務所や、候補者となっていた槇総合計画事務所千葉学建築計画事務所SANAA・妹島和世建築設計事務所設計共同体のプレゼンテーション動画も公開されています。


スノヘッタによる、香港のレストラン「Restaurant Whey」。シンガホール人シェフのヨーロッパとアジアを融合した料理を提供する空間として北欧とアジアの文化の融合を素材と色彩で表現
スノヘッタによる、香港のレストラン「Restaurant Whey」。シンガホール人シェフのヨーロッパとアジアを融合した料理を提供する空間として北欧とアジアの文化の融合を素材と色彩で表現 photo©HDP Photography
スノヘッタによる、香港のレストラン「Restaurant Whey」。シンガホール人シェフのヨーロッパとアジアを融合した料理を提供する空間として北欧とアジアの文化の融合を素材と色彩で表現 photo©HDP Photography

スノヘッタによる、中国・香港のレストラン「Restaurant Whey」です。シンガホール人シェフのヨーロッパとアジアを融合した料理を提供する空間として北欧とアジアの文化の融合を素材と色彩で表現しています。

こちらはリリーステキストの翻訳

スノヘッタが香港の、ヨーロッパ料理とアジア料理を融合させたレストランをデザイン

ミシュランで2つ星を獲得した「Ying Jee Club」やモダンな韓国料理店「Hansik Goo」などで知られる香港のZSホスピタリティグループのレストラン「Whey」のインテリアデザインとヴィジュアルアイデンティティをスノヘッタが手がけました。

2021年5月25日(火) – 賑やかな香港のセントラル地区にあるWheyは、周囲のコンクリートジャングルから逃れるように、落ち着いた雰囲気を醸し出しています。336㎡の店内には、スカンジナビアの民芸品やプラナカン建築、シンガポールの文化シーンに敬意を表したアートに触発された折衷的な空間が広がり、ヨーロッパ料理とアジア料理が交差しています。シンガポール人シェフ、バリー・クエックが率いるWheyでは、地元の旬の食材を中心に、シンガポールの影響を受けて再構築されたモダンなヨーロッパ料理をお楽しみいただけます。

Wheyでは、食事の各コースを楽しむことができます。エントランスの前庭から長い廊下を通り、期待感を高めてからシェフのテーブルに到着するようになっています。この直線的な到着口は、シンガポールのアーティスト、ドーン・ウンによる折り畳み式の鏡のインスタレーションでメインスペースと区切られています。この作品は、時間、空間、自己の概念を追求したもので、外の賑やかな通りから抜け出すような役割を果たしています。オープンプランは、柱によって4つのベイに明確に分けられています。1つ目は、ゲストがシェフと直接対話できるオープンキッチンのダイニングエリアです。2つのメインダイニングベイを見下ろすことができ、奥にある最後のダイニングベイは別室として仕切ることができます。

この空間の特徴は、暖かみのあるアースカラーから深みのあるトロピカルグリーンまでの色調と、真鍮のディテールの組み合わせです。この色調は、北欧の素朴なキャビンや南国シンガポールの豊かな緑を彷彿とさせ、洗練された雰囲気を醸し出しています。

この調和のとれたコントラストの空間は、素材の選択によっても強化されています。籐は、シンガポールと北欧のデザイン要素に共通して使用されており、その編み込まれた質感によって空間に柔らかさをもたらすと同時に、視覚的なベールと音響的なダンパーの役割を果たしています。床、テーブル、スクリーンに使用されている天然のステイン仕上げのオークは、ダイニング体験に触覚をもたらすとともに、都会のコンクリートの外壁とのコントラストを強調しています。最後に、より親しみやすい空間に時間的・視覚的な深みを与えるために、深い緑色の大理石をレセプションエリアとバスルームに使用し、明るいオープンプランのインテリアとのコントラストを図っています。

Wheyでは、地元の農場や企業を支援することに力を入れており、メニューには地元の新鮮な食材を使用しています。店名にもなっているように、食材の無駄を省くために、食材を余すところなく活用することを目指しています。チーズを作る際に出る副産物であるホエイ(乳清)は、本来であれば廃棄物となるところを、必要不可欠な調味料に変えています。

また、地元企業とのコラボレーションも重要なポイントとなっています。スプルー・ビスポーク・ファニチャー社の木製ダイニングテーブルや、フロウプラスリビング社の陶器製テーブルウェアコレクションは、香港の雰囲気を醸し出しています。また、メキシコのボスコ・ソディ氏、台湾のWu Chu-Thung氏、韓国のJiana Kim氏など、国際的に活躍するアーティストの作品を厳選して展示し、地元の人々に親しまれています。

フォスター+パートナーズによる、ロサンゼルスの、20世紀初頭に完成した映画館を改修したアップルの最新店舗「アップル・タワー・シアター」。既存の建物に新たな目的を与え都市再生も意図
フォスター+パートナーズによる、ロサンゼルスの、20世紀初頭に完成した映画館を改修したアップルの最新店舗「アップル・タワー・シアター」。既存の建物に新たな目的を与え都市再生も意図 photo©Cesar Rubio
フォスター+パートナーズによる、ロサンゼルスの、20世紀初頭に完成した映画館を改修したアップルの最新店舗「アップル・タワー・シアター」。既存の建物に新たな目的を与え都市再生も意図 photo©Cesar Rubio
フォスター+パートナーズによる、ロサンゼルスの、20世紀初頭に完成した映画館を改修したアップルの最新店舗「アップル・タワー・シアター」。既存の建物に新たな目的を与え都市再生も意図 photo©Cesar Rubio

フォスター+パートナーズが設計した、アメリカ・ロサンゼルスの、20世紀初頭に完成した映画館を改修したアップルの最新店舗「アップル・タワー・シアター」です。既存の建物に新たな目的を与え都市再生も意図しています。

こちらはリリーステキストの翻訳

LAダウンタウンのアップル・タワー・シアターの幕が上がる

ロサンゼルスのダウンタウンの中心に位置するAppleの最新店舗、アップル・タワー・シアターがオープンしました。このデザインは、ロサンゼルスで最も歴史のある映画館のひとつを再活性化するために、建物に新たな目的を与え、失われた栄光を取り戻すことを目的としています。アップル・タワー・シアターの公開は、ロサンゼルスのダウンタウンにおける都市再生の重要な一部であり、この地域の都市部の小売店やコミュニティの生活を強化するものです。

このデザインは、アップル社とフォスター+パートナーズ社のデザインチームが緊密に協力して実現したものです。

タワーシアターは、1927年に映画館の設計者であるS・チャールズ・リーによって設計された、ロサンゼルスで最初のトーキングムービーを上映する映画館です。この設計では、特徴的な時計塔とテラコッタの外壁を復元し、歴史的な内装を強化し、マルケとブロードウェイ通りの立面を改善するとともに、アクセス性を向上させることで、この建物が将来にわたって存続し、コミュニティに貢献できるようにしています。

フォスター+パートナーズのスタジオ責任者であるステファン・ベーリング(Stefan Behling)は次のように述べています。
「私は、人は人と一緒にいるのが好きだと信じています。これは、世界中の都市の基本です。アップル・タワー・シアターは、街の楽観性と回復力を示す新たな道標となり、ロサンゼルスのダウンタウンへの信頼の証となるでしょう。このデザインは、映画誕生時のロマンスと興奮を蘇らせ、『存在する場所』のアイデアを再現しています。内装の精巧なディテールは、丹念に復元されています。今日からアップル・タワー・シアターは、LAのダウンタウンに都市生活の活力を取り戻すための活動や祝賀行事で再び活気づくことでしょう。」

デザインは、ブロードウェイでのアクティブな存在感を目指しています。来場者は、ストリートレベルの広々としたロビーに入ります。ロビーを抜け、復元された大階段で上層階に上がりると、地上階のメインシアターホールの巨大なボリュームが現れ、それは壮大な展示エリアへと生まれ変わっています。壁や天井に施された1920年代の歴史的な漆喰の装飾は、丁寧に修復され、さらに美しさを増しています。劇場天井の中央ドームには、南カリフォルニアの空に降り注ぐ穏やかな黄金色の太陽を描いたフレスコ画が描かれ、空間に躍動感と色彩を与えています。

また、トーキー映画の黄金時代を彷彿とさせるように、プロセニアムアーチの下にスクリーンを設置しました。また、階段とエレベーターを利用してバルコニー階にアクセスすることができ、フォーラムを鑑賞するのに最適な席となっています。シアタースタイルのゆったりとした革張りのシートには、電源とデータポイントが内蔵されており、ジーニアスの予約時間を待つ間、お客様にリラックスしていただくのに最適な場所です。バルコニーの最上部にはジーニアスがあります。そこでは、シアターの映写機の窓のすぐ下に位置し、復元されたシアターの全貌を見ることができます。アップルでの今日は、人々にインスピレーションを与え、2階のバルコニーを含む店舗全体を劇場型のイベントスペースに変える、新しいマグネットとなるでしょう。

隈研吾が設計を進め2023年の完成を予定する、東京の「(仮称)江戸川区角野栄子児童文学館」の基本設計概要版が公開
隈研吾が設計を進め2023年の完成を予定する、東京の「(仮称)江戸川区角野栄子児童文学館」の基本設計概要版が公開俯瞰パース。 / 江戸川区の許可を得て掲載
隈研吾が設計を進め2023年の完成を予定する、東京の「(仮称)江戸川区角野栄子児童文学館」の基本設計概要版が公開外観パース。 / 江戸川区の許可を得て掲載

隈研吾建築都市設計事務所が設計を進め2023年の完成を予定する、東京の「(仮称)江戸川区角野栄子児童文学館」の基本設計概要版が公開されています。PDFでの資料です。計画地は東京・江戸川区の「なぎさ公園内(Google Map)」です。

以下は隈のサイトに掲載されている解説テキスト。

なぎさ公園の丘の上に、「魔女の宅急便」の原作者、角野栄子さんの世界を体験できるミュージアムをデザインした。
角野栄子さんの世界に登場する「おうち」のような小さな単位で建築を考えた。
なだらかな丘の傾斜に沿わせて小さな箱を並べ、花のような軽やかなひろがりを感じさせる屋根を掛けた。
豊かな公園の自然を感じながら、五感で角野栄子さんの世界観に触れることができる、開かれた環境を江戸川のほとりの丘の上に創造した。

プロジェクトチーム:横尾実、成澤佳佑、鈴木里奈、楊光耀、叶子萌
ヴィジュアライゼーション:安祥毅
構造設計:江尻構造設計事務所
設備設計:環境エンジニアリング
造園設計:クロス・ポイント
展示設計:乃村工藝社

高橋勝建築設計事務所による、京都の町家を改修した飲食店舗「BAR Kingom」
高橋勝建築設計事務所による、京都の町家を改修した飲食店舗「BAR Kingom」 photo©松村芳治
高橋勝建築設計事務所による、京都の町家を改修した飲食店舗「BAR Kingom」 photo©松村芳治
高橋勝建築設計事務所による、京都の町家を改修した飲食店舗「BAR Kingom」 photo©松村芳治

高橋勝建築設計事務所が設計した、京都の町家を改修した飲食店舗「BAR Kingom」です。店舗の公式サイトはこちら

京都の中心地四条河原町から歩いて7分ほど、京町家を改修した、ゆっくり洋酒が飲める場所のプロジェクトとしてデザインしたオーセンティックなBARである。クライアントは、有名店で長年修行されてきた筋金入りのバーテンダーで、初めての対面では非常にストイックな、朗らかではあるけれどまるで寡黙な職人のような印象を受けた。

要望は明確には示されなかったが、店のデザインについてのヒントを探して色々なお店を一緒にめぐりを行った。幾度となく接する中で感じたオーナーバーテンダーであるクライアントの、人への丁寧な態度や、さりげない気遣い、人をもてなす安心できる場所への思想にふれるうちに、目指す空間は、静かで、目を凝らすと味わいが出てくるようなゆったりした落ち着ける空間となっていった。

建築家によるテキストより

空間構成は、クライアントとともにインスピレーションを得た通り、建物の最深部である庭と対面する二間続き座敷を1室として、バーカウンターを設置した。既存の天井では椅子式の空間には低いので天井を取り、小屋組み、トントン葺きの野地板を現して3m以上の天井高があるゆったりとした空間としている。庭への建具はすべて嵌め殺し開口とし、視覚的に庭と一体となっている。内壁や柱梁、床の間、下地窓などは、照度を落とした店内に合わせ、暗めの古色に塗り直したが、基本的にそのまま利用している。

建築家によるテキストより
藤本壮介が設計した、東京・渋谷区のパヴィリオン「Cloud pavillion(雲のパビリオン)」のレポート。“雲”にインスパイアされた建築が様々な感覚を呼び起こす
藤本壮介が設計した、東京・渋谷区のパヴィリオン「Cloud pavillion(雲のパビリオン)」のレポート。“雲”にインスパイアされた建築が様々な感覚を呼び起こす photo©architecturephoto
藤本壮介が設計した、東京・渋谷区のパヴィリオン「Cloud pavillion(雲のパビリオン)」のレポート。“雲”にインスパイアされた建築が様々な感覚を呼び起こす photo©architecturephoto
藤本壮介が設計した、東京・渋谷区のパヴィリオン「Cloud pavillion(雲のパビリオン)」のレポート。“雲”にインスパイアされた建築が様々な感覚を呼び起こす photo©architecturephoto

藤本壮介が設計した、東京・渋谷区のパヴィリオン「Cloud pavillion(雲のパビリオン)」のレポートです。“雲”にインスパイアされた建築が、見る人に様々な感覚を呼び起こす建築となっています。“パビリオン・トウキョウ2021”の一環として制作された作品です。作品の設置場所はこちら(Google Map)(このパヴィリオンのみ同じものが高輪ゲートウェイ駅改札内にも展示されています)。開催期間は2021年9月5日(日)まで。

こちらはアーキテクチャーフォトによるレポート

藤本壮介によるパヴィリオン「Cloud pavillion(雲のパビリオン)」の設置場所は、代々木公園パノラマ広場付近。
公園の中ということもあり、植栽に囲まれ遠くからでも眺めることができる。藤本はこのパヴィリオンを「世界中の様々な国や地域や状況の上に浮かぶ『世界の大屋根』のような存在である雲にインスピレーションを受けて、『全ての人のための場所』というコンセプトのもと、多様性と寛容性を象徴する場所として考案」したのだという。

実際にこの作品を眺めてみると、その選ばれた色彩や形状によって藤本が構想する「多様性と寛容性を象徴」という意図も感じられるが、同時に雲をスタート地点として実際に素材や寸法が与えられた作品としての面白さも浮かび上がってくる。

その形態はユニークな形状の風船と言ってもいいように思うが、それが3本の細い棒で支えられているようにも見えるし、浮かび上がらないように地面につなぎ留められているようにも見える。建築をつくるという行為においては重力をどう扱うかということが避けられないことであり、それが構造をどう構想し表現するのかという視点に繋がるのであるが、本パヴィリオンではこの重力と構造の関係が視覚的に揺らぐような感覚を与えている。それがこの建築の面白さのひとつだろう。

また、このパヴィリオンは、置かれた環境の中で、使用されている白い色と素材が、見る角度や天気によっていろいろな表情を見せる。筆者が訪問した当日は、曇り空であったが、パヴィリオンを下からのぞくと、空の色とパヴィリオンの色が同化し境界が曖昧に見えた。逆に遠くから眺めてみると周囲の植栽を背景として、その形状がパキッとして見えたりもする。高輪ゲートウェイ駅改札内での本作品は観覧できていないが、また異なる印象を与えるのだろう。

雲を構想し、象徴として設計されたものであるが、そのスケールと公園の中という立地によって、ぼんやりと機能が想起されたの興味深く思えた。芝生の上ということもあり休憩用の小さな東屋のようにも感じられるのである。

このように色々なインスピレーションを湧き起こさせるのも藤本の緻密な構想によるものだろうか。

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