インタビュー集『アーキテクトプラス “設計周辺”を巻き込む』のプレビュー(4)、中村真広(ツクルバ)と岡部修三(upsetters architects)
ユウブックス から刊行されたインタビュー集『アーキテクトプラス “設計周辺”を巻き込む 』をプレビューします。
4回目のプレビューは、中村真広 / ツクルバ のインタビュー「自社プロジェクトで都市・建築へのエールを送る」と岡部修三 / upsetters architects のインタビュー「デザインと戦略、建築家として新しいフィールドとかたちを求めて」です。
本書はユウブックス の1作目『リノベーションプラス 拡張する建築家の職能 』の続編です。
「建築家の職能の拡張」を共通のテーマにしながらも、『リノベーションプラス』が「探求と生活の両立」であるならば、今作は「探求の延長にある領域で、フィーについて考える」に編集者の個人的な関心が移ったことも反映されました。
具体的には設計業務を遂行するうえで、それをより良いものとするために自然と考察し、手掛けることになる領域、つまり建物のソフトの部分に関わってくる「企画」「リサーチ」「コンサルティング」といった、“設計周辺”に積極的に携わることの可能性を探っています。
取材を通し、ソフト面でも提案した価値に見合う対価を得ること、それがアトリエ系設計事務所の置かれた経営状況をより良い方向に導き、ひいては設計者の地位の向上につながるのではと、建築家の方々には教えていただきました。
もちろんそれらの領域への進出が仕事を取るための工夫、フィーについての試行錯誤、といった側面だけで行われているわけでは決してありません。
多くが社会問題を解決し、またよりよい設計ができるような環境を整えたり、多様化する社会にプロジェクトを対応させたり、歴史文化やコミュニティに貢献する事業を生み出すなど、建築家らしい視点でより広く社会に良い影響を与える手法について深く考え、試みられています。
ちなみに、いわゆる“上流工程”に建築家が関わることの意味とは何か、についても巻頭鼎談では熱く議論が交わされました。
本書ではこのように、社会と同時に建築界に対し、建築家が“設計周辺”に職能を広げることへの可能性を探っています。
ぜひご一読いただけましたら幸いです。