横山周作 / STAR DESIGN OFFICEが設計した、愛媛・松山市の、飲食店舗「しののめ菜」です。
築70年の建物を飲食店にする計画で、既存外観を生かし内部に現代性と非日常を求めて地域産和紙等の素材で空間を装飾、新旧の部分が移ろう自然と一体となり展開する空間をつくる事が意図されました。店舗の公式サイトはこちら。
70年前に建てられた建築を、老舗すき焼き・しゃぶしゃぶ店の移設先として再生させるプロジェクト。
外観は補修・外構以外手を加えず、内部空間に現代と、一時を過ごす場所として非日常の華やかさを内包させようと考えた。
丁寧な仕事がなされた本館に簡素なつくりの増築棟が併設された構造となっており、すべてが庭に面する独立した5つの個室とした。
特に老朽化が激しく、飲食店として現しにするつくりではないと判断した増築棟は構造補強後、収納スペースを「床」に変換させ、新しい主のあかしを表現する空間とした。主人の趣向を表す「床」を空間に変化を与える重要な要素と考え、既存の構造柱に地元愛媛の五十崎和紙を巻き床柱に見立てることで新設し、外部・内部の新旧の空間が、移ろう自然と一体となって展開していく構成を目指した。
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以下、建築家によるテキストです。
新旧が共存する新しい世界をつくる
70年前に建てられた建築を、老舗すき焼き・しゃぶしゃぶ店の移設先として再生させるプロジェクト。
外観は補修・外構以外手を加えず、内部空間に現代と、一時を過ごす場所として非日常の華やかさを内包させようと考えた。
丁寧な仕事がなされた本館に簡素なつくりの増築棟が併設された構造となっており、すべてが庭に面する独立した5つの個室とした。
特に老朽化が激しく、飲食店として現しにするつくりではないと判断した増築棟は構造補強後、収納スペースを「床」に変換させ、新しい主のあかしを表現する空間とした。主人の趣向を表す「床」を空間に変化を与える重要な要素と考え、既存の構造柱に地元愛媛の五十崎和紙を巻き床柱に見立てることで新設し、外部・内部の新旧の空間が、移ろう自然と一体となって展開していく構成を目指した。
暖簾をくぐった先に見えるのは繊細な格子窓と、灯に照らされ淡く輝く五十崎和紙の襖、そして紅葉や露地が、はじめからあったかのように調和している。坪庭には前店舗から共に育った南天を移植し、既存の格子戸、生まれ変わった増築棟が、過去―現在と対峙され、経てきた時間の質を感じられるよう展開していくことを意図した。すべての部屋は庭に面し、季節や時間の変化が空間に豊かさをあたえてくれる。
ここで過ごした時間が記憶に残り、いつの日か思い出されることがあれば幸せである。
■建築概要
しののめ菜(しののめさい)
所在地:愛媛県松山市二番町
用途:飲食店
設計:STAR DESIGN OFFICE 横山周作
施工:FUKUOKA
竣工年月:2021年2月
竣工写真:北村徹