SHARE 丹羽隆志アーキテクツによる、ベトナムの店舗「Pizza 4P’s アークパビリオン」。新設商業モールの独立棟として計画、工業都市の特徴を取り込んだ象徴的な建築を目指してモールを巨大な港に見立て“方舟”の様に設計、工業素材を建材に使用し視覚と触覚で都市を感じさせる
丹羽隆志アーキテクツが設計した、ベトナムの店舗「Pizza 4P’s アークパビリオン」です。
新設商業モールの独立棟として計画、工業都市の特徴を取り込んだ象徴的な建築を目指してモールを巨大な港に見立て“方舟”の様に設計、工業素材を建材に使用し視覚と触覚で都市を感じさせる事が意図されました。店舗の公式サイトはこちら。
首都ハノイから100kmほど東へ。
紅河の河口に位置するハイフォンはベトナム北部で最大の港を擁し、物流と工業のハブである。
「Pizza 4P’sアークパビリオン」と名付けられたこのプロジェクトは新設のショッピングモールの一角に独立棟として設計された。
ハイフォンの工業都市としての特徴と価値を取り込み、新都市エリアにシンボリックなモニュメントをつくる。また、Pizza 4P’sの掲げるサスティナブルダイニングのコンセプトも反映したい。そこで人と物とが集積する巨大な港のようなショッピングモールに、都市の記憶を載せて係留された方舟(アーク)としてデザインした。
工業港湾都市ハイフォンでは様々な工業素材が手に入る。そのテクニカルな素材を光とともに空間の演出に用いた。エントランスドアを開けると、金属のチェーンカーテンがゲストを迎える。さらに、大きさや形状の異なる鎖をファサード、手すり、登攀植物のサポートなどに用いた。ハイサイドライトと縦スリットの窓から入ってきた光がこれらの鎖に反射し、刻一刻と変わる自然光を映し出す。 港湾都市から出る様々なスクラップ。それをリサイクルするジャンクヤードの片隅から船舶用の堅牢な照明を探し出した。
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以下、建築家によるテキストです。
首都ハノイから100kmほど東へ。
紅河の河口に位置するハイフォンはベトナム北部で最大の港を擁し、物流と工業のハブである。
「Pizza 4P’sアークパビリオン」と名付けられたこのプロジェクトは新設のショッピングモールの一角に独立棟として設計された。
ハイフォンの工業都市としての特徴と価値を取り込み、新都市エリアにシンボリックなモニュメントをつくる。また、Pizza 4P’sの掲げるサスティナブルダイニングのコンセプトも反映したい。そこで人と物とが集積する巨大な港のようなショッピングモールに、都市の記憶を載せて係留された方舟(アーク)としてデザインした。
立体的ランドスケープがいざなうアプローチ
隣接するショッピングモールは延床約16万平方メートル、3階建ての建物で、一日最大20万人が訪れる。ショッピングモールから出てこのレストランにアプローチする人たちに、巨大なモールとは異なる体験としてのダイニング空間へ誘うため、身体的な場面転換と空間スケールの変化を用意した。
メインエントランスは2階とし、立体的なランドスケープをアプローチとした。前庭のフラワーガーデンに設けたスロープをゆるやかに登り、建物内部に入る。迎えるのはショッピングモールの天井より高い9mのダイナミックな吹き抜け空間。メインダイニングとした。中心に位置するピザオーブンの上部には、北向きに向けた大小9つのハイサイドライト。柔らかい光を大空間に取り込む。その窓先にはベンジャミンの木を植え、強烈な南国の日差しから建物を守る自然の屋根をつくる。葉を透過した優しい光がダイニングエリアへ落ち、風に揺れる葉が目を楽しませる。樹のライトアップはヴォイドの高さを夜も感じさせる視線の仕掛けでもある。
ハイフォンの街の素材を照らしだす光と触感
工業港湾都市ハイフォンでは様々な工業素材が手に入る。そのテクニカルな素材を光とともに空間の演出に用いた。エントランスドアを開けると、金属のチェーンカーテンがゲストを迎える。さらに、大きさや形状の異なる鎖をファサード、手すり、登攀植物のサポートなどに用いた。ハイサイドライトと縦スリットの窓から入ってきた光がこれらの鎖に反射し、刻一刻と変わる自然光を映し出す。
港湾都市から出る様々なスクラップ。それをリサイクルするジャンクヤードの片隅から船舶用の堅牢な照明を探し出した。ひとつひとつ異なるかたちが空間をユニークに、そしてその重量感がここにしかないエモーショナルな雰囲気をつくりだしている。
オーブンを囲むエリアの床仕上げはテラゾである。アクセントとして、真鍮の丸棒を斜めに切り出して楕円でつくったパターンを50cmおきに散りばめた。更にオーブンの仕上げにも用いることで、工業的な雰囲気を演出する細かなディテールを加えた。上階の床は3種類のテラゾを用いた。真鍮の見切りで斜めに切り取り、歩くたびに素材が切り替わるリズムを生み出した。オーブンの背後にはシンプルかつダイナミックなパターンで地元の耐火レンガを積んだ。これらのデザインは海のさざ波のように見る場所や光の当たる方向によって表情を大きく変える。
都市に眠るリソースから選び出されたこれらの材料は、外見だけでなく触感からもハイフォンという都市を感じることができる貴重な手がかりだ。
この場所の文化と歴史を載せた方舟。未来の世代に向けた保存、表現、啓蒙を楽しむダイニングとなる。
■建築概要
所在地:10 Vo Nguyen Giap street, Hai Phong city, Vietnam
用途:レストラン
施主:4P’s Corporation
建主:AEON MALL Hai Phong Le Chan
設計社:Takashi Niwa Architects
設計者:丹羽隆志
設計チーム:髙橋京平, Nguyen Van Khuong
設備設計:SMT Viet Nam Construction Joint Stock Company
建築施工:Obayashi Vietnam Corporation
インテリア施工:CYN Furniture joint stock company
構造:RC造
主要内装仕上げ:レンガ積み、コンクリートブロック積み
規模:延床面積840m2、敷地面積390m2、地上3階建て
竣工年:2020年12月
写真撮影:大木宏之
種別 | 使用箇所 | 商品名(メーカー名) |
---|---|---|
外装・屋根 | 屋根 | アスファルト防水 |
外装・壁 | 外壁 | リシン吹付塗装(Jotun) |
外装・建具 | サッシ | |
内装・床 | 水廻り床 | タイル(Vietceramics) |
内装・床 | ダイニング床 | 真鍮パターン付テラゾー |
内装・壁 | 壁 | 構造現しの上防塵塗装 |
内装・天井 | 2階天井 | AEP塗装(Jotun) |
内装・家具 | ダイニング家具 | 製作 |
内装・照明 | ダイニング照明 | 船舶用照明リサイクル |
内装・設備 | 3階ダイニング | テキスタイルダクト(EUROAIR) |
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