工藤浩平建築設計事務所が設計した、埼玉・吉川市の「バレエ教室のある家」です。
周囲で建替えが進む“変わり続ける”地域に計画されました。建築家は、未来の変化を許容する“大らかな”存在を目指し、箱を“寄せ集める”様に計画して“生活の余白”が散在する建築を構築しました。また、細かな屋根の集合で街並のスケールとも調和させる事も意図されました。
江戸川と中川に挟まれた、都市部へ1時間圏内のベッドタウンとして計画された住宅街に建つ。
かつては小さなスケールの道路や家々が立ち並ぶ閑静な土地だったが、30年前、川に架かる大きな橋が付近に完成し、街の様相が変化していった。橋に面した前面道路には防音壁が立ち、それに接する小道は生活が滲み出しており、異なるスケールが混在する環境ができていた。老朽化した住宅の建て替わりも進み、絶えず変化している街の角地に、敷地はある。
施主はもともと駅前でバレエ教室を営んでいたが、家を建て替える際、家の中にバレエ教室を併設することを決めた。
その決意の裏側で、本当にずっとバレエ教室を営み続けられるか、バレエ教室でなくなった際、その空間をどう使っていけばよいのか、将来像を明確に描いてはいなかった。
変わり続ける街の、暫定的にしか決まっていない暮らしのあり方。こうした未決の未来に対して、いかようにでも変化できる余地がある、大らかな構成をもつ建築を目指した。
老後の生活にも対応できるよう、住宅を1階に、無柱空間となるバレエ教室を2階にもつ合理的な構成を選んだ。すると、最も大きな面積を必要とするバレエ教室の大きさが建物全体のボリュームを決めることになり、2階のフットプリントをそのまま1階に落として部屋を割ると、生活像や予算に対して過大になってしまう。
そこで、1階は生活像に沿った部屋の大きさを、箱を寄せ集めるように計画し、軒下空間やピロティのような生活の余白をいくつも構築した。また、2階のヴォリュームに従い素直に屋根を架けると街並みに対してスケールが逸脱するため、下屋も含めて細かな屋根が集合したような構成とした。
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以下、建築家によるテキストです。
違うことの豊かさを許容する未完成な住まい。
バレエ教室のある住宅を設計した。
変化していく街
江戸川と中川に挟まれた、都市部へ1時間圏内のベッドタウンとして計画された住宅街に建つ。
かつては小さなスケールの道路や家々が立ち並ぶ閑静な土地だったが、30年前、川に架かる大きな橋が付近に完成し、街の様相が変化していった。橋に面した前面道路には防音壁が立ち、それに接する小道は生活が滲み出しており、異なるスケールが混在する環境ができていた。老朽化した住宅の建て替わりも進み、絶えず変化している街の角地に、敷地はある。
変化し続ける家族像
施主はもともと駅前でバレエ教室を営んでいたが、家を建て替える際、家の中にバレエ教室を併設することを決めた。
その決意の裏側で、本当にずっとバレエ教室を営み続けられるか、バレエ教室でなくなった際、その空間をどう使っていけばよいのか、将来像を明確に描いてはいなかった。
変化を受け入れるおおらかな構成
変わり続ける街の、暫定的にしか決まっていない暮らしのあり方。こうした未決の未来に対して、いかようにでも変化できる余地がある、大らかな構成をもつ建築を目指した。
老後の生活にも対応できるよう、住宅を1階に、無柱空間となるバレエ教室を2階にもつ合理的な構成を選んだ。すると、最も大きな面積を必要とするバレエ教室の大きさが建物全体のボリュームを決めることになり、2階のフットプリントをそのまま1階に落として部屋を割ると、生活像や予算に対して過大になってしまう。
そこで、1階は生活像に沿った部屋の大きさを、箱を寄せ集めるように計画し、軒下空間やピロティのような生活の余白をいくつも構築した。また、2階のヴォリュームに従い素直に屋根を架けると街並みに対してスケールが逸脱するため、下屋も含めて細かな屋根が集合したような構成とした。
無柱空間である2階は、いかようにも間仕切ることができるため、将来、2世帯住宅としてもよい。駐車場を含めた余白は増築の余地もあり、さらにもっと余白ができるように減築する選択もできる。
中心をつくらない住宅
この建築物には明確な中心があるわけではない。しかし、中心がないことこそ、将来に対して伸び縮みできる寛容さをつくることにも繋がった。中心がなく、散々としたものはそのままに、寄せ集めるようにしてつくる建築こそ、常に変化し続ける社会に柔軟に対応できる余地を持つのではないかと考えた。
(工藤浩平)
木と鉄のハイブリッド屋根架構
9.1mx8.2mの切妻屋根の無柱空間を木と鉄のハイブリッド屋根架構にて実現した。
中央段差部のハイサイドライトのサッシ受けを兼ねた角パイプのフィーレンディールトラスを屋根の開き止めを兼ねた大梁とし、そこから妻面への棟木をH鋼(小梁)にて、棟木から平側へは、集成材(垂木)を架けて構成している。
鉛直荷重による屋根の開きを考慮して、長期荷重時の水平変形分だけトラスには製作キャンバーを設け、トラスには下向きのプレストレスをかけた状態で建て方を行うことで、トラスと隣接する木軸組が馴染むよう施工している。
結果として、木造らしからぬ凹凸を有する特徴的な無柱空間を表現することが出来た。
(國江悠介 / 平岩構造計画)
■建築概要
題名:バレエ教室のある家
所在地:埼玉県吉川市
主要途:専用住宅
設計:工藤浩平建築設計事務所
担当:工藤浩平、川上華恵、川畑純
施工:住建トレーディング 東京支店
担当:大塚史拓
構造設計:平岩構造計画
担当:平岩良之、國江悠介
照明計画:飯塚千恵里照明設計事務所
担当:飯塚千恵里
デザインエンジニアリング:御幸朋寿
構造:木造在来
階数:地上2階
敷地面積:205.74m2
建築面積:92.286m2
延床面積:175.09m2
設計:2021年5月~2022年6月
工事:2022年6月~2022年12月
竣工:2022年12月
写真:楠瀬友将