岡﨑絢+金沢将 / Lenz Designが設計した、神奈川・川崎市の住宅改修「house AO」です。
設計者が“頑固”な印象を感じた既存を改修した自邸です。建築家は、限られた予算での現代的な暮らしの実現を求め、可変的性とおおらかさを備えた“緩んだ和室”を志向しました。そして、和室の各箇所の構成要素の一部を置換する方法で作られました。
築50年の木造2階建てリノベーションである。
既存の状態を見た時、融通の効かない「頑固」な印象であり、それは真壁・畳・障子などの部分であるモノに起因していた。同時に、この「頑固な和室」という関係性をつくりたいがために、これらのモノが選択されていて、部分と関係が互いに「頑固な和室」であろうとしているように思えた。
本物件は設計者の自邸である。
我々の希望は、今まで集め、選び、また造作してきた椅子やテーブルを置いて現代的に暮らすことであった。しかし、工事予算が250万円であることを考えると、全てのしつらえを入れ替えるフルリノベーションという選択肢はなかった。
そこで日本美学に見られる「見立て」の手法を用いて、和室の要素と共存し、現代的に住むことのできる「緩んだ和室」を目指した。「見立て」とは、竹筒を花器に転用する、などに見られるような、あるものを別のものになぞらえることをいう。
例えば部分である畳は、三六版の形状で/井草という素材で/若草色である。対してモダンな和室と呼ばれている部屋の畳は、井草だが/正方形形状だったり/ブラックだったりする。畳に限らず、部分の形状・素材・色という3要素に着目して「見立て」ることで、和室と現代の要素が複合された緩んだ部分が生まれ、それらで空間を構成することで、「緩んだ和室」という関係性が生まれると考えた。
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以下、建築家によるテキストです。
「見立て」て生まれる、緩んだ関係性
築50年の木造2階建てリノベーションである。
既存の状態を見た時、融通の効かない「頑固」な印象であり、それは真壁・畳・障子などの部分であるモノに起因していた。同時に、この「頑固な和室」という関係性をつくりたいがために、これらのモノが選択されていて、部分と関係が互いに「頑固な和室」であろうとしているように思えた。
本物件は設計者の自邸である。
我々の希望は、今まで集め、選び、また造作してきた椅子やテーブルを置いて現代的に暮らすことであった。しかし、工事予算が250万円であることを考えると、全てのしつらえを入れ替えるフルリノベーションという選択肢はなかった。
そこで日本美学に見られる「見立て」の手法を用いて、和室の要素と共存し、現代的に住むことのできる「緩んだ和室」を目指した。「見立て」とは、竹筒を花器に転用する、などに見られるような、あるものを別のものになぞらえることをいう。
例えば部分である畳は、三六版の形状で/井草という素材で/若草色である。対してモダンな和室と呼ばれている部屋の畳は、井草だが/正方形形状だったり/ブラックだったりする。畳に限らず、部分の形状・素材・色という3要素に着目して「見立て」ることで、和室と現代の要素が複合された緩んだ部分が生まれ、それらで空間を構成することで、「緩んだ和室」という関係性が生まれると考えた。この住宅のモノ達においては、格子の天井、和紙のない障子、ピンクの縁側などというように、3要素の中に少なくとも1つは和室の要素を別のものに置換することで「見立て」て、それ以外はそのまま活用している。
また、“襖を開くと見通しが良い”、すなわち“室の間にモノがあるが見通せる”、という和室の空間分節の特徴を、“襖を借景窓の建具に”、“押入れの壁を筋交に”するなど、形状を読み替えることでより顕在化させた。そうすることで、複数の部分が同時に視野に入り、それぞれの部分による関係性自体も複合的になり、「緩んだ和室」がより顕著になると考えた。
「緩んだ和室」は「見立て」によって、和室というルーツをにわかに残しながらも、住人の可変的な暮らしを受け入れ、許容するおおらかな住処となる。
■建築概要
題名:house AO
場所: 神奈川県川崎市
用途:住宅
クライアント:夫婦
設計担当:岡﨑絢、金沢将
施工会社:N.Style
構造規模:木造2階建て
敷地面積:152.85m2
建築面積:51.64m2
延床面積:78.08m2
設計期間:2022年9月~2022年10月
工事期間:2022年11月~2023年1月
撮影:森田大貴、Lenz Design