会田友朗 / アイダアトリエが設計した、長野・御代田町の「Ten Pillars House」です。
仕事中心の生活を退いた施主の“暮らしを楽しむ”為の家です。建築家は、小屋の様なシンプルで柔軟な空間の要望に、基礎と一体化する10本の壁柱で“無柱空間”を構築しました。また、構造形式は季節や時間を感受する為の多彩な開口部の実現にも寄与しています。
敷地は軽井沢・追分エリアにも近い御代田町の緩やかな東斜面である。
クライアントは、東京で長く続けてきた事業を後進に譲り、自然にあふれたこの地で、これまでの仕事中心の多忙な生活から、「暮らす」こと、そしてその暮らしを「楽しむ」ことを主眼にすえ、そのための小屋を建てたいという希望を話された。
自ら開墾して農作業をしたり、庭をつくったり、自動車やバイクをいじる拠点となることも想定された。キッチンや水回りや収納に豪華な仕様は求められず、また水回り空間以外は壁で細かく仕切らず、小屋のようなシンプルかつフレキシブルな一体空間が求められた。
この地域で「暮らす」ことを最大限楽しむという目的のためには、日々移ろいゆく季節や時間を感じることのできる空間であることが大事だと考えた。そこで、風景のさなかにたたずむおおらかな一体空間をどのように実現するべきか考えた。
結果、このエリアの凍結深度から導かれた深基礎一体となったRCの鉛直片持ち壁柱を10本立ち上げ、一般製材による経済的な木造在来工法による架構の耐震要素としサポートする構造形式とした。屋根は120角が455ピッチに並ぶシンプルで軽快な合掌形式とし、基礎と一体となった10本のRCの控柱は袖壁(バットレス=buttless)としてこの合掌屋根架構が開こうとする水平力(スラスト=thrust)を抑える役割を担う。
このことで、建築の内部には、梁間方向で柱梁のない6m以上のスパンの木造としては大空間が実現している。また桁方向の外壁の筋交いを含めて壁量が抑えられることから開口の大きさや位置に自由度が生まれた。
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以下、建築家によるテキストです。
RCの控柱による無柱空間のシンプルな「暮らす」ための小屋
敷地は軽井沢・追分エリアにも近い御代田町の緩やかな東斜面である。
クライアントは、東京で長く続けてきた事業を後進に譲り、自然にあふれたこの地で、これまでの仕事中心の多忙な生活から、「暮らす」こと、そしてその暮らしを「楽しむ」ことを主眼にすえ、そのための小屋を建てたいという希望を話された。
自ら開墾して農作業をしたり、庭をつくったり、自動車やバイクをいじる拠点となることも想定された。キッチンや水回りや収納に豪華な仕様は求められず、また水回り空間以外は壁で細かく仕切らず、小屋のようなシンプルかつフレキシブルな一体空間が求められた。
この地域で「暮らす」ことを最大限楽しむという目的のためには、日々移ろいゆく季節や時間を感じることのできる空間であることが大事だと考えた。そこで、風景のさなかにたたずむおおらかな一体空間をどのように実現するべきか考えた。
結果、このエリアの凍結深度から導かれた深基礎一体となったRCの鉛直片持ち壁柱を10本立ち上げ、一般製材による経済的な木造在来工法による架構の耐震要素としサポートする構造形式とした。屋根は120角が455ピッチに並ぶシンプルで軽快な合掌形式とし、基礎と一体となった10本のRCの控柱は袖壁(バットレス=buttless)としてこの合掌屋根架構が開こうとする水平力(スラスト=thrust)を抑える役割を担う。
このことで、建築の内部には、梁間方向で柱梁のない6m以上のスパンの木造としては大空間が実現している。また桁方向の外壁の筋交いを含めて壁量が抑えられることから開口の大きさや位置に自由度が生まれた。
一方で、このコンクリートの袖壁は、内部から風景を切り取る(フレーミングする)役割も同時にはたしている。地域のシンボルである浅間山などが直接見えるわけではないこの敷地において、緑豊かではあるがややもするととりとめもない周辺風景を、借景として建築内部にとりこむために、コンクリートのような堅さのある素材で切り取ることは有効な手段である。
風景を切り取る窓の比率は黄金比を参考に決定し、映画のスクリーンのように風景を定義することを意図している。
■建築概要
題名:Ten Pillars House
所在地:長野県北佐久郡御代田町
主用途:専用住宅
設計事務所名:株式会社アイダアトリエ
担当:会田友朗、下平貴也
建築施工:竹花工業株式会社
担当:藤巻英之 水上幸治 青木智弥
電気施工:有限会社浅間電気商会
担当:中澤正治
衛生施工:有限会社アクアテック
担当:佐藤大樹
構造事務所名:株式会社坂田涼太郎構造設計事務所
担当:坂田涼太郎 太田原ナヴィッド崇秀
主体構造・構法:木造在来工法
基礎:べた基礎
階数:平屋
地域地区:第1種低層住居専用地域
道路幅員:8,600mm
軒高:2,610mm
最高高さ:4,080mm
敷地面積:1,886.47m2
建築面積:120.96m2(建蔽率:5.98% 許容:40%)
延床面積:92.74m2(容積率:4.93% 許容:60%)
設計期間:2020年11月~2021年6月
工事期間:2021年7月~2022年2月
竣工:2022年2月
写真:野秋達也