SHARE 堤由匡建築設計工作室による、中国・北京市の飲食店「TAO」。カウンターと二つの個室を備えた店。記号的作用を排除した“らしくない”空間を求め、諸室の天井等の各要素を“立体的な操作”と“質感の選定”で構築。デザインの“抽象性”によって人々の想像力を引き出す
堤由匡建築設計工作室が設計した、中国・北京市の飲食店「TAO」です。
カウンターと二つの個室を備えた店の計画です。建築家は、記号的作用を排除した“らしくない”空間を求め、諸室の天井等の各要素を“立体的な操作”と“質感の選定”で構築しました。そして、デザインの“抽象性”によって人々の想像力を引き出す事が意図されました。
「らしくない」空間を作りたいと常々思っている。
商業系のプロジェクトでは依頼される業態に従って「らしい」空間を求められることが多い。このようなスタイル重視のデザインは、手っ取り早くその店の業態をイメージさせる記号的作用をもつが、しかしその記号のせいで私たちが感じ取る想像力もまた、大きく制限されてしまっている。そこで、今回は記号的要素は極力排除し、質感とヴォリーム感を頼りに抽象的な空間を作ろうと考えた。
全体を暗めの色調にしたいという施主のリクエスト以外は我々が主導して設計を進め、高い天高を活かした大胆なヴォリーム操作を試みた。
エレベータを降りると、大きく垂れ下がる天井が現れる。一度、空間が圧縮されることで、その後の空間がより一層、開放感を伴って現れ出てくる。突き当たりの壁には石を乱積みし、滑らかな天井との対比を作った。立体性をより強く感じさせるために、表面は大粒の吹き付け塗装を施し、カウンターの上に渡された無骨な丸太からの照明でぼんやりと照らし出される。
皆が安易にスタイルを求めすぎたせいで、いつの間にか「こうあるべき」という共同幻想に囚われ、がんじがらめになってしまっている。
カテドラルの中に中華料理屋があったって、お寺の中でフレンチのコースを味わったって、洞窟の中で寿司を食べたって良い。
デザインはもっと自由だ。
以下の写真はクリックで拡大します
以下、建築家によるテキストです。
「らしくない」空間を作りたいと常々思っている。
商業系のプロジェクトでは依頼される業態に従って「らしい」空間を求められることが多い。このようなスタイル重視のデザインは、手っ取り早くその店の業態をイメージさせる記号的作用をもつが、しかしその記号のせいで私たちが感じ取る想像力もまた、大きく制限されてしまっている。そこで、今回は記号的要素は極力排除し、質感とヴォリーム感を頼りに抽象的な空間を作ろうと考えた。
全体を暗めの色調にしたいという施主のリクエスト以外は我々が主導して設計を進め、高い天高を活かした大胆なヴォリーム操作を試みた。
エレベータを降りると、大きく垂れ下がる天井が現れる。一度、空間が圧縮されることで、その後の空間がより一層、開放感を伴って現れ出てくる。突き当たりの壁には石を乱積みし、滑らかな天井との対比を作った。立体性をより強く感じさせるために、表面は大粒の吹き付け塗装を施し、カウンターの上に渡された無骨な丸太からの照明でぼんやりと照らし出される。
個室部分も立体的操作のみでデザインしており、カウンター個室は直方体を積み重ねたような形状、テーブル個室はパンテオンのようなドーム天井から光が降り注いでくるデザインとなっている。トイレはモルタル風塗装のみでミニマルに仕上げている。
皆が安易にスタイルを求めすぎたせいで、いつの間にか「こうあるべき」という共同幻想に囚われ、がんじがらめになってしまっている。
カテドラルの中に中華料理屋があったって、お寺の中でフレンチのコースを味わったって、洞窟の中で寿司を食べたって良い。
デザインはもっと自由だ。
■建築概要
住所:中国北京市
インテリアデザイン:堤由匡建築設計工作室(堤由匡、明達、肖陽,洪秀秀)
施工:北京森洋遠航建築装飾有限公司
コーディネート:北京鳴意品牌設計有限公司
設備設計:北京東洲斎技術諮詢有限公司(石川星明、竹林克宣、山崎隆司)
面積:190m2
竣工:2023年3月
写真:鋭景撮影
種別 | 使用箇所 | 商品名(メーカー名) |
---|---|---|
内装・壁 | カウンター席壁 | 吹き付けスタッコ(San Marco) |
内装・天井 | カウンター席天井 | 吹き付けスタッコ(San Marco) |
内装・壁 | カウンター席アクセントウォール | 特殊左官風塗装(BENJAMIN) |
内装・壁 | 個室アクセントウォール | 天然石調タイル(IMOLA) |
内装・壁 | トイレ壁 | モルタル風塗装(FUFINI) |
内装・天井 | トイレ天井 | モルタル風塗装(FUFINI) |
内装・床 | 階段室床 | モルタル風塗装(FUFINI) |
内装・壁 | 階段室壁 | モルタル風塗装(FUFINI) |
内装・天井 | 階段室天井 | モルタル風塗装(FUFINI) |
内装・照明 | 照明 | 階段室ブラケット照明(BENTU) |
※企業様による建材情報についてのご意見や「PR」のご相談はこちらから
※この情報は弊サイトや設計者が建材の性能等を保証するものではありません
I always want to create a space that is “untypical”. Commercial projects often require a “typical” space according to the requested business category. This kind of style-oriented design has a symbolic effect that gives us a quick image of the business category, but because of this code, the images that we can perceive is also greatly limited. Therefore, this time, I decided to eliminate symbolic elements as much as possible and create an abstract space relying on texture and volume.
Except for the owner’s request to make the entire space darker, we took the initiative in designing and studying with bold volume manipulation that takes advantage of the high ceiling. When you get off the elevator, you will see a large hanging volume. Once the space is compressed, the space after that appears with an even greater sense of openness. Stones were piled up randomly on the wall at the end to create a contrast with the smooth ceiling. In order to give a stronger feeling of solidity, the surface is spray-painted with large grains, and is dimly illuminated by the light from the rustic log suspended over the counter. The private rooms are also designed with three-dimensional operations. The private room which has sushi counter shaped like a stack of rectangular volumes, and the table private room designed to let light pour in from the pantheon-like domed ceiling. The toilet has a minimalistic finish with only mortar paint.
Because everyone is looking for a style too easily, without realizing it, they were caught up in a communal fantasy of “this is how it should be” and became tied down. It would be nice to have a Chinese restaurant in a cathedral, a French course meals in a traditional temple, or sushi in a cave. Design is more free.
Address: Beijing, China
Interiors design: Tsutsumi Associates
(Yoshimasa Tsutsumi、Mingda, Yang Xiao, Xiuxiu Hong)
Coordinate: Ming Branding Design
Facility Planning: Beijing Dongzhouji Technical Consultation
Construction: Beijing Senyang Yuanhang Jianzhu Zhuangshi
Area: 190㎡
Year: March 2023
Photographs: Ruijing Photo