デジタルデザインの文脈で近年再評価が進む建築家 葉祥栄の、シドニーでの建築展「Revisiting Shoei Yoh」の会場写真など。同時開催のVR展覧会では、葉作品“内住コミュニティセンター”のデジタルツインがつくられ、資料や模型が展示される 展覧会の様子。 photo©Reece McMillan
デジタルデザインの文脈で近年再評価が進む建築家 葉祥栄の、シドニーでの建築展「Revisiting Shoei Yoh」の会場写真など。同時開催のVR展覧会では、葉作品“内住コミュニティセンター”のデジタルツインがつくられ、資料や模型が展示される 今回の展覧会のために新たに作成した建築模型。アーカイブ資料に基づき3Dデータを作成し、高性能3Dプリンターで出力している。 photo©Reece McMillan
デジタルデザインの文脈で近年再評価が進む建築家 葉祥栄の、シドニーでの建築展「Revisiting Shoei Yoh」の会場写真など。同時開催のVR展覧会では、葉作品“内住コミュニティセンター”のデジタルツインがつくられ、資料や模型が展示される デジタルツインとして制作された「内住コミュニティセンター」の外観。実際の建築は1994年竣工。 許可を得てスクリーンショットを掲載
デジタルデザインの文脈で近年再評価が進む建築家 葉祥栄の、シドニーでの建築展「Revisiting Shoei Yoh」の会場写真など。同時開催のVR展覧会では、葉作品“内住コミュニティセンター”のデジタルツインがつくられ、資料や模型が展示される VR展覧会の会場全体を見返す。 許可を得てスクリーンショットを掲載
デジタルデザインの文脈で近年再評価が進む建築家 葉祥栄の、シドニーでの建築展「Revisiting Shoei Yoh」の会場写真と、同時に立ち上げられたVR展覧会の様子を紹介します。展覧会は2022年1月25日までオーストラリアン・デザイン・センターで開催 されます。
展覧会の開催と同時に、「SHOEI YOH ARCHIVE 葉祥栄再訪」というウェブサイトが開設 されており、こちらでは葉の代表作品「内住コミュニティセンター」(1994年竣工)のデジタルツインを作成し、その中でVR展覧会が開催 されています。その他にも、図面・CG・写真がまとめられているデジタルアーカイブ 、作品の3Dスキャンによる点群データ なども公開されています。
また、オンラインで読める記事としては、日本建築学会の建築討論が2019年8月の特集で「葉祥栄《小国ドーム》── 現代木造とコンピュテーショナル・デザインの源流を探る 」が公開されています。
葉祥栄 略歴
1940年、熊本県に生まれる。1962年、慶應義塾大学経済学部卒業後、渡米し、ウィッテンバーグ大学(オハイオ州)で美術と応用美術を学ぶ。1964年に日本帰国し、インターナショナル・デザイン・アソシエイツ(東京)、NIC(福岡)のデザイナーを経て、1970年、葉デザイン事務所を福岡に設立。以来、福岡を拠点として、建築・インテリア・プロダクトと多岐にわたるデザイン活動に取り組む。
日本初のガラス4辺構造シール接合を採用した「インゴット」(1977年)や日本で初めてFRP成形パネルを外壁に用いた「木下クリニック」(1979年)など、新しい技術と詩的な空間が融合した作品群を発表。また、「光格子の家」(1981年)などの光をテーマとした一連の作品によって国内外で高い評価を得る。
1984年、松井源吾らと協働して木造立体トラス構造の設計に着手。南阿蘇の「ミュージックアトリエ」(1986年)にはじまり、小国町の「小国町交通センター」(1986年)や日本初の3千m2を超える木造建築「小国町民体育館(小国ドーム)」(1988年)を完成させる。地場の杉材を用いて建設された一連の木造立体トラス建築は、現代日本における木造復興の先駆けとなる。
1990年代に入ると、葉祥栄は「自然現象としての建築」を追求し、「ギャラクシー富山」(1992年)、「内住コミュニティセンター」(1994年)などの作品を発表。コンピュータによる構造解析を積極的に設計に取り入れたこれらの作品はデジタルデザインの先駆的な作品と目されており、カナダ建築センターにおける展覧会「Archaeology of the Digital」(グレッグ・リン, 2013)で展示されるなど、 海外で高く評価されている。
日本インテリアデザイナー協会賞(1979年)、日本建築協会賞(「光格子の家」1980年)、毎日デザイン賞(1983年)、日本建築学会賞(「小国町における一連の木造建築」1989年)、IAKS賞ゴールドメダル(1993年)など、受賞多数。2007年、ウィッテンバーグ大学より名誉芸術博士号を授与される。
1992年に、コロンビア大学大学院客員教授。1996年~2005年、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授。
現在、葉祥栄および葉デザイン事務所が制作した図面、模型、プロダクト、資料などの大規模なコレクションは、九州大学芸術工学研究院環境設計グローバル・ハブ内の葉祥栄アーカイブに保管されている。また、FRACセンター(フランス・オルレアン)、カナダ建築センター(カナダ・モントリオール)、国立国際美術館(日本・大阪)にも、小規模ながら一部の資料が所蔵されている。
(岩元真明)