


上林剛典 / platが設計した、東京の「渋谷のオフィス」です。
数年後に解体されるビル内の事務所の改修です。建築家は、解体過程で現れた痕跡に“味わい”を見出し、“時間の蓄積”と要求機能を“擦り合わせる”設計を志向しました。そして、既存の無機質で閉塞感のある空間を“生き生きとした”場所に変える事も意図されました。
東京・渋谷の築50年の数年後に取り壊しが決まっているオフィスビルの、1フロアのリノベーション。
フロア面積300坪のうち100坪を占める、エントランスやエンプティ・スペースなどのパブリック・スペースと、会議室を一新し、執務室他は現状を整える程度にとどめた。
現場を初めて見に行ったのは、前テナントの居抜き状態の時だったが、見通しが悪いプランも相まって閉塞感が強く感じられた。
ビルというクローズドな空間で働くスタッフたちにとって、何かしら生き生きとした発見のある場所にできればと思い、解体工事と並行して設計を進めていった。解体時に仕上げを剥がしていくと、50年の間に幾度となく行われた改修の痕跡が地層のように現れた。
クロスを剥がした後のパテの跡も、白、黄、薄桃、青など幾重にも混在し、抽象画のような趣がある。柱には耐震改修がなされた跡があり、床は当時のスラブまで磨き出していくと新築では表現できない味わいがあり、こうしたオフィスビルに刻まれた時間の蓄積を「環境」と捉えることとした。
ここで行ったのは、一般的なオフィスのリノベーションのように仕上げを刷新してうわべを整えるのではなく、むしろその逆で、歴史を掘り起こしながら、求められる機能性と擦り合わせるような方法だ。空間の一体感を損なわないよう、随所で塗装やディテールなど細かく調整も施している。



















