パオロ・メンデス・ダ・ロシャ(Paulo Mendes da Rocha)氏が亡くなりました。2006年にプリツカー賞を受賞したブラジルの建築家です。プリツカー賞のこちらのページに代表作等がまとまっています。また、2016年には日本の高松宮殿下記念世界文化賞を受賞していることも記憶に新しいでしょう。こちらのページに日本語での経歴等がまとまっています。ご冥福をお祈ります。
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スノヘッタが新設部分のデザインを手掛け、シャティヨン・アーキテクツ(Chatillon Architectes)が修復と再開発を担当した、フランス・パリの「カルナバレ博物館(musée Carnavalet)」です。17世紀に完成した建築の原形を尊重した上で現代に合わせアップデートしています。施設の公式サイトはこちら。
こちらは建築家によるテキストの翻訳です
スノヘッタがパリの歴史あるカルナバレ博物館に新風を吹き込む
2021年5月29日、4年間にわたる大規模な改修工事を経て、カルナヴァレ美術館がリニューアルオープンします。絵画、彫刻、家具、木工品、美術品、写真など、62万5千点にも及ぶ所蔵品が、パリの豊かな歴史を物語っています。スノヘッタは、美術館全体のレイアウト変更に参加し、シャティヨン・アーキテクツ(Chatillon Architectes)と協力して、美術館のオリジナルの特徴を大切にしながら、多くの来館者に対応できる新しい体験を提供しました。
2021年5月28日 – 2016年に、スノヘッタはリードアーキテクトのシャティヨン・アーキテクツ(Chatillon Architectes)とともに、フランスで最も著名な美術館のひとつである歴史的なカルナヴァレ美術館の建築改修を依頼されました。パリ3区、歴史と活気に満ちたマレ地区に位置する3,900㎡のカルナヴァレ美術館は、パリの美術館の中でも最も古いもので、2016年に改修のために閉館するまでは、毎年40万人以上の来館者を迎えていました。
リスペクトを込めたアップデート
カルナヴァレ美術館は、著名な建築家フランソワ・マンサール(François Mansart)が1655年に完成させた「オテル・カルナヴァレ」と、隣接する、建築家ピエール・ビュレット(Pierre Bullet)の図面に基づいて1688年に建てられた「オテル・ル・ペルティエ・ド・サン・ファルジョー」という2つの重要な建物が合体したものです。1800年代半ば以降、カルナヴァレ美術館は、フランスの建築・文化遺産としての重要性から、いわゆる「モニュメント・ヒストリック(フランス歴史的記念物)」に指定されています。
その歴史的な重要性から、美術館の全体的なデザインは、美術館の科学・文化チームやパリ市の幅広い専門家との緊密な協力のもとに進められています。この改修工事では、建物のオリジナルの特徴を慎重に尊重しつつ、現在の基準に適合するように修復し、すべての来館者にとっての博物館の総合的な体験を向上させています。後者は、美術館、中庭、庭園をより直感的に見て回れるようにするだけでなく、子供や障がい者にも適応できるようにすることで達成されています。全展示品の10%は子供の目線に合わせて展示されています。
シャティヨン・アーキテクツが美術館全体の修復と再開発を担当する一方で、スノエッタは受付の新しい家具や現代的な階段のデザインを通じて、空間に新しさを加えています。また、スノヘッタは美術館の案内表示、展示用の看板、パネル、調停装置などのグラフィックデザインを担当し、美術館の見学をスムーズにすることに貢献しています。
新しい記念碑的な階段は、ダークスチールの大胆な有機的形状と、洗練された木材のステップワークでデザインされています。スノヘッタは、プロジェクトの他の部分や、特にアージェンスNC(ナタリー・クリニエール)が制作した新しい常設の空間演出に合わせて、全体的にダークな色調で統一し、展示物のディテールや複雑さを際立たせています。
時代を超えたアプローチ
美術館のデザインに使われている形や素材は、時代を超越しています。このデザインは、持続可能なエネルギーソリューションと、高品質で長持ちする素材で構成されています。階段には パウダーコーティング塗装を施した金属を使用し、仕上げには無垢材を使用することで、耐久性を高め、素材のライフサイクルを長くしています。プラスチックや使い捨ての素材(看板の紙など)は、柔軟なマルチメディア・ソリューションに置き換えられています。
改装された受付エリアは、最適な使用方法を考慮して設計されており、チケットカウンターやクロークは、美術館の収容力と快適性を高めるために作り直されました。さらに、スノヘッタは教育活動に特化した新しいスペースをデザインし、美術館全体に導入しました。これにはワークショップやリサーチエリアが含まれ、一般の方が特定の活動プログラムに参加したり、美術館の豊富なコレクションから得られる素晴らしいリソースにアクセスすることができます。また、シャティヨン・アーキテクツによる新しい展示室もいくつか設けられており、その中にはこれまで一般の人が立ち入ることのできなかった地下室も含まれています。
強化されたシーノグラフィー
アジエンスNC(ナタリー・クリニエール)の展示デザイナーと空間デザイナーは、広い展示スペースと、先史時代から今日までのパリの歴史を物語る工芸品の年代順の展示と文脈の改善により、来館者の体験をさらに向上させました。美術館全体の改修・再開発と並行して、3,800点以上の工芸品が専門家の手によってかつての輝きを取り戻しました。また、このプロジェクトにより、これまで博物館のリザーブに保管されていた工芸品の60%が展示されることになりました。
訪問者の体験が向上したことで、カルナヴァレ美術館は、物理的にも知的にも誰もがアクセスできるようになり、パリ市民やフランス人、そして海外からの観光客にとって、さらに魅力的な場所になることでしょう。展示品に関する情報は複数の言語に翻訳され、美術や歴史に精通した愛好家から、美術館の豊かな世界を知り始めたばかりの好奇心旺盛な子供たちまで、あらゆるタイプの来館者に対応できるようになりました。


開発企画から竣工後の運営までを行う「株式会社キャンプサイト」の、建築設計実務経験者募集のお知らせです。詳しくは、ジョブボードの当該ページにてご確認ください。アーキテクチャーフォトジョブボードには、その他にも、色々な事務所の求人情報が掲載されています。
新規の求人の投稿はこちらからお気軽にお問い合わせください。
株式会社キャンプサイトは、プロジェクト規模とエリアの拡大にともない、一緒にプロジェクトに取り組む建築設計実務経験者を募集します!
キャンプサイトが扱うプロジェクトは、北は北海道から南は沖縄まで、ホテルやキャンプ場といった宿泊施設を中心にオフィスからコワーキングスペース、シェアハウス、マンションなどが中心となっています。
◆キャンプサイトの特徴
1)企画から設計、運営、ブランディングまで一気通貫で提案できるチーム体制
設計事務所は通常、設計者を中心とした組織体制となりますが、キャンプサイトは設計経験者に加え、不動産開発から不動産施設運営まで、多様なバックグラウンドをもったメンバーによって構成されています。そのため、開発企画段階から竣工後の運営まで、長期にわたりプロジェクトに関わるケースが多くあります。これは、自社でホテル、キャンプ場、コワーキング施設を運営しているため、企画段階から竣工後の運営までを見据えた設計提案が可能となります。例えば、標高1,250mの八ヶ岳山麓に位置するHYTTER LODGE & CABINSは温泉旅館とキャンプ場の再生プロジェクトです。キャンプサイトが事業主体となり、企画、開発、ブランディング、運営を行っています。自然の入り口として、アクティビティーやサービスを提供しながら、自分たちにとっても仕事や暮らし、遊びの拠点として、利用しています。そしてこの場を通しての出会いやコラボレーションがまた次のプロジェクトにつながっていっています。
https://hytter.jp/2)既存建物の再生活用を得意とし、許認可からデザインまで対応
特に設計チームとしては、既存建物の再生を得意としています。既存建物の再生は特にデザイン性だけではなく予算、スケジュール、法規や設備面でのハードルが高い場合が多いため、こうした面でキャンプサイトの設計の強みが生かされます。特に社会的な流れとして公共建物の再生活用案件が増えており、これが次の特徴にもつながっていきます。3)地域に根ざしたPPPプロジェクト
キャンプサイトは、公共施設の利活用やPPP連携のプロジェクトにも積極的に取り組んでいます。HYTTERと同じく八ヶ岳の麓に広がる茅野市に位置するコワーキングスペース「ワークラボ八ヶ岳」は、茅野市が設置したコワーキングです。市が所有する駅ビル区画の一角をコワーキングとして公募され、キャンプサイトを含むコンソーシアムが当選し、現在は指定管理者として運営しています。
https://wly.jp/

住宅作家としても著名な泉幸甫が校長を務める、実務者を対象とした、実際に建てるための知識を学び、自分らしく生きる道を見つける場「家づくり学校」が第13期の受講生を募集しています。主催は「NPO法人家づくりの会」です。申込〆切:2021年8月6日(金)。 応募者多数の場合は先着順との事。
また、2021年7月12日~18日に「家づくり学校展 & 入学相談会」が開催。2021年7月18日に「ZOOM座談会:在校生と卒業生のクロストーク」も企画されています(視聴希望はこちらから連絡)。【ap・ad】
住宅の設計は楽しいものです。しかし勉強しなければいけないことがたくさんあり、実際の仕事では苦労もあります。
大学で教わる内容も大切ですが、実際に住宅の設計をするとなると、今の時代に即した現実的で新しい知識も必要になります。また建築主や施工者とその付き合い方も簡単ではありません。
現実の仕事はどのように進めたらよいのか―NPO法人家づくりの会では、大学では教えてもらえない知識と能力について、これから住宅設計をやりたいと思っている人、設計事務所や工務店勤務の人、また設計事務所を立ち上げて間もない人たちを対象に、これらを伝えていこうと考えています。
家づくり学校のこのような取り組みは建築界でも注目され、2014年日本建築学会教育賞を受賞しています。本当の意味での良質な住宅が少しでも多く生まれていくことが私たちの目的です。住宅設計に取り組む多くの皆さまのご参加をお待ちしております。
(校長|泉幸甫)

アーキテクチャーフォトで、先週(期間:2021/5/24-5/30)注目を集めたトピックスをまとめてご紹介します。リアルタイムでの一週間の集計は、トップページの「Weekly Top Topics」よりご覧いただけます。
- 隈研吾のデザイン監修による、チタンの表面に木の質感を表現した、ルーバー建材が発売へ
- 能作淳平建築設計事務所による、東京・日本橋の、既存倉庫を改修したオフィス「101 BASE」をレポート。建て込んだ中でのカーテンウォールが周辺環境を内部に取り込む
- 中西正佳によるラタンチェア「IDENTITY」と、その制作過程を綴ったエッセイ「畑違いの建築士が、インドネシア工場に乗り込み量産家具を実現するまで」
- へザウィック・スタジオがニューヨークに完成させた水上の公園「リトル・アイランド」。彫刻的なプランターが連なり緑豊かな場を形成する同施設を豊富な写真と図面等で紹介
- 光浦高史 / DABURA.mによる、大分・別府市の宿泊施設「GALLERIA MIDOBARU」。地形を出発点とし地域性と固有性を持つ建築を構想
- 建築家の永山祐子のウェブサイトがリニューアル。進行中のプロジェクトや近作等の写真が閲覧可能に
- 長坂常 / スキーマ建築計画による、韓国・済州島の、レンタルバイク兼バイクショップ「Portable」。“見えない開発”の中で完成した建築のひとつ
- 長坂常 / スキーマ建築計画による、韓国・済州島の、カフェ「creamm」。“見えない開発”の中で完成した建築のひとつ
- ザハ・ハディド・アーキテクツによる、モバイルスペース「Alis pod」。ヴェネチアビエンナーレ国際建築展で公開
- MVRDVによる、オランダ・アイントホーフェンの既存ショッピングモールの改修案「De Heuvel」。時代遅れとなった施設を改修しコロナ禍以降に求められる場へと転換する試み
- 青木淳に、建築を志した出来事・建築の面白さ・進行中のプロジェクト等について聞いている動画。自身の事務所で収録され作品の背景のエピソードも語られる
- 畑友洋建築設計事務所による、大阪の住宅「奥天神の家」の写真
- ODS / 鬼木孝一郎による、東京・足立区の店舗「SHIRO ルミネ北千住店」
- 堤由匡建築設計工作室による、神奈川・横浜市の店舗「晴れ着の丸昌 横浜店」
- ODS / 鬼木孝一郎による、東京・渋谷区の店舗「SHIRO 渋谷ヒカリエ店」
- 隈研吾の基本設計、竹中工務店・東急設計コンサルタントJVの実施設計による、東京・代官山の新商業施設。中庭を中心に、店舗・コワーキングオフィス・集合住宅が積層するプログラム
- 隈研吾の建築が6つある高知・梼原町に「隈研吾の小さなミュージアム」が設立。公式サイトではインタビュー動画なども閲覧可能
- 2021年のプリツカー賞をラカトン&ヴァッサルが受賞。主要作品の写真等を紹介
- 長坂常 / スキーマ建築計画による、韓国・済州島の、既存建物二棟を改修した宿泊・物販・飲食等の機能を持つ施設「D&DEPARTMENT JEJU by ARARIO」。“見えない開発”の中で完成した建築のひとつ
- 403architecture [dajiba]の橋本健史が、陶芸家・松永圭太とコラボする「松永圭太×橋本健史 展」が、岐阜・多治見市の、スペース大原で開催。共同制作の作品等が公開される
青木淳に、建築を志した出来事や建築の面白さ、進行中のプロジェクトについて、自身の事務所で聞いている動画です。青木が教鞭をとる東京芸術大学建築学科の企画で作られたものですが、そのPRに留まらない青木の率直な建築への思いを聞くことができます。
こちらはパート2の動画で進行中の模型や、最新作の「ルイ・ヴィトン 銀座並木通り店」のエピソード等も語られます。
出演 青木淳
映像撮影・編集 金巻勲
企画・進行 森純平、下里杏奈
協力 株式会社AS 笹田侑志、山田悠太朗

SHARE ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展日本館展示「ふるまいの連鎖:エレメントの軌跡」。門脇耕三のキュレーションで、長坂常・岩瀬諒子・木内俊克・砂山太一・元木大輔が、日本の木造住宅の材を再構築した作品を制作
- 日程
- 2021年5月22日(土)–11月21日(日)



第17回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展日本館展示「ふるまいの連鎖:エレメントの軌跡」の会場写真です。
門脇耕三のキュレーションで、長坂常・岩瀬諒子・木内俊克・砂山太一・元木大輔が、日本の木造住宅を解体しその材等を輸送したうえで再構築した作品を制作発表しています。参加デザイナーとして長嶋りかこ、リサーチャーとして青柳憲昌、樋渡彩、エディターとして飯尾次郎、アドバイザーとして太田佳代子らが関わっています(詳細な関係者クレジットは末尾に掲載します)。また、これらの作品に使用された資材も、会期終了後プロダクトや、オスロなどで新たなプロジェクトに再転用されることも決まっています。展覧会期は2021年5月22日~11月21日まで。
門脇耕三がキュレーターを務める第17回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展 日本館展示では、「ふるまいの連鎖:エレメントの軌跡」と題し、使われなくなった日本の木造住宅を古材へと解体してヴェネチアへ運び、現代のマテリアル(単管パイプ、ブルーシート、メッシュシートなど)を加えて新しい姿に再構築する様をご覧いただきます。
本展では、建築家ばかりではなく、職人や研究者などとも協働して、現場での即興的なクリエーションを交えながら展示を作り上げます。現代社会のとどまるところを知らない大量消費の問題は、大量のモノが安価に素早く輸送されること、つまり「移動」によって深刻化しています。
不要になった住宅をあえて「移動」させ、ヴェネチアという異なる文脈で展示することにより、ごく一般的な木造住宅の一部だった古材は、これまでとは全く異なる存在感を発揮します。消費のための「移動」から、再生のための「移動」へと視点を切り替える本展は、大量消費にまつわる問題や、建築の持続可能性、新しい建築のあり方に一つの深い示唆を投げかけます。




へザウィック・スタジオがアメリカ・ニューヨークに完成させた水上の公園「リトル・アイランド」。彫刻的なプランターが連なり緑豊かな場を形成する同施設を豊富な写真で紹介します。
こちらはリリーステキストの翻訳です。
リトル・アイランドは、ハドソン川にある3つの新しいパフォーマンス会場を収容する新しい公共公園です。マンハッタンのローワー・ウエストサイドから桟橋を渡ってすぐの場所にあり、彫刻的なプランターで水面を覆った緑のオアシスです。
ヘザウィック・スタジオは、慈善家のバリー・ディラー氏とハドソン・リバー・パーク・トラストに招かれ、マンハッタン南西部に建設される新しい桟橋としてのパヴィリオンを制作しました。デザインチームは、ハドソン・リバー・パークに設置される装飾品をデザインするのではなく、桟橋のあり方を再考する機会を得ました。アメリカで最も人口密度の高い都市の中にいることを忘れさせてくれるセントラルパークにヒントを得て、水上にいることの興奮、都市を離れて緑の中に身を置く感覚など、構造物ではなく、訪れる人の体験を出発点としました。
桟橋は伝統的に船が停泊できるように平らになっていましたが、そうする必要があったのでしょうか?平坦なマンハッタンの街並みとは対照的に、デザインチームは、さまざまな空間を形成するために立ち上がるような、新しい地形を作りたいと考えました。最初の案は、水面に浮かぶカールした葉っぱの形で、葉脈の端が肋骨のように立ち上がり、風から空間を守るというものでした。公園の基礎を高くするというアイデアは、マンハッタンの海岸線から伸びていた多くの桟橋の名残である水中にある木製の杭から生まれました。木の先端が見えている下では、杭は海洋生物の重要な生息地となっており、魚の繁殖地として保護されています。
ヘザーウィック・スタジオは、桟橋をひとつの完成した体験としてとらえました。無関係な要素をくっつけるのではなく、ひとつのまとまりのある物体として。デッキを支える棒の代わりに、杭がデッキになります。杭はプランターに伸び、それらが一体となって公園の表面を作ります。杭の高さを変えることで、公園の輪郭を形成しています。桟橋の角は、海洋生物の生息地に太陽の光が届くように持ち上げられ、端は、丘や展望台、パフォーマンスのための自然の円形劇場を切り取るように落ちています。このようにして、桟橋とそれを支える構造物は一体となっています。
プランター(ポット)には、生物多様性を促進し、ニューヨークの気候に適した100種類以上の土着の木や植物が植えられています。ポットの形を決めるにあたり、デザインチームは自然に注目しました。川が凍ったときに木の杭の周りにできるモザイク状の氷です。川が凍ったときに木の杭の周りにできる氷のモザイクを、有機的に見えるテッセレーションパターンに再解釈しましたが、加工のために標準化できる要素を繰り返し使っています。最も目につきやすい外周部では、ポットの角度や繰り返し方を変えるように配慮しました。構造用コンクリートに滑らかで手触りの良い質感を与えるため、ヘザーウィック・スタジオは地元のファブリケーターと緊密に協力しました。プレキャストの部材は船で運び、現場で組み立てることで、街への影響を最小限に抑えました。
こちらはへザウィック・スタジオを主宰するトーマス・へザウィックのコメントの翻訳です。
このプロジェクトは、ハドソンリバーパークのプロムナードを新たに拡大したデザインに、彫刻のような構造物を考えてほしいという依頼を受けたことから始まりました。このプロジェクトは興味深いものでしたが、私たちはニューヨーカーにとってより魅力的な体験を創造し、刺激的な公共空間を発明してきたこの街に新しい伝統を築くチャンスだと考えました。その代わりに、私たちは全く新しいタイプの桟橋を作ることを思いつきました。それは、ニューヨークのストリートグリッドに沿った緑豊かな長方形のガーデンアイランドであり、ゆったりとしたもので、土地とつながっています。
この新しいパブリックスペースは、様々なアクティビティやパフォーマンスのための複数のスペースを作るだけでなく、水を利用することで、来訪者が都会の慌ただしさから解放されたと感じられるような、より意味のある境界線を作ることができます。
一般的に桟橋の構造は常に平らです。しかし、表面を持ち上げて地形を作ることで、来訪者がよりダイナミックな社会的体験をすることができ、パフォーマンススペースや、川や街を見下ろす展望台の見通しが良くするための、見逃すことはできないチャンスだと私たちは考えました。また、一般的に桟橋は、川底に沈む構造杭とそれを覆うスラブで構成され、表面を形成します。しかし、私たちはこの杭と、川の過酷な状況に耐えうる構造物を作るために必要な土木技術にインスピレーションを受けました。そして、これらを隠すのではなく、プロジェクトのヒーローにできないだろうか?と。
私たちが構築したヴィジョンは、これらの杭を利用して、その上部をドラマチックなプランターに変え、それらが融合して豊かな植栽のあるランドスケープを作ることにあります。
私たちが意図したのは、誰もが自由に訪れることができ、川を自然の一部として扱い、植物やお互いを受け入れることができる刺激的な空間を作ることでした。


ODS / 鬼木孝一郎が設計した、東京・渋谷区の店舗「SHIRO 渋谷ヒカリエ店」です。店舗の公式サイトはこちら。
ブランドの発祥地である北海道のナラ材を使用した店舗
コスメブランド「SHIRO」の渋谷ヒカリエ店のショップデザイン。
1階メインエントランスの横に位置し、多くの人が行き交う場所となっている。自然の素材にこだわったコスメ、ライフスタイル製品、フレグランスの販売と共に、コスメにも使っている生姜やルバーブなどを使用したオリジナルドリンクを提供する「SHIRO CAFE」を併設した店舗を計画した。
床の乱形石張りや上部の緑の装飾など、施設の共通仕上げが区画内に入り込んでいるため、ショップで使用する素材はなるべくシンプルなものを選択し、対比的に浮き立って見えるようなデザインを目指した。
メインエントランス側の物販用カウンター、奥のカフェカウンターは自然素材をベースとした白い左官材で仕上げ、中央にSHIROの発祥の地である北海道のナラ材を使用した什器を設置。
SHIROのものづくりへの想いと、ブランドの背景を空間デザインによって表現した。



ザハ・ハディド・アーキテクツが設計した、モバイルスペース「Alis pod」です。ヴェネチアビエンナーレ国際建築展のイタリア館入り口で公開されています。
ここちは、アレッサンドロ・メリス(Alessandro Melis)がキュレーションした2021年のヴェネツィア・ビエンナーレのイタリア館のテーマ「Resilient Communities」に呼応するように考えられたザハ・ハディド・アーキテクツによるインスタレーション「High-performing Urban Ecologies」の一部です。またインスタレーションには中国・成都で進められている都市開発プロジェクト「ユニコーン・アイランド・マスタープラン」の計画案も紹介されており、こちらも併せて紹介します。
こちらは建築家による「Alis pod」についてのテキストの翻訳です
現代のミーティングエリアに求められる新たな要求に応えるため、「Alis」は柔軟性と快適性、そして高度な情報技術を統合した空間の中で、コラボレーションと協力を促進するようデザインされています。
会議や交流のためのモバイルスペースである「Alis」は、屋内外、オフィスや商業スペース、駅や空港などの市民や共同体など、さまざまな環境に設置することができます。「Alis」は、ユーザーの要求に応じて完全にカスタマイズできる即席のミーティングルームを実現します。
革新的な設計技術と最大限の接続性、精密な製造技術を組み合わせたこのデザインは、蘭の花びらをイメージしており、ポッドを包み込み、プライバシーとシェルターを提供し、最適な視界を確保します。
設計はザハ・ハディド・アーキテクツ、施工はテクノが担当し、3DプリントやCAD/CAMツールなどのデジタル製造技術を駆使して最高水準の製品を実現しています。
モジュラーデザインにより、ポッドは容易に分解、運搬、再利用が可能であり、様々な機能のために異なる構成で再利用することができます。
ポッドの各要素は、循環型のデザインサイクルに組み込まれており、長寿命の耐久性と、リサイクルや再利用が可能な部品による最小限の廃棄物を実現しています。
特注のパネルシステムから、自然にインスパイアされたまとまったデザインの中に、ほとんどの電子機器や機械設備を目立たないように隠している床や天井まで、「Alis」は未来のコラボレーションを象徴しています。



堤由匡建築設計工作室が設計した、神奈川・横浜市の店舗「晴れ着の丸昌 横浜店」です。店舗の公式サイトはこちら。
人生の重要な節目で身にまとう晴れ着。
晴れ着の丸昌横浜店は、晴れ着を通して日本の伝統文化を後世に伝えるという使命を抱いた老舗の貸衣装店である。今回は主に列席衣装フロアをリニューアルした。式場提携店での衣装レンタルに押されがちな昨今、豊富な種類の衣装を手頃な価格で提供できるということを、空間デザインを以って広く周知させるというクライアントの強い思いがあり、またコロナの影響で「ハレの場」が萎縮することへの危機感からも、一生に一度の衣装を選ぶ場所にふさわしい格式と印象が求められた。
豊富な種類を誇るだけに展示する和服は多く、什器はシンプルに認識しやすく配置し、また圧迫感を極力減らすために什器の高さは最小限の1.8mに抑えている。メインの商品である留袖がブラケットに遮られることなく美しく連続的にディスプレイできるように、ハンガーパイプを背板ではなく底板から立ち上げた。
特筆すべき天井は、既存の天高に限りがあるゆえのアイデアだった。RC構造の梁を避けつつ、薄い木の板をわずかに高さを変えながら貼り、底目地を切ることであたかも重なっているように見せる。このアイデアは和服の襲(かさね)からヒントを得ている。



MVRDVが計画している、オランダ・アイントホーフェンの既存ショッピングモールの改修案「De Heuvel」です。時代遅れとなった施設を改修しコロナ禍以降に求められる場へと転換する試みが考案されています。プロジェクトの提案段階で市長や市議会に提案がされました。
以下はリリーステキストの翻訳です
MVRDVが、アイントホーフェンのショッピングセンターを「ミュージック・マウンテン」と屋上公園を備えた持続可能な文化地区に転換
MVRDVは、アイントホーフェンのショッピングセンター「Heuvel」を、環境に配慮した文化的な街へと根本的に変える提案を行いました。屋上には、公園だけでなく、「ガラスの山」の下に文化的な建物を積み重ねるというデザインです。この戦略的ビジョンは2021年5月18日に発表され、アイントホーフェン市長と市会議員から熱烈な支持を受け、年内に予定されているフリッツ・フィリプス音楽堂(Muziekgebouw)のフィジビリティスタディ(※実行可能性の研究)への道が開かれました。
このプロジェクトは、CBREグローバルインベスターズ、アイントホーフェン市、北ブラバント州、フリッツ・フィリプス音楽堂、VNO-NCWの間で2020年に合意されたもので、時代遅れのHeuvelショッピングセンターと、既存のショッピングセンター内にある音楽施設フリッツ・フィリプス音楽堂の持続可能なソリューションを開発することを目的としています。
MVRDVのビジョンでは、Heuvelは、ショッピング、文化、レクリエーションが同じ場所で行われる都市部へと変化します。既存の建物は拡張されて開放され、アイントホーフェン市内の周辺の公共スペースや文化的な建物とのつながりが強まります。ショッピングセンターの屋根付き通路はオープンストリートに置き換えられ、この地区を街の生活の一部として積極的に活用できるようになります。また、屋根はアクセス可能な緑の公園となり、この地区の魅力を高めます。
既存のフリッツ・フィリプス音楽堂の上には、「ガラスの山」の下に文化的な建物が積み重ねられます。来場者が登って街の美しい景色を眺めることができるこの山は、Heuvelの人目を引くランドマークとなり、アイントホーフェン中心部の高密度化と緑化に重要な貢献をします。また、フリッツ・フィリプス音楽堂に新たなスペースを設けることで、より幅広いプログラムに対応できるようになりました。その目的は、フリッツ・フィリプス音楽堂を街のリビングルームにすることです。日中、アイントホーフェンの住民は、仕事やリラックスのために建物のホワイエに滞在することができます。このような新しい機能の組み合わせと、より幅広いプログラムの提供により、「Het Heuvelkwartier & De Muziekberg」(「The Hill Quarter & The Music Mountain」、この提案はすでに命名されています)は、より多くのアイントホーフェン市民を魅了するでしょう。
MVRDVの設立パートナーであるヴィニー・マースは言います。
「文化は都市を魅力的にするものであり、アイントホーフェンのように急速に成長している都市には、より目につきやすい中心的な音楽会場が必要です」
「私たちのビジョンは、オープンでアクセスしやすいショッピング、住居、そして文化的な地区です。既存の建物を根本的に開放し、7つの新しい街区に変え、屋根から上に向かって拡張することで、これを実現します。私たちの目標は、ショッピングや外出を楽しみたいアイントホーフェンのすべての人々にとって、この複合施設を再び魅力的なものにすると同時に、都心部との交流を確保することです。私たちのヴィジョンでは、このエリアはまったく異なる魅力を持つようになるでしょう」。
世界のショッピングセンターは、オンラインショッピングの台頭により、特にコロナウイルスの流行が始まって以来、来場者の減少に悩まされています。MVRDVは、ロンドンのオックスフォード・ストリートに観光客を呼び戻すことを目的とした一時的なインスタレーションである建設中の「Marble Arch Hill」や、半分取り壊されたショッピング・モールの土台を利用して2020年にオープンした緑のオアシスである台湾の「Tainan Spring」など、この変化に対応するプロジェクトを数多く手がけてきました。

建築家の永山祐子のウェブサイトがリニューアルされています。進行中のプロジェクトや近作等の写真が閲覧可能になっています。デザインと制作は鈴木力哉 / PLANPOT DESIGN WORKSが手掛けています。
永山祐子
YUKO NAGAYAMA一級建築士
1975 東京都生まれ
1998 昭和女子大学生活科学部生活環境学科 卒業
1998 青木淳建築計画事務所 入社
2002 青木淳建築計画事務所 退社
2002 永山祐子建築設計 設立



能作淳平建築設計事務所が設計した、東京・日本橋の、既存倉庫を改修したオフィス「101 BASE」をレポート。建て込んだ中でのカーテンウォールのデザインが事務所らしさを生み出すと共に周辺環境を内部に取り込む建築となっています。
こちらはアーキテクチャーフォトによるレポート
能作淳平が改修を手掛けた中央区の路地裏に位置する倉庫を改修したオフィス「101BASE」を訪問した。
広告に関わる企業の新しいワークスペースになるのだという。計画はこのコロナ禍の中進行された。既にクライアント企業ではテレワークでの勤務が定着しており、今まで使用していたオフィススペースの使用を取りやめ、この「101 BASE」に機能を集約することが前提で計画がすすめられた。コロナ禍以降のオフィス空間なのでである。
換気等の機能面は勿論だが、出社必要時にこのオフィスを訪問し社員の皆さんが如何に仕事に集中できるかという事が考えられている。コンパクトなフロアが3層重なった建築であり、オフィスの1階は、風通しの良い、ラウンジスペース。2階には、円形テーブルが特徴的なオフィス。3階は打ち合わせや会議などに使用できるホール空間となっている。日本橋という場所柄、1階のラウンジスペースは、将来的にカフェ等の用途としても貸し出せるようにキッチン等が配置されていたりもする。
建物の存在する環境に目を向けると、計画建物の周りにはビルが立ち並び、かなり立て込んでいることが分かる。その場所に、能作は敢えて、既存建物の壁を取り払いカーテンウォールを新設した。それはオフィスらしさをこの建物に持ち込むと共に、内部から見ると、目の前の建物の壁や配管が室内に取り込まれ、偶然が生み出した壁紙のように見える。建具枠が絵画における額縁のように機能し目の前の風景を切り取り室内に持ち込んでいる。
このような景色を取り込むことに賛否はあると思えるが、内部に佇みその景色と静かな光の変化を見ていると、そこには間違いなく豊かさや良さがある事を感じた。ビルの隙間からチラチラ見える通りを歩く人影も、フレームワークされて動く絵画の一部のように見えてしまう。
このカーテンウォールは、この固有の立て込んだ環境下で、一般的なそれとは、また違った機能や意味を持ち得ている感覚を覚えた。既存の形式を使用したとしても、それをどの環境に適応させるかで、その意味や効果が全く変わることが建築の面白いところだと思う。そしてこの場所でカーテンウォールを提案した能作のアイデアと判断は特筆すべきものだろう。勿論この建物の機能がオフィスであると言うことも前提で、これが住宅だったらまた違った感想を持ったかもしれない。
内部のデザインに目を向けると、既存の建築をよく観察し、その天高に合わせて諸機能や家具類が丁寧にデザインされていることも印象的だ。加えて、新設する部分、残す部分、の判断が丁寧である事も感じられる。それによって、新旧の対比的ではない、新しさと古さが混在したような状態でデザインがフィニッシュされ、改修だからこその心地よさが確かにある。これは、能作による自邸改修から続くものだろうとも思える。
最後になるが、法規監修には、佐久間悠の建築再構企画が関わっている。築57年の建物の改修という事で法的な裏付けを持って進められたプロジェクトであることも記載しておきたい。



長坂常 / スキーマ建築計画が設計した、韓国・済州島の、カフェ「creamm」です。長坂が「見えない開発」と呼び進めている済州島塔洞での街全体の開発プロジェクトのひとつとして完成したものです(※「見えない開発」については下部のテキストを参照)。店舗の場所はこちら。
先にも述べたが、このタプトンという土地にきてARARIOが最初に手がけたのがこのARARIOミュージアムで、大通り沿いにあり、そして背も高く、さらに赤で塗られているのでこの場所のシンボルとして遠くから見てもこの町の場所がわかる存在となっている。ただ、我々が最初にこの地に訪れた時、この街を歩く人の少なさに不安を覚えたと同時に、このMUSEUMにも人が少なくそこを改善すべく、MUSEUM CAFEとして中からのつながりを作ると主にD&DEPARTMENT側にも開き街との関係も生み出した。