




内藤廣建築設計事務所が設計した、東京・世田谷区の「多摩美術大学 上野毛キャンパス新棟」です。
講義室・ギャラリー・講堂などを内包する施設の計画です。建築家は、“雨露を凌ぐ清朗な覆い”となる大屋根があり、“競い合い、絆を結ぶ”ための交流テラスを備えた建築を考案しました。また、講堂は目に止まるように“お椀を伏せた”様な形態としています。
内藤廣によるテキスト
設計に取り掛かった時に、青柳正規理事長からメモ書きをいただきました。
「雨露を凌ぎ、凍てることなく鉛筆が持て、熱中症の心配なく、友と師とふれ合い、競い合い、絆を結ぶことのできる 清朗な覆いさえあればいい」
これが設計に託された内容であり、この建物のコンセプトです。近年、建設費が高騰していますが、そんな中、質実剛健な建物を要望されたのだと思いました。
上野毛キャンパスの中心となる本部棟。仕上げは簡素ですが、その代わり教室などの天井を可能な限り高くとっています。こうすれば、将来の転用もやりやすいし、冷暖房としてもゆとりのある空間になります。「凍てることなく鉛筆が持て、熱中症の心配なく」おおらかな空間です。各階の周囲にはバルコニーを廻らせています。これは、内部空間にゆとりをもたらすとともに、緊急時の避難にも役立ちます。1階のギャラリーは天井を高く取り、さまざまな利用ができるようになっています。ここは表通りである環状8号線に向けて開かれており、いわば上野毛キャンパスのショーケースのような空間になります。
最上階の5階は、執行部と事務関係が入りますが、一番眺めの良い中庭を望める空間には学生サロン(交流テラス)を設けています。「友と師とがふれ合い、競い合い、絆を結ぶ」空間がここに出現します。
そしてこの上に、「雨露を凌ぐ清朗な覆い」である建物全体を覆う大屋根が掛かっています。本部棟の隣にある講堂。ここは大きな交差点の角に面しています。大通りの人や車から目に止まるような建物にしてほしい、これも理事長からの要望でした。お椀を伏せたような個性的な建物です。
この屋根の下、学生たちが集い、演劇や音楽などの催しができる空間です。ギャラリーが開放的なのとは対照的に、こちらは、守られ、包み込まれるような空間になっています。
本部棟と講堂は、多摩美術大学の未来に新しい刻印を刻む建物になると思っています。大学のモットーである「自由と意力」の旗印のもと、ここが新たな教育と文化創造の拠点になることを期待しています。












