



武保学 / きりんが設計した、三重・伊賀市の「旧庁舎の土産物店 伊賀百貨」です。
坂倉準三が設計した建物を転用した施設内での計画です。建築家は、保護の為に接着と固定ができない与件に対し、店を彩る全要素を備えた“自立した架構”で作り上げる空間を考案しました。そして、近代と現代が“互いを尊重する場”が生まれています。店舗の場所はこちら。(Google Map)
建物自体の改修は高野洋平+森田祥子 / MARU。architectureが手掛けています。坂倉による旧庁舎の転用に関しては、アーキテクチャーフォトでもニュースとして紹介しています。
1964年に三重県上野市(現伊賀市)に竣工した上野市庁舎(設計:坂倉準三)は、庁舎機能の移転を機に複合施設として保存活用されることとなった。
経済合理性によって近代建築が取り壊されていく時代に、手間ひまを掛けて建物を残すことは稀有なことである。市民を主体とした長年の活動が建物保存の方針に道筋をつけたことを、この地域に住む者として誇らしく思う。2025年夏、図書館エリアに先がけてホテル・カフェ・物販エリアがオープンした。
本計画はこの物販エリアの内装計画であり、伊賀の名産品、伝統工芸品、土産物などが一堂に会する空間が必要とされた。
計画にあたっては厳しい制約があった。
市の文化財に指定されている建物を保護するため、新しい計画物を既存建物に接着・固定しないように成り立たせることが求められた。しかし物販という用途上、商品を美しく見せるための照明や販促のためのサインなど、天井から吊る、壁に留めるなどのしつらえが必須であると思われた。そこで既存建物の中に自立した架構を新しく組むことを考えた。タペストリーや暖簾、スポットライトのレールなど、店舗空間を彩る全ての要素をこの架構に仕込んでいる。
架構は既存建物の雰囲気になじませるため存在感を抑えること、5.5mのスパンに耐えられる強度を持たせることを考慮して、60mm角のスギ材を基本として構成した。上下2本の横梁を垂直ブレースで引っ張り、短手方向のスパン中央に生じるたわみを低減している。
また長手方向については、既存建物のスチールサッシに合わせて支柱を立て、その間に什器の棚を挟み込むことによって、架構と家具が一体となって水平力に耐える構造体としている。
さらに既存建物のコンクリート梁を挟むように束を添わせ、束と梁で囲まれた部分に構造用合板の面材を仕込むフィーレンディール架構によって、長手方向の水平耐力を強化した。









