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2021.2.08Mon
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河部圭佑建築設計事務所による、いくつものゆるやかなアイデアを融合する方法論を試行した「名古屋みなとのアトリエ住居」 / 辻琢磨による本作品の論考「納まりの海に浮かべられた色彩と幾何学」
photo©きまたこはる

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リノベーション名古屋愛知辻琢磨住戸建材(内装・壁)建材(内装・照明)建材(内装・その他)建材(内装・水廻り)きまたこはる河部圭佑
河部圭佑建築設計事務所による、いくつものゆるやかなアイデアを融合する方法論を試行した「名古屋みなとのアトリエ住居」 / 辻琢磨による本作品の論考「納まりの海に浮かべられた色彩と幾何学」 photo©きまたこはる
河部圭佑建築設計事務所による、いくつものゆるやかなアイデアを融合する方法論を試行した「名古屋みなとのアトリエ住居」 / 辻琢磨による本作品の論考「納まりの海に浮かべられた色彩と幾何学」 photo©きまたこはる

河部圭佑建築設計事務所が設計した、愛知の、集合住宅の一住戸を改修した自邸兼設計事務所「名古屋みなとのアトリエ住居」です。河部はアトリエ・ワン出身の建築家。
また、本ページでは、河部による論考に加え、辻琢磨による本作品に関する論考「納まりの海に浮かべられた色彩と幾何学」も掲載します

辻琢磨による論考「納まりの海に浮かべられた色彩と幾何学」より

目を見張るのは納まりの種類の多さである。
納まり(ディテールとも呼ばれる)とは、一般的には建築部材であるモノとモノが出会うときのその出会い方についての建築用語であり、例えば「トメ」という納まりは合板同士が直角にぶつかった際に双方の木口を45度にテーパーをつけておくことで出隅の木口を視覚的に消す効果がある。また納まりは、建築家同士の、あるいは設計者と施工者との共有言語であり、同時に空間に施工された後にも使い手や空間に身体的な影響を及ぼすという意味で、建築の平面構成や構造、配置計画と同等か、時にそれ以上の価値を持つ。

例えば、カルロ=スカルパというヴェネツィア・北イタリアを中心として作品を残した建築家によるカステルヴェッキオ美術館は、手すりやドアノブ、扉のヒンジや噴水と側溝、什器の脚元まで凄まじい密度で設計されており、ひとたびそのディテールスケールの作品性に気がつくと、この建築の中に納まりという名の「作品」が数百-数千個あるのだという想像に至り、目眩を覚えるような建築空間の質を持っている。

河部圭佑による『名古屋みなとのアトリエ住居』を訪れた際も、その時と同じような感覚を少なからず覚えた。しかしスカルパの納まりは石とスティールを組み合わせ、圧倒的な職人技術に支えられた精巧なクオリティであるのに対して、この建築の納まりは基本的にDIYでもできる、小径の木材を転用した素人仕事を前提にした納まりの集積である。既存と新規の取り合い、異素材の取り合い、同素材の取り合い、家具から建築のスケールまで、わずか30㎡足らずの空間の中に、独自の納まりが数多収められている。

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河部圭佑建築設計事務所による、いくつものゆるやかなアイデアを融合する方法論を試行した「名古屋みなとのアトリエ住居」 / 辻琢磨による本作品の論考「納まりの海に浮かべられた色彩と幾何学」 photo©きまたこはる
河部圭佑建築設計事務所による、いくつものゆるやかなアイデアを融合する方法論を試行した「名古屋みなとのアトリエ住居」 / 辻琢磨による本作品の論考「納まりの海に浮かべられた色彩と幾何学」 photo©きまたこはる
河部圭佑建築設計事務所による、いくつものゆるやかなアイデアを融合する方法論を試行した「名古屋みなとのアトリエ住居」 / 辻琢磨による本作品の論考「納まりの海に浮かべられた色彩と幾何学」 photo©きまたこはる
河部圭佑建築設計事務所による、いくつものゆるやかなアイデアを融合する方法論を試行した「名古屋みなとのアトリエ住居」 / 辻琢磨による本作品の論考「納まりの海に浮かべられた色彩と幾何学」 photo©きまたこはる
河部圭佑建築設計事務所による、いくつものゆるやかなアイデアを融合する方法論を試行した「名古屋みなとのアトリエ住居」 / 辻琢磨による本作品の論考「納まりの海に浮かべられた色彩と幾何学」 photo©きまたこはる
河部圭佑建築設計事務所による、いくつものゆるやかなアイデアを融合する方法論を試行した「名古屋みなとのアトリエ住居」 / 辻琢磨による本作品の論考「納まりの海に浮かべられた色彩と幾何学」 photo©きまたこはる
河部圭佑建築設計事務所による、いくつものゆるやかなアイデアを融合する方法論を試行した「名古屋みなとのアトリエ住居」 / 辻琢磨による本作品の論考「納まりの海に浮かべられた色彩と幾何学」 photo©きまたこはる
河部圭佑建築設計事務所による、いくつものゆるやかなアイデアを融合する方法論を試行した「名古屋みなとのアトリエ住居」 / 辻琢磨による本作品の論考「納まりの海に浮かべられた色彩と幾何学」 photo©きまたこはる
河部圭佑建築設計事務所による、いくつものゆるやかなアイデアを融合する方法論を試行した「名古屋みなとのアトリエ住居」 / 辻琢磨による本作品の論考「納まりの海に浮かべられた色彩と幾何学」 photo©きまたこはる
河部圭佑建築設計事務所による、いくつものゆるやかなアイデアを融合する方法論を試行した「名古屋みなとのアトリエ住居」 / 辻琢磨による本作品の論考「納まりの海に浮かべられた色彩と幾何学」 photo©きまたこはる
河部圭佑建築設計事務所による、いくつものゆるやかなアイデアを融合する方法論を試行した「名古屋みなとのアトリエ住居」 / 辻琢磨による本作品の論考「納まりの海に浮かべられた色彩と幾何学」 photo©きまたこはる
河部圭佑建築設計事務所による、いくつものゆるやかなアイデアを融合する方法論を試行した「名古屋みなとのアトリエ住居」 / 辻琢磨による本作品の論考「納まりの海に浮かべられた色彩と幾何学」改修後 平面図。 image©河部圭佑建築設計事務所

 
河部圭佑による論考「いくつものゆるやかなアイデアを融合する」。

築45年鉄骨造4階建の集合住宅の改修である。名古屋市港区には名古屋港を拠点とする産業が広がり、この建物もいわゆる住工混在地域に立地する。

住民の高齢化が進むこの集合住宅に生じた空室を、新しい世代のライフスタイルが可能な空間に変えていくことが求められ、働きながら暮らすことのできる空間=アトリエ住居を提案した。この202号室は自邸兼設計事務所である。

ここでは、1つの明快なコンセプトを展開するように建築をつくる(ダイアグラム1)ことはしていない。

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河部圭佑建築設計事務所による、いくつものゆるやかなアイデアを融合する方法論を試行した「名古屋みなとのアトリエ住居」 / 辻琢磨による本作品の論考「納まりの海に浮かべられた色彩と幾何学」ダイアグラム1。 image©河部圭佑建築設計事務所

どちらかというと、いくつものゆるやかなアイデアを出発点に、それらを紡ぐようにして建築をつくる(ダイアグラム2)ことを試みている。

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河部圭佑建築設計事務所による、いくつものゆるやかなアイデアを融合する方法論を試行した「名古屋みなとのアトリエ住居」 / 辻琢磨による本作品の論考「納まりの海に浮かべられた色彩と幾何学」ダイアグラム2。 image©河部圭佑建築設計事務所

例えば、おおらかなワンルーム空間であることを強調するように4隅の柱型と梁型を青色に塗装しているが、そこで青色を選択する1つの明快なコンセプトはない。さまざまな文脈や記憶の断片の集合体として青色が選択されている。

港の海があり、濃尾平野に位置するこの敷地や周囲からは空が広やかに見える。工場の散在するこの町は基本的にグレーで、相対的に道路標識の青色が色彩として浮かび上がる。名古屋を本拠地とする中日ドラゴンズのチームカラー。隣接する小学校のプールの柵は青く塗装され、古い木造賃貸アパートの屋根には青い日本瓦がのっている。

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河部圭佑建築設計事務所による、いくつものゆるやかなアイデアを融合する方法論を試行した「名古屋みなとのアトリエ住居」 / 辻琢磨による本作品の論考「納まりの海に浮かべられた色彩と幾何学」扉を開けると木賃アパートの青い日本瓦屋根が見える。 photo©河部圭佑建築設計事務所

この町を歩いていると、ガルバリウム鋼板の外壁やトタン波板の庇など住工混在地域特有の素材感が感じられる。むき出しの金属配管を纏う工場の前には旋盤加工で生じたアルミのくずが積まれ、町全体として即物的でワイルドな印象を受ける。

このような地域的文脈から素材とディテールの検討を行なった。アルミ複合板の壁と床、ステンレス板の垂れ壁、金属蒸着のカーテン、鉄工職人が製作した家具。町の体験と建築の体験とが連続することを目指している。

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河部圭佑建築設計事務所による、いくつものゆるやかなアイデアを融合する方法論を試行した「名古屋みなとのアトリエ住居」 / 辻琢磨による本作品の論考「納まりの海に浮かべられた色彩と幾何学」近隣の町工場。 photo©河部圭佑建築設計事務所
河部圭佑建築設計事務所による、いくつものゆるやかなアイデアを融合する方法論を試行した「名古屋みなとのアトリエ住居」 / 辻琢磨による本作品の論考「納まりの海に浮かべられた色彩と幾何学」地域的文脈に連続する素材感とディテール。 photo©きまたこはる
河部圭佑建築設計事務所による、いくつものゆるやかなアイデアを融合する方法論を試行した「名古屋みなとのアトリエ住居」 / 辻琢磨による本作品の論考「納まりの海に浮かべられた色彩と幾何学」金属蒸着のカーテンと鉄工職人が製作した家具。 photo©きまたこはる

時間的文脈からも建築を考えている。

改修前は木造のインフィルが挿入されていたが、それらを一度解体し建材を転用した。105mm角の柱材を20mm厚にスライスし、床に敷き詰めた。鴨居や柱をコンクリートブロックの上に渡しただけのベンチを設けた。アトリエに面する既存のモルタル壁を研磨しエポキシ樹脂を塗布した。打合せの際には壁一面にマーカーで書き込み、消すことができる。

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河部圭佑建築設計事務所による、いくつものゆるやかなアイデアを融合する方法論を試行した「名古屋みなとのアトリエ住居」 / 辻琢磨による本作品の論考「納まりの海に浮かべられた色彩と幾何学」解体された古い柱や鴨居。 photo©河部圭佑建築設計事務所
河部圭佑建築設計事務所による、いくつものゆるやかなアイデアを融合する方法論を試行した「名古屋みなとのアトリエ住居」 / 辻琢磨による本作品の論考「納まりの海に浮かべられた色彩と幾何学」古い柱材をスライスし敷き詰めた床。 photo©きまたこはる
河部圭佑建築設計事務所による、いくつものゆるやかなアイデアを融合する方法論を試行した「名古屋みなとのアトリエ住居」 / 辻琢磨による本作品の論考「納まりの海に浮かべられた色彩と幾何学」古い柱材をコンクリートブロックの上に渡しただけのベンチ。 photo©きまたこはる
河部圭佑建築設計事務所による、いくつものゆるやかなアイデアを融合する方法論を試行した「名古屋みなとのアトリエ住居」 / 辻琢磨による本作品の論考「納まりの海に浮かべられた色彩と幾何学」エポキシ樹脂を塗布したモルタル壁。 photo©きまたこはる
河部圭佑建築設計事務所による、いくつものゆるやかなアイデアを融合する方法論を試行した「名古屋みなとのアトリエ住居」 / 辻琢磨による本作品の論考「納まりの海に浮かべられた色彩と幾何学」既存の根太材を一部あらわし脱靴場としている。 photo©きまたこはる
河部圭佑建築設計事務所による、いくつものゆるやかなアイデアを融合する方法論を試行した「名古屋みなとのアトリエ住居」 / 辻琢磨による本作品の論考「納まりの海に浮かべられた色彩と幾何学」改修前 平面図。 image©河部圭佑建築設計事務所
河部圭佑建築設計事務所による、いくつものゆるやかなアイデアを融合する方法論を試行した「名古屋みなとのアトリエ住居」 / 辻琢磨による本作品の論考「納まりの海に浮かべられた色彩と幾何学」改修後 平面図。 image©河部圭佑建築設計事務所

地域的文脈や時間的文脈の他に、雑多な記憶の断片がこの建築のいくつものゆるやかなアイデアの要素となっている。

例えば、アトリエと寝室の間には丘のような壁を設けている。空間としてはつながっているので風や光は抜けるが、先が見えない。移動していくとだんだん奥が見えてくる。なだらかな地形を体験した記憶が、丘のような壁というアイデアにつながる。

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河部圭佑建築設計事務所による、いくつものゆるやかなアイデアを融合する方法論を試行した「名古屋みなとのアトリエ住居」 / 辻琢磨による本作品の論考「納まりの海に浮かべられた色彩と幾何学」2018年に訪れたイギリス・ウィットビーにある丘。 photo©河部圭佑建築設計事務所
河部圭佑建築設計事務所による、いくつものゆるやかなアイデアを融合する方法論を試行した「名古屋みなとのアトリエ住居」 / 辻琢磨による本作品の論考「納まりの海に浮かべられた色彩と幾何学」丘のような壁。 photo©きまたこはる
河部圭佑建築設計事務所による、いくつものゆるやかなアイデアを融合する方法論を試行した「名古屋みなとのアトリエ住居」 / 辻琢磨による本作品の論考「納まりの海に浮かべられた色彩と幾何学」ヴィム・ヴェンダース監督の映画のアスペクト比で壁面を白く塗装。 photo©きまたこはる

いくつものゆるやかなアイデアを融合するように建築をつくることに興味がある(ダイアグラム2)。

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河部圭佑建築設計事務所による、いくつものゆるやかなアイデアを融合する方法論を試行した「名古屋みなとのアトリエ住居」 / 辻琢磨による本作品の論考「納まりの海に浮かべられた色彩と幾何学」ダイアグラム2。 image©河部圭佑建築設計事務所

これはただ場当たり的に建築をつくるということではない。重要なのは、それぞれのアイデアが単独でバラバラにあるのではなく、アイデアどうしの関係性を慎重に見出し融合していくプロセスである(ダイアグラム3)。

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河部圭佑建築設計事務所による、いくつものゆるやかなアイデアを融合する方法論を試行した「名古屋みなとのアトリエ住居」 / 辻琢磨による本作品の論考「納まりの海に浮かべられた色彩と幾何学」ダイアグラム3。 image©河部圭佑建築設計事務所

今回示している方法論は無論発展途上のものであり、今後の設計活動の中でより精緻で深遠なものにしていきたいと思っている。

現段階の仮説として、いくつものゆるやかなアイデアは、

・抽象度/強度が近しく等価に扱えること
・数が多すぎても少なすぎてもその複数性を失うこと
・それぞれの関係性が重要であること
・発散していくのではなく収束させていくプロセスにあること
・秩序は後発的に生じうるということ

が大切に思える。

■建築概要

建物名:名古屋みなとのアトリエ住居
所在地:愛知県名古屋市港区
設計:河部圭佑建築設計事務所
施工:河部圭佑建築設計事務所+佐藤建設工業
構造:鉄骨造
階数:地上4階、塔屋
竣工:2020年6月
写真:きまたこはる

建材情報
種別使用箇所商品名(メーカー名)
内装・壁壁1

アルポリック(三菱ケミカル)

内装・壁壁2

DRY ERASE CLEAR(RUST-OLEUM)

内装・水廻り洗面

アンゴロフラット(サンワカンパニー)

内装・照明照明

エジソンバルブBeacon(Edison Bulb)

内装・その他見切り材

真鍮フラットバー(スリーナイン島野)

※企業様による建材情報についてのご意見や「PR」のご相談はこちらから
※この情報は弊サイトや設計者が建材の性能等を保証するものではありません


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河部圭佑建築設計事務所による、いくつものゆるやかなアイデアを融合する方法論を試行した「名古屋みなとのアトリエ住居」 / 辻琢磨による本作品の論考「納まりの海に浮かべられた色彩と幾何学」 photo©きまたこはる
河部圭佑建築設計事務所による、いくつものゆるやかなアイデアを融合する方法論を試行した「名古屋みなとのアトリエ住居」 / 辻琢磨による本作品の論考「納まりの海に浮かべられた色彩と幾何学」 photo©きまたこはる
河部圭佑建築設計事務所による、いくつものゆるやかなアイデアを融合する方法論を試行した「名古屋みなとのアトリエ住居」 / 辻琢磨による本作品の論考「納まりの海に浮かべられた色彩と幾何学」 photo©きまたこはる
河部圭佑建築設計事務所による、いくつものゆるやかなアイデアを融合する方法論を試行した「名古屋みなとのアトリエ住居」 / 辻琢磨による本作品の論考「納まりの海に浮かべられた色彩と幾何学」 photo©きまたこはる
河部圭佑建築設計事務所による、いくつものゆるやかなアイデアを融合する方法論を試行した「名古屋みなとのアトリエ住居」 / 辻琢磨による本作品の論考「納まりの海に浮かべられた色彩と幾何学」 photo©きまたこはる
河部圭佑建築設計事務所による、いくつものゆるやかなアイデアを融合する方法論を試行した「名古屋みなとのアトリエ住居」 / 辻琢磨による本作品の論考「納まりの海に浮かべられた色彩と幾何学」 photo©きまたこはる
河部圭佑建築設計事務所による、いくつものゆるやかなアイデアを融合する方法論を試行した「名古屋みなとのアトリエ住居」 / 辻琢磨による本作品の論考「納まりの海に浮かべられた色彩と幾何学」 photo©きまたこはる
河部圭佑建築設計事務所による、いくつものゆるやかなアイデアを融合する方法論を試行した「名古屋みなとのアトリエ住居」 / 辻琢磨による本作品の論考「納まりの海に浮かべられた色彩と幾何学」 photo©きまたこはる
河部圭佑建築設計事務所による、いくつものゆるやかなアイデアを融合する方法論を試行した「名古屋みなとのアトリエ住居」 / 辻琢磨による本作品の論考「納まりの海に浮かべられた色彩と幾何学」 photo©きまたこはる
河部圭佑建築設計事務所による、いくつものゆるやかなアイデアを融合する方法論を試行した「名古屋みなとのアトリエ住居」 / 辻琢磨による本作品の論考「納まりの海に浮かべられた色彩と幾何学」 photo©きまたこはる
河部圭佑建築設計事務所による、いくつものゆるやかなアイデアを融合する方法論を試行した「名古屋みなとのアトリエ住居」 / 辻琢磨による本作品の論考「納まりの海に浮かべられた色彩と幾何学」 photo©きまたこはる
河部圭佑建築設計事務所による、いくつものゆるやかなアイデアを融合する方法論を試行した「名古屋みなとのアトリエ住居」 / 辻琢磨による本作品の論考「納まりの海に浮かべられた色彩と幾何学」 photo©きまたこはる
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河部圭佑建築設計事務所による、いくつものゆるやかなアイデアを融合する方法論を試行した「名古屋みなとのアトリエ住居」 / 辻琢磨による本作品の論考「納まりの海に浮かべられた色彩と幾何学」 photo©きまたこはる
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河部圭佑建築設計事務所による、いくつものゆるやかなアイデアを融合する方法論を試行した「名古屋みなとのアトリエ住居」 / 辻琢磨による本作品の論考「納まりの海に浮かべられた色彩と幾何学」 photo©きまたこはる
河部圭佑建築設計事務所による、いくつものゆるやかなアイデアを融合する方法論を試行した「名古屋みなとのアトリエ住居」 / 辻琢磨による本作品の論考「納まりの海に浮かべられた色彩と幾何学」 photo©きまたこはる
河部圭佑建築設計事務所による、いくつものゆるやかなアイデアを融合する方法論を試行した「名古屋みなとのアトリエ住居」 / 辻琢磨による本作品の論考「納まりの海に浮かべられた色彩と幾何学」 photo©きまたこはる
河部圭佑建築設計事務所による、いくつものゆるやかなアイデアを融合する方法論を試行した「名古屋みなとのアトリエ住居」 / 辻琢磨による本作品の論考「納まりの海に浮かべられた色彩と幾何学」 photo©きまたこはる
河部圭佑建築設計事務所による、いくつものゆるやかなアイデアを融合する方法論を試行した「名古屋みなとのアトリエ住居」 / 辻琢磨による本作品の論考「納まりの海に浮かべられた色彩と幾何学」 photo©きまたこはる
河部圭佑建築設計事務所による、いくつものゆるやかなアイデアを融合する方法論を試行した「名古屋みなとのアトリエ住居」 / 辻琢磨による本作品の論考「納まりの海に浮かべられた色彩と幾何学」 photo©きまたこはる

 
辻琢磨による論考「納まりの海に浮かべられた色彩と幾何学」

目を見張るのは納まりの種類の多さである。
納まり(ディテールとも呼ばれる)とは、一般的には建築部材であるモノとモノが出会うときのその出会い方についての建築用語であり、例えば「トメ」という納まりは合板同士が直角にぶつかった際に双方の木口を45度にテーパーをつけておくことで出隅の木口を視覚的に消す効果がある。また納まりは、建築家同士の、あるいは設計者と施工者との共有言語であり、同時に空間に施工された後にも使い手や空間に身体的な影響を及ぼすという意味で、建築の平面構成や構造、配置計画と同等か、時にそれ以上の価値を持つ。

例えば、カルロ=スカルパというヴェネツィア・北イタリアを中心として作品を残した建築家によるカステルヴェッキオ美術館は、手すりやドアノブ、扉のヒンジや噴水と側溝、什器の脚元まで凄まじい密度で設計されており、ひとたびそのディテールスケールの作品性に気がつくと、この建築の中に納まりという名の「作品」が数百-数千個あるのだという想像に至り、目眩を覚えるような建築空間の質を持っている。

河部圭佑による『名古屋みなとのアトリエ住居』を訪れた際も、その時と同じような感覚を少なからず覚えた。しかしスカルパの納まりは石とスティールを組み合わせ、圧倒的な職人技術に支えられた精巧なクオリティであるのに対して、この建築の納まりは基本的にDIYでもできる、小径の木材を転用した素人仕事を前提にした納まりの集積である。既存と新規の取り合い、異素材の取り合い、同素材の取り合い、家具から建築のスケールまで、わずか30㎡足らずの空間の中に、独自の納まりが数多収められている。

既存の根太を途中まで残したエントランス、ジャン=プルーヴェの家具を彷彿とさせる先細りのテーブルの梁、15mm角の木材で組まれた水回り、円形平面のファブリックカーテンの吊元を兼ねた棚、既存枠に当てるだけで隙間を許容したトイレの扉、円を部分的に切り取った立面を胴縁で支える舞台装置のような間仕切り壁、既存の壁を撤去した際に生まれたギャップを解消する傾いた合板の埋め木とそこから飛び出し並んだストリップ劇場にあるようなレセップ。まるで、ディテールの海に浸るような体験は、私もまたDIYとホームセンターで買えるような素材で納まりを考えた経験に依るところもあるだろう。しかし、その個人の経験を差し引いても、もはやこの細部で埋め尽くされた海が図と地でいうところの地、つまり全体であるという宣言を感じるほどに、この建築の納まりは豊富である。

一方で、このディテールの海という「全体」に差し込まれた「部分」がある。平面と立面にそれぞれ現れる円という幾何学の一部と、この空間を形どるフレームの青色である。円を代表とする純粋幾何学は、近年では1980年代のポストモダン建築によく用いられ、古くはクロード=ニコラ=ルドゥー『耕作の番人のための家』やエティエンヌ=ルイ=ブーレー『ニュートン記念堂』といった18世紀末の建築家によるアンビルドのドローイングや、ルネサンス後期のアンドレア=パッラーディオの『ヴィラロトンダ』の平面、あるいはローマを2000年見守り続けるパンテオンの天井に現れるように、西欧由来の石の建築に秩序と完全性を与える際に度々用いられてきた、「建築」の代名詞である。幾何学の記号化が消費主義と遊戯性に結びついて華開いたポストモダン建築※1への反省もあり、21世紀の(特に日本の)建築シーンにおいては見かける機会が少なくなったこの全体性と普遍性の象徴を、河部はここに部分として挿入している。一方で、マンション改修の制限でもあるインテリアの境界としてのフレームは鮮やかな青で塗装され、河部にその意図を聞くと周囲の公園のフェンスや、幼いころから親しみのある中日ドラゴンズのチームカラー、海の近くであること、といった個人の記憶の断片が判断基準となってなんとなく青に塗ったという。※2

まとめてみよう。「部分」で満たされた納まりの海という「全体」に、「全体」の象徴である純粋幾何学の円の一部が「部分」として挿入され、且つ記憶の断片=「部分」を意味する青い塗装が施された「全体」を規定するフレームもまた「部分」(差し色)として挿入されている。いわゆる部分と全体の関係が二重も三重にも反転しているのだ。

このように部分と全体の絶え間ない反転によって、トポロジカルな関係としての意味の優劣が(脚注に示すように現代日本建築の空気感も含めて)宙吊りにされることで、この建築に満たされた一つ一つの納まりが潜在的に持っている意味へのより自由なアクセスが可能になり、時に体験する人の脳内の記憶に、時に敷地を超えて周囲の景色に、記号的なリンクが埋め込まれていく。このような納まりの背後に隠された膨大な記号のリンクが空間全体に張り巡らされていることによって、建築を実際に体験する以外の方法で、空間それ自体が「記号」を介して周囲の環境や体験者と相互に影響関係を持ち得るという意味において、この建築は正しく「ポストモダン建築」の再解釈を促すことになる。

ここで、河部も敬愛するポストモダンを代表するアメリカの建築家チャールズ・ムーアの言葉を借りたい。

タリスマンの存在について知ること、そして、それが今日なお脈々と生き続けている生命力を知ることは大切だと思うのである。それは、近代建築の巨匠たちが道半端にして倒れたのとは違う地点、つまり〈純粋な〉形態や、立方体や、シリンダーや、球などでつくられる世界とは違う見方を強調することになるだろう。

『SD1986年11月号 特集=チャールズ・ムーア:スイカの憶い出』 p8

ここで、「タリスマン」とはムーアの独特な意味づけがなされている言葉で、直訳すると”御守り”だが、ここでは建築部位に慣習的に込められてきた記号性(柱は男らしさのシンボルであるとか、4本柱のメガロンは裁きの場所の象徴であるとか、ペディメントは首長の威厳と結びつくといった意味で)というニュアンスで使われているのだが、要するにムーアは純粋形態では達成し得なかった生きた記号性に可能性を見出しているといえよう。

河部の取り組みのように、部分と全体の対立(意味の優劣の発生)をその度重なる反転によって宙吊りにした上で、「納まり」に内在された記号が様々なレヴェルで連鎖し、地域や体験者に溶け出していくようなアプローチは、ムーアのような生きた記号性の現代における実践と呼ぶこともできる。数々の建築雑誌の誌面の中に封印された40年前のポストモダン建築の取り組みを、今を生きる私たちが自分たちの価値観に引き寄せて再解釈することができれば、モダニズムから脈々と続く建築の歴史を実感を持って手繰り寄せることができるはずである。こうした歴史への実感こそが建築家に必要なのだ。

※1 本稿でポストモダン建築の現在における評価の正確な検証を行うには知識と紙幅があまりに足りない。ここでの描写は筆者がgoogleで「ポストモダン建築 記号」で検索して得た知識程度の一般論として記した。

※2 原色に近い塗装の仕上げも、幾何学同様に現代の日本の建築家はあまり使わない印象を受ける。特に近年の我が国の若手建築家の作品の改修を中心としたインテリアのプロジェクトを概観すると、基本的にはコンクリートやモルタルの素地、合板を含む木材の素地、鉄骨であれば溶融亜鉛メッキ、プラスターボードかクロスの白ないしグレーが多用され、色味としては白と薄い茶色、灰色でよく構成されている。この住宅もこの青い差し色を除けば同様であり、我々403architecture [dajiba]のプロジェクトを見ても概ねそうだ。しかし現在のヨーロッパの若手の改修の取り組みを見ると、例えばポルトガルのFala Atlierがつくる空間に度々現れるパステルカラーや、ベルギーのArchitecten De Vylder Vinck Taillieuの鮮やかな緑の梁や柱にみて取れるように、鮮やかな塗装色を差し色として使うことはさして珍しくない。『名古屋みなとのアトリエ住居』で「全体」として背景にあるのはリノベーション全盛の現代における日本の建築界の空気感であり、図として挿入されているのが古臭い幾何学と華美な装飾としての塗装という、我々日本人建築家が敬遠しがちな要素である、という意味にも読み取ることができる。それはそのまま、昨今の日本の建築界の空気感を、通時的にも(ポストモダン建築への接続)、共時的にも(西欧の建築・インテリアの潮流との比較)相対化する批評的な眼差しを私たちに与えてくれるだろう。

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    河部圭佑建築設計事務所による、愛知・大府市の改修「八寸勾配の見世」。運動の盛んなエリアに建つ飲食店とジム。地域性の象徴と装飾の可能性を求め、店の発信とは別の存在となる“走る人”を屋根面に描画。内外の意匠もイラストとの関係を際立たせる設計を意図
  • 2021.6.08Tue
    河部圭佑建築設計事務所による「くしゃくしゃ構造の『洞窟』」
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#辻琢磨の関連記事

  • 2024.6.24Mon
    辻琢磨建築企画事務所による「青と赤の流動」。“動き”を建築として捉える思考でつくられた作品。場所・時期・主催が異なる3つの展示を、既存の“青と赤に塗装された資材”を転用して構成。写真家の伊丹豪との協働で“動きとしての建築”の記録方法も模索
  • 2023.10.10Tue
    川勝真一のキュレーションで、日本建築学会が主催する建築展「繕いの営み / 営みの繕い」。補修や手入れ等の“つくろい”に建築的意味を見出す展示。アリソン理恵・伊藤孝仁・GROUP・木村俊介・辻琢磨・山本周+小林栄範・渡邉竜一が出展
  • 2023.2.20Mon
    辻琢磨による連載エッセイ “‘自邸’を動かす” 第1回「少しずつ建てる、広々と住まう、ゆっくり考える」
  • 2022.9.27Tue
    403architecture [dajiba]による、静岡・袋井市の「静岡理工科大学学生ホール」。ホールの改修と外部の東屋の新築。薄暗く閉塞感のある既存に対し、照明や給電等の機能を持つ24本の“柱”を林立させ問題解決し活動を促進する空間を構築。東屋では内部の視線も考慮し、周囲を映しこむ黒天井の円形屋根を考案
  • 2022.4.06Wed
    辻琢磨による連載エッセイ ”川の向こう側で建築を学ぶ日々” 第10回「川の向こう側から自分がいた場所を眺めて」
  • 2022.1.14Fri
    辻琢磨による連載エッセイ “川の向こう側で建築を学ぶ日々” 第9回「ボスが独りで下す決断の切れ味」
  • 2021.4.05Mon
    辻琢磨による連載エッセイ “川の向こう側で建築を学ぶ日々” 第8回「公共建築という学びのフィールド」
  • 2021.4.05Mon
    辻琢磨による連載エッセイ “川の向こう側で建築を学ぶ日々” 第7回「『札』を『入』れるという功罪 – 入札による公共建築の設計業務について」
  • 2020.12.25Fri
    /
    辻琢磨による論考「世界とは視点を変えてみれば一本の木の切断面にすぎない」
  • 2020.11.04Wed
    辻琢磨による連載エッセイ “川の向こう側で建築を学ぶ日々” 第6回「少しずつ自分を過小評価して仕事を取る建築家」
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    松島潤平建築設計事務所による、東京の、集合住宅の一住戸の内装デザイン「Float」
    photo©長谷川健太

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    architecture|feature
    東京リノベーション松島潤平長谷川健太住戸図面あり建材(内装・床)建材(内装・キッチン)建材(内装・その他)建材(内装・造作家具)イノウエインダストリィズリビタプラスホーム
    松島潤平建築設計事務所による、東京の、集合住宅の一住戸の内装デザイン「Float」 photo©長谷川健太
    松島潤平建築設計事務所による、東京の、集合住宅の一住戸の内装デザイン「Float」 photo©長谷川健太
    松島潤平建築設計事務所による、東京の、集合住宅の一住戸の内装デザイン「Float」 photo©長谷川健太

    松島潤平建築設計事務所が設計した、東京の、集合住宅の一住戸の内装デザイン「Float」です。

    緑豊かな都市公園を見下ろす、ヴィンテージ・マンション最上階の内装デザイン。

    ワンルームの中央に斜めに走る分厚いモルタル壁を挿入し、
    そのことによって生まれる奥行の差異で、
    さまざまな生活行為が連続しながらも自然と振り分けられる構成とした。

    建築家によるテキストより

    奇妙なプロポーションを持ち、金物が排された、建具には見えない吊戸が左右に浮遊することで、
    ニッチにぽつぽつと置かれた物たちが生活行為のなかでふと見え隠れする。

    建築家によるテキストより

    住まい手、生活行為、生活道具がそれぞれ距離を取り合いながら浮かび、
    部屋そのものも都市空間に浮かぶ、惑星系のような離散的なインテリアの創出を試みた。

    建築家によるテキストより
    • 残り21枚の写真と建築家によるテキスト
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    東京リノベーション松島潤平長谷川健太住戸図面あり建材(内装・床)建材(内装・キッチン)建材(内装・その他)建材(内装・造作家具)イノウエインダストリィズリビタプラスホーム
    2021.02.08 Mon 16:22
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    y+M design office・成安造形大学YOHAKUプロジェクトチーム・澤村による、滋賀・大津市の「成安造形大学アパートメント YOHAKU」
    photo©笹の倉舎/笹倉洋平

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    architecture|feature
    集合住宅笹倉洋平三宅正浩吉本英正図面あり建材(内装・床)建材(内装・壁)建材(内装・天井)建材(外装・屋根)建材(外装・壁)成安造形大学YOHAKUプロジェクトチーム澤村y+M design office
    y+M design office・成安造形大学YOHAKUプロジェクトチーム・澤村による、滋賀・大津市の「成安造形大学アパートメント YOHAKU」 photo©笹の倉舎/笹倉洋平
    y+M design office・成安造形大学YOHAKUプロジェクトチーム・澤村による、滋賀・大津市の「成安造形大学アパートメント YOHAKU」 photo©笹の倉舎/笹倉洋平
    y+M design office・成安造形大学YOHAKUプロジェクトチーム・澤村による、滋賀・大津市の「成安造形大学アパートメント YOHAKU」 photo©笹の倉舎/笹倉洋平

    y+M design office(基本デザイン・基本設計・実施設計)、成安造形大学YOHAKUプロジェクトチーム(基本デザイン)、澤村(実施設計)が設計した、滋賀・大津市の学生専用集合住宅「成安造形大学アパートメント YOHAKU」です。

    滋賀県大津市にある成安造形大学に近接した同大学の学生専用アパートメントである。

    冬期は比良山系の山々から琵琶湖に吹き下す冷たい風がふき、降雪もある厳しい気候である。
    住棟が平行配置になることで中庭が均質となることを避けるため、3棟の建物はN字型配置とし、そのことによって生まれたパースペクティブな2つの中庭はイベントスペースや駐輪場・駐車場となり、各住戸に季節によって様々な自然光や風を取り入れる装置となる。

    また各棟に距離を持たせることで住戸の防火戸がほぼ不要となっている。
    ファサードは構造用合板型枠を使用し、開口部の配置に角度を持たせることで施工中であるかのような雰囲気を残し、バファーゾーンを含め空間に余白を残し、学生たちの生活やアート作品などによってその余白を埋めてもらいたいという思いがある。

    建築家によるテキストより

    各住戸のプランニングは成安造形大学の学生を中心に行っている。

    まず全学生を対象としたアンケートを実施した。
    アンケート内容はキッチンの大きさやコンロの口数、浴槽の必要性や保有自転車の割合など多岐にわたり、その結果をもとに学生による15種類の設計案の模型展示を行い、投票形式のアンケートを実施した。さらにその結果からブラッシュアップした10案についてスケールアップした模型展示を行い、投票形式のアンケートを実施した。

    その上で各案の中から得票数、見積もり、施工性などから採用案を決定し、それらの案をもとに設計を進めた。

    建築家によるテキストより

    大学での制作などで遅くなった帰路に、友人の部屋で制作風景をのぞいたり、ライバルの部屋に明かりが灯っていることで、自分ももっと頑張ろうという気持ちになるという話も耳にしている。
    初めて親元を離れて一人暮らしをする学生にとって、アートやデザインを勉強する仲間がすぐそばにいることは、非常に心強く学生生活の励みになるだろう。
    あえて造られた余白に様々な思いが埋められることで、4年間という短い学生生活を刺激ある有意義なものにするための場になることを願っている。

    建築家によるテキストより
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    集合住宅笹倉洋平三宅正浩吉本英正図面あり建材(内装・床)建材(内装・壁)建材(内装・天井)建材(外装・屋根)建材(外装・壁)成安造形大学YOHAKUプロジェクトチーム澤村y+M design office
    2021.02.08 Mon 07:42
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    最も注目を集めたトピックス [期間:2021/2/1-2/7]

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    architecture|feature
    最も注目を集めたトピックス
    最も注目を集めたトピックス [期間:2021/2/1-2/7]

    アーキテクチャーフォトで、先週(期間:【集計期間】)注目を集めたトピックスをまとめてご紹介します。リアルタイムでの一週間の集計は、トップページの「Weekly Top Topics」よりご覧いただけます。


    1. 長沼和宏+澤田淳 / AIDAHOによる、埼玉・深谷市の住宅「FUKAYA house 02」
    2. 松葉邦彦 / TYRANTによる、埼玉・熊谷市の店舗「JINS 熊谷肥塚店」
    3. 中村拓志&NAP建築設計事務所による、京都の住宅「磐座の家」
    4. “建築と今” / no.0007「西澤徹夫」
    5. 西沢立衛による、東京・大田区の「森山邸」の一部を、時間貸しするサービスが開始。2005年竣工で分棟形式が特徴的な建築
    6. ザハ・ハディド・アーキテクツによる、中国・北京の、国際展示センター第二期工事設計コンペの勝利案。中国の伝統建築の筒状屋根から着想を得る
    7. 齋藤和哉建築設計事務所による、宮城・岩沼市の、神社に詣でる参拝者のための休憩所「金蛇水神社外苑 SandoTerrace」
    8. 山田誠一建築設計事務所による、静岡の住宅「沼津の家」
    9. ザハ・ハディド・アーキテクツによる、中国・珠海市の、芸術センター「Zhuhai Jinwan Civic Art Centre」の建設が進行中。計画案と現場の様子を紹介
    10. 山田誠一建築設計事務所による、静岡・島田市の住宅「金谷南町の家」
    11. 塩路優介 / シオジ事務所による、和歌山市の、戸建て住宅の改修「亀田さんの家」
    12. 日建設計がコンペで優勝した、ロシアの「リジスキー貨物ヤード跡地再開発プロジェクト」のコンセプト動画
    13. 石上純也建築設計事務所による「神奈川工科大学KAIT広場」の3DVR写真
    14. OMAがコンペで勝利した、中国・成都市の、未来科学技術都市のエリアマスタープランと建築デザイン。広大な敷地に自然形状に沿った建物等を設計
    15. COLORFULL YUJING DESIGNによる、中国・上海の書店「中版書房」
    16. 建築家の成瀬友梨と猪熊純が、エイブルリフォームの社外取締役に就任しています
    17. 妹島和世に、経産官僚の須賀千鶴が話を聞いているインタビュー『日本の「境界ない」建築が世界に求められる理由』
    18. 中山英之へのインタビューと、大学入学以前に再現したリートフェルトの椅子の写真
    19. COLORFULL YUJING DESIGNによる、中国・北京の、中国・北京の、既存商業ビルの低層部リノベーション「越都薈(Inspace)」
    20. 石上純也建築設計事務所による、神奈川・厚木市の「神奈川工科大学KAIT広場」

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    最も注目を集めたトピックス
    2021.02.08 Mon 07:36
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    【ap job更新】 大小様々で多種多様なジャンルの新築設計を行う「Field Design Architects」が、さらなる事務所規模拡大のため正社員(新卒者・既卒者と一般職)を募集中

    ap job 【ap job更新】 大小様々で多種多様なジャンルの新築設計を行う「Field Design Architects」が、さらなる事務所規模拡大のため正社員(新卒者・既卒者と一般職)を募集中

    architecture|job
    建築求人情報
    【ap job更新】 大小様々で多種多様なジャンルの新築設計を行う「Field Design Architects」が、さらなる事務所規模拡大のため正社員(新卒者・既卒者と一般職)を募集中
    【ap job更新】 大小様々で多種多様なジャンルの新築設計を行う「Field Design Architects」が、さらなる事務所規模拡大のため正社員(新卒者・既卒者と一般職)を募集中TSUJIDO STATION FRONT COMPEX(現在基本設計中案件。今年実施設計完了の予定)
    アーキテクチャーフォトジョブボードに新しい情報が追加されました
    job.architecturephoto.net

    大小様々で多種多様なジャンルの新築設計を行う「Field Design Architects」の、さらなる事務所規模拡大のため正社員(新卒者・既卒者と一般職)募集のお知らせです。詳しくは、ジョブボードの当該ページにてご確認ください。アーキテクチャーフォトジョブボードには、その他にも、色々な事務所の求人情報が掲載されています。
    新規の求人の投稿はこちらからお気軽にお問い合わせください。

    大小様々で多種多様なジャンルの新築設計を行うField Design Architects が

    【さらなる事務所規模拡大のため正社員(新卒者+既卒者と一般職)を募集いたします!】

    (※すみません。システムより連絡がありメールアドレスが不達だった方が多くいらっしゃる可能性があり、前回当方より反応がなかった方は再度応募してみてください。業務履歴などの添付メールは5MBまでとし、超える場合などデータ便や宅ファイル便利用も可能です。)

    4月卒業へ向けて新卒者+既卒者を採用いたします!!!

    また、一般職(事務職)を採用いたします!(残業なし。時間内で設計アシスタントなども行います。9:30~18:30定時あがり)

    保育園、事務所、銀行、店舗、カフェ、共同住宅、福祉施設、総合病院、大使館など他多種多様な建築意匠設計を行います。いずれもデザイン性を追求し、スタイルを持たずオンリーワンの建築を目指します。

    実務未経験の方も設計手法を体系的に教えますので、実務の習得能力が飛躍的に向上します。また、会社のスタッフ皆が自分の持っている知識を教えあう社風なので、短期間にスキルアップと自信が身に付き、仕事の幅が見違えて広がると思います。

    ある決まったデザインを押し通すのではなく、プロジェクトにとって何が最適なのか、何が合理的なのかという視点で、柔軟に考え方を変えていきます。それが現在的な建築だと思うからです。実施設計では構造・設備・現場・音響・防災・行政など様々なジャンルのエキスパートとディスカッションしながら、最適解かつ特殊解を導いていきます。

    ■
    また、多様なジャンルの案件をデザイン性の高い建築に昇華していくにはどうすればよいか、常に考えています。スタイルを持たずゼロから構築していくことで、一品ごとの作品に仕上げていきます。中規模の新築設計を中心として、建築賞を受賞できる建築からコスト重視の建築まで幅広く設計します。

    ■
    プロジェクト数は多く、各種メディア掲載の機会も多いです。協力し合いながら各人プロジェクトの主担当として仕事ができるのが強みです。昨今、大きな組織への帰属傾向が強くなっていますが、当社ではプロジェクトの主役として誇りを持って仕事ができ、確たる自信と多くの実績を造ることができます。プロジェクトをとことん追求していき、竣工時に自分が造った作品を実感できるはずです。

    job.architecturephoto.net
    • ap job
    建築求人情報
    2021.02.08 Mon 06:45
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    2021.2.07Sun
    • 中山英之へのインタビューと、大学入学以前に再現したリートフェルトの椅子の写真
    • 石上純也建築設計事務所による「神奈川工科大学KAIT広場」の3DVR写真
    2021.2.09Tue
    • 【ap job更新】 吉祥寺の一軒家を改修した事務所を拠点に、楽しく仕事に取り組む「佐久間徹設計事務所」が、2021年春の設計スタッフ(新卒・経験者)を募集中
    • 八島正年+八島夕子 / 八島建築設計事務所による、千葉・流山市の住宅「おおたかの森の家」
    • 【ap job更新】 株式会社 石嶋設計室が、設計スタッフ(経験者・新卒等)を募集中

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