葛島隆之建築設計事務所が設計した、三重・員弁郡の住宅「Rural House」です。また本作品の作品集が設計者により作成されKindleで公開されています。
この住宅の計画地は市街化調整区域で、遠くには鈴鹿山脈を望み、周辺には田畑が広がるのどかな場所である。前面道路は緩やかな坂道で、敷地内には鬱蒼としたエノキの群生の森がある。建主は、北隣に建つ母屋の1階にある歯科医院を経営しており、住宅を含めた敷地一帯の計画を望まれた。
平面はコートハウスの形式をとり、さまざまな向きに部屋を配置した。直行グリッドによる計画では、室内面積が確保しづらく、また基礎の掘削量が増え、変形敷地と勾配にうまく対応できない。そこで、グリッドではなく等高線を補助線とし、建築を折り曲げながら敷地に沿わせた。室内に現れる梁は、4つの中庭をそれぞれ中心として放射状にレイアウトし、それらを蛇行した道状のワンルームに沿って連続させた。
建主の所有地であるが、市街化調整区域であるため建築することのできない西側の敷地には、遊歩道を計画した。⾧い間放置されていたこの敷地は、建主家族や母屋に住む親世帯の広大な裏庭としてだけでなく、歯科医院に訪れる患者さんの庭園としても利用できるようになった。
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以下、建築家によるテキストです。
田舎の多様性と現代性
田舎という概念は、都市という概念ができてはじめて対比的に登場した。その境界は明確ではないが、田舎とは都市の外の広がり、と考えることができる。都市における敷地は制度や産業の原理によって構造化が試みられているが、田舎においてはそれらから外れた漠然とした場所が多くみられる。型式適合認定の住宅や建物の標準仕様といった考え方は、都市環境における構造化の一端といえると思う。田舎では都市の持つ強い構造性とはまったく別の、むしろ個別具体的な建築のあり方を模索することが自然に感じられる。
この住宅の計画地は市街化調整区域で、遠くには鈴鹿山脈を望み、周辺には田畑が広がるのどかな場所である。前面道路は緩やかな坂道で、敷地内には鬱蒼としたエノキの群生の森がある。建主は、北隣に建つ母屋の1階にある歯科医院を経営しており、住宅を含めた敷地一帯の計画を望まれた。
建物は、変形した敷地境界をほぼそのままのかたちで立ち上げた。塀や垣根は設けていない。計画地に1m以上の高低差があるが、造成せずそのまま室内にスロープとして取り込んだ。敷地境界に沿ってできた平面、高低差が現れた室内床、地面と平行に下る屋根。特徴的な環境を建築の個性として置き換えていく。
平面はコートハウスの形式をとり、さまざまな向きに部屋を配置した。直行グリッドによる計画では、室内面積が確保しづらく、また基礎の掘削量が増え、変形敷地と勾配にうまく対応できない。そこで、グリッドではなく等高線を補助線とし、建築を折り曲げながら敷地に沿わせた。室内に現れる梁は、4つの中庭をそれぞれ中心として放射状にレイアウトし、それらを蛇行した道状のワンルームに沿って連続させた。
建主の所有地であるが、市街化調整区域であるため建築することのできない西側の敷地には、遊歩道を計画した。⾧い間放置されていたこの敷地は、建主家族や母屋に住む親世帯の広大な裏庭としてだけでなく、歯科医院に訪れる患者さんの庭園としても利用できるようになった。
都市への過剰な密集を避け、住宅が郊外へ向かって分散していくであろう現在の状況において、田舎における建築創作の可能性を改めて認識している。それは、ウイルスに対して安全であるとか、テクノロジーによって働き方が変化している、といった話だけではない。都市の外にどこまでもある広がりの中にそれぞれの特別性を見出すことが、多様性を求める現代的な価値観の現われのように感じられるからである。
■建築概要
所在地:三重県員弁郡
敷地面積:248.61m2
延床面積:112.62m2
構造:木造在来工法・一部鉄骨造
階数:地上1F
最高高さ:3404mm
用途:専用住宅
設計監理:葛島隆之建築設計事務所 葛島隆之
構造設計:小松宏年構造設計事務所 小松宏年
施工:誠和建設
竣工:2020年4月
写真:葛島隆之建築設計事務所、金川晋吾
建材情報種別 | 使用箇所 | 商品名(メーカー名) | 外装・屋根 | 屋根 | シート防水+トップコートホワイト
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外装・壁 | 外壁 | ガルバリウム鋼板小波
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外装・建具 | 外部門扉 | スチールサッシ制作、ガラス:単板ガラスフィルム貼り
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内装・床 | 床1 | ラワン合板+オイルステイン
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内装・床 | 床2 | コンクリート金ゴテ仕上げ+撥水材
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内装・壁 | 壁1 | ラワン合板+オイルステイン
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内装・天井 | 天井 | ラワン合板+オイルステイン
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建築展「Under 35 Architects Exhibition 2020」出展時の様子
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Under 35 Architects Exhibition 2020
グランフロント大阪・うめきたシップホールにて行われた35歳以下の若手建築家による展覧会。4種類の模型・27枚の図版・動画を展示した。日によって来場者数が大きく違うので、展示経路を通過するだけでなんとなく概要がつかめる事と時間をかけると内容が深く理解できること、その両方ができるように考えた。
27枚の図版と1つの動画は、竣工写真・工事写真・ドローイング・スタディー模型・詳細図を織り交ぜ、テーマ(①配置②構造③空間構成④立面)がなめらかに連続するようレイアウトを検討した。
4つの模型は、上記の4つのテーマ別に縮尺と作り方を考えた。また、それぞれの模型に合わせて展示台の高さを変化させた。(敷地全体を眺めやすいよう低く設定したり、目線に近い位置でのぞき込めるようにしたり。)
それぞれの模型にはキャプションがついており、キャプション内には対応する図版番号が1~28までふられている為、本を読むように展示物(模型と図版)を読み進めることができればと考えた。