SHARE 佐々木達郎建築設計事務所による、千葉市の「House-HM」。料理を生業とする施主の為に計画された、生活に必要な当たり前の空間をもたず、外界から距離をとり内にひらかれた“探求する場所”としての建築
佐々木達郎建築設計事務所が設計した、千葉市の「House-HM」です。料理を生業とする施主の為に計画された、生活に必要な当たり前の空間をもたず、外界から距離をとり内にひらかれた“探求する場所”としての建築です。
この建物は、料理を生業とする施主が、料理に深く向き合い、知識を深め、考え、理解し、ふるまうためにつくられた空間である。
そのため、いわゆる生活の為に必要なお風呂や寝室といった住宅に当たり前のようにある空間はない。自己と向き合い料理を探求するためだけの、まさに「探求する場所」として計画されている。
そこで、閑静な住宅地である敷地に対し、外界から距離を取り、内に拓かれた空間を目指した。プライベートな中庭を設け、そこに向かうように、すり鉢状の木質屋根を計画した。
この建築の最大の特徴は、すり鉢状にかけられた木質屋根である。
中庭の形状がそのままオフセットしながら、広がっていくような梁の構造は、建物四隅の柱から吊られた片持ちの谷梁となっており、中庭の端部に柱のない構造形式となっている。そのため、中庭と内部空間が、ぐるりと繋がる連続的な回遊空間が実現している。
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以下、建築家によるテキストです。
探求する場所
この建物は、料理を生業とする施主が、料理に深く向き合い、知識を深め、考え、理解し、ふるまうためにつくられた空間である。そのため、いわゆる生活の為に必要なお風呂や寝室といった住宅に当たり前のようにある空間はない。自己と向き合い料理を探求するためだけの、まさに「探求する場所」として計画されている。
そこで、閑静な住宅地である敷地に対し、外界から距離を取り、内に拓かれた空間を目指した。プライベートな中庭を設け、そこに向かうように、すり鉢状の木質屋根を計画した。
内部には、料理と向き合い創作するためのキッチン、寛ぎ、知識を深めるためのラウンジ、来客を招き入れるためのエントランスを設けている。それぞれの空間に性質の違いをつくりながら、長辺方向に伸びる梁の連続により緩やかに繋がる伸びやかな空間となっている。
すり鉢状の木質屋根
この建築の最大の特徴は、すり鉢状にかけられた木質屋根である。
中庭の形状がそのままオフセットしながら、広がっていくような梁の構造は、建物四隅の柱から吊られた片持ちの谷梁となっており、中庭の端部に柱のない構造形式となっている。そのため、中庭と内部空間が、ぐるりと繋がる連続的な回遊空間が実現している。
また、長手に架けられた60×300mmの小梁は、小さな空間にいながら、どの空間にいても伸びやかな印象を作り出している。従来、隠蔽される構造材や野地板の合板が、丁寧に断面寸法、ピッチやリズムをコントロールする事で、空間の印象を左右する空間表現に変換する事が可能となっている。
新しい多拠点生活
新しいライフスタイルの選択肢として、多拠点生活という考え方が注目されている。
コロナ禍によりリモートワークが当たり前になった事から、都会を離れて自然のある環境で生活するスタイルや、逆に自然環境の中で仕事をし、便利な都会で日常生活を行うなど様々である。この昨今注目されている多拠点生活とは、移動距離と時間の関係をリモートにより再構築することが可能になった事が大きい。
ただし、多拠点生活を考えると、そもそも我々は、自分のもつ1日24時間、1年365日という可処分時間の中で様々な拠点を移動しながら多拠点生活をおくっている。多くの人の多拠点の作り方は、「住宅」と「仕事場」といった2拠点である。さらに、第3の拠点として、社会学者オルデンバーグが定義するサードプレイス、あるいは、経済的余裕のある富裕層は、週末や休暇のために利用する「別荘やホテル」、それが第3、第4の拠点ではないだろうか。
このプロジェクトを通して学んだのは、拠り所となる場所は、その人の大切にする価値観により、多様につくり出せるという事である。それは、朝ごはんを食べる為だけにつくられたキッチンでも良いし、夜の仕事終わりに、好きな音楽を聞く為だけの空間でも良い。
その場所のつくり方は、時間と距離の関係を再構築することにより無限となる。新しい多拠点は、住宅の中に設ける書斎やキッチン、寝室から解放され、多様化されていくべきである。また、それが人間の豊かさを取り戻すと共に、新しい住宅のつくり方に繋がるのではないだろうか。
■建築概要
物件名称:House-HM
用途:住宅
所在地:千葉県千葉市
設計監理:佐々木達郎建築設計事務所(佐々木達郎 吉原環*)*は元所員
構造設計:KAP
ランドスケープ:カナデ設計事務所
施工:巧匠建設株式会社
階数:地上1階
構造種別:木造
最高高さ:3841mm
最高軒高:3521mm
敷地面積:187.84㎡
建築面積:81.32㎡
延床面積:66.83㎡
竣工月日:2021年4月
写真:鳥村鋼一、須藤和也
種別 | 使用箇所 | 商品名(メーカー名) |
---|---|---|
外装・壁 | 外壁 | |
外装・屋根 | 屋根 | |
内装・床 | 玄関床 | |
内装・壁 | 玄関壁 | 骨材入りAEP塗装フィニッシュルーロ仕上げ(ドゥカーレ) |
内装・天井 | 玄関天井 | 野地板現し 化粧ばり構造用合板+オスモカラー[シダー] |
内装・建具 | 玄関建具 | 米松羽目板張りt12w90+オスモカラー |
内装・床 | リビングダイニング床 | |
内装・壁 | リビングダイニング壁 | 骨材入りAEP塗装フィニッシュルーロ仕上げ(ドゥカーレ) |
内装・天井 | リビングダイニング天井 | 野地板現し 化粧ばり構造用合板+オスモカラー[シダー] |
内装・家具 | ダイニングカウンター椅子 | |
内装・家具 | リビングソファ | |
内装・家具 | リビングオットマン | |
内装・床 | キッチン床 | |
内装・壁 | キッチン壁 | |
内装・天井 | キッチン天井 | 野地板現し 化粧ばり構造用合板+オスモカラー[シダー] |
内装・造作家具 | キッチンテーブル | 造作[タモ無垢材/W3600 D 1100](TIME&STYLE) |
内装・造作家具 | キッチン背面カウンター | 天板:コーリアンt12(デュポン) |
内装・照明 | キッチン横の照明 | |
内装・床 | 中庭床 | ノミ切り溝入り平板ブロック研磨仕上げ600*600*60 ダークグレー系 |
内装・建具 | 中庭建具 | 米松ガードラック |
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