以下、建築家によるテキストです。

　十勝平野の小高い丘に位置する十勝ヒルズは、広大な敷地に１０００種もの草花や樹木を魅せる観光庭園である。
　この計画は元々野菜を育てる温室として利用されていたその庭園内の建物の一つを改装し、庭園への入園口・土産店・カフェという３つの機能を併設させるというものだ。
　初めてこの施設を訪れた時、建物は既に土産店として使われていた。床はよく肥えた土に敷石が置かれていただけで、商品の片隅にひっそりと樹木が２本佇んでいた。
　現しの駆体はシンプルで美しかったが、数回の塗替えを繰り返し、カラフルな塗幕で厚化粧をしているように見えた。その色彩の多さに紛れ、販売される商品も、屋外に広がる美しい風景も、植物が育つ室内環境であるということも、活かされていないように感じた。　
　入園口・土産店・カフェという３つの機能を明確に分節すると室外の風景も駆体の美しさも分節されてしまう。だから土を残しそこに植物を植えてそれらの機能を緩やかに分節させることにした。
　そして残される土、家具や什器、厨房等、そこに置かれるべきものの在り方を検討した。
■ 建築概要
所在地：〒089-0574 北海道中川郡幕別町字日新13番地5　十勝ヒルズ内
竣工：2013年４月
面積：357.73m2
撮影：宮本誠也