SHARE 佐々木勝敏建築設計事務所による、愛知・豊田の工場「PHIARO Tokai Creative Center」
写真提供:佐々木勝敏建築設計事務所
佐々木勝敏建築設計事務所が設計した、愛知・豊田の工場「PHIARO Tokai Creative Center」です。
クライアントは国内外の自動車メーカーと提携し自動車デザインの研究開発をしている企業である。試作車を始め各種デザイン・製造開発にかかわっているため建物側には機密性が強く求められている。機密性のみを重視すると通例では建物は閉鎖的な環境になるが、周囲のランドスケープが美しく、また閉鎖的であることが働く人にとって最善であるとは考えづらいため、外部の自然環境と労働環境をつなげた工場建築を提案したいと考えた。
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以下、建築家によるテキストです。
クライアントは国内外の自動車メーカーと提携し自動車デザインの研究開発をしている企業である。試作車を始め各種デザイン・製造開発にかかわっているため建物側には機密性が強く求められている。機密性のみを重視すると通例では建物は閉鎖的な環境になるが、周囲のランドスケープが美しく、また閉鎖的であることが働く人にとって最善であるとは考えづらいため、外部の自然環境と労働環境をつなげた工場建築を提案したいと考えた。動線や操作性といった機能を優先しつつ、従業員の作業環境や休憩時間の過ごし方、来訪者との関わり方などそれぞれの建物利用者と自然環境を如何に繋ぐかを計画の方針とした。自動車デザインには完成車などメートル単位のスケールと、塗装・研磨作業のなどのミクロン単位のスケールが共存している。精密な作業から完成品の確認といった幅広いプロセスにあわせて各スペースの自然光と人工照明のバランスを変えている。また物/人/建築/自然といったそれぞれの関係を架構/開口/スケールによって繋ぎ、建物内に様々なシークエンスを提供している。建物の中心に位置する作業室からは安定した北側の採光と空の風景を望むことが出来、日中は工場でありながら照明を使用しなくても明るさが確保できている。試作車の計測や確認を行うスタジオでは機密性を保ちながら風景を投影する床を提案している。空のうつろいや周囲のランドスケープが投影されることで風景と時間が流れる作業空間となる。また関東から進出する企業と愛知という場所を何かの形で繋ぐことができないかと考え、ファサードには地場(豊田市)で採れた土を用いてオリジナルタイルを製作した。そこには地方で活動する設計者が活動拠点のみならず地場の素材を使いながら活動を展開していけばという思いも重なっている。
周囲の環境を取り込みながら、地場の素材を用いながら、というのは新しさではなくむしろ従来の建築手法である。日々情報が更新される社会の中で変わらないものは何であるのか、変わらないものの可能性を建築を通じて思考していきたいと考えている。
■建築概要
用途:工場
工事種別:新築
構造:鉄骨造2階建て
基礎:布基礎、地盤改良
敷地面積:9801.72㎡
建築面積:1978.88㎡
延床面積:2320.14㎡
建物高さ:11.0m
外壁仕上げ:製作タイル(豊田産)、金属サイディング
内部仕上げ
天井:化粧石膏ボード他
壁:ジョリパット、塗装仕上げ他
床:高反射塗り床、OAフロア、塩ビシート他
設計監理:佐々木勝敏建築設計事務所
構造設計:寺戸巽海構造計画工房
電気設計:株式会社小野電気
設備設計:籾山設備設計
撮影:佐々木勝敏建築設計事務所
竣工:2017年