SHARE 安藤忠雄の、中国で行われている二つの展覧会の会場動画。「水の教会」等が原寸大で再現される
安藤忠雄の、中国で行われている二つの展覧会の会場動画です。制作は中国の動画メディア一条。「水の教会」等が原寸大で再現されています。Fosun Art Center Shanghaiでの「Tadao Ando: Endeavors」展は2021年6月6日まで、He Art Museumでの「Beyond: Tadao Ando and Art」展は2021年8月1日まで解されています。
安藤忠雄の、中国で行われている二つの展覧会の会場動画です。制作は中国の動画メディア一条。「水の教会」等が原寸大で再現されています。Fosun Art Center Shanghaiでの「Tadao Ando: Endeavors」展は2021年6月6日まで、He Art Museumでの「Beyond: Tadao Ando and Art」展は2021年8月1日まで解されています。
妹島和世による、東京・銀座の、資生堂の店舗 SHISEIDO THE STOREでのウインドウディスプレイです。2021年9月14日まで展示されています。
妹島和世氏の建築は透明感にあふれ周囲の環境に応答している。
建築において、公園のような場所をつくりたいというのが、妹島氏が活動初期から一貫して持つ思いだといいます。公園には色々な目的の人がいて、その関係は柔らかく、皆がそれぞれ、違いを尊重しながら、一緒にそこにいる。
開かれた空間を共有して、それを自然に受け入れ感じるというもの。そういった妹島氏の特徴の一つである「開かれた建築」――プロダクトでも建築でも「絶対こう使いなさい、こう見なさい」というよりも、「こう使ってみても面白い」とか「こういう風にも見える」など、使う人見る人が自分なりに自由な関係性を楽しむことができるデザイン――を銀座の街の一角に展示することは、妹島氏の美意識とあいまって、見る人を明るい気持ちにさせてくれることでしょう。
フォルム・木村浩一建築研究所が設計した、滋賀・長浜市の住宅「FRAME HOUSE」です。
敷地は、のどかな田園風景が広がる集落の中にある。
敷地の前面は、桜並木と小川のある散策路に面し、後面では、田園風景の中を高速道路が走る。
そこで、このような環境から導かれる建築空間を通じて、風景との対話を生み出し、クライアントからの“豊かな生活を過ごせる家”という要望に応えた。外観は、プロポーション、窓の配置、素材を慎重に検討したボリュームで構成されている。外観を印象付けるキャンティレバーで跳ねだされたボリュームは、軒下空間としてエントランスへのアプローチなど様々な用途に有効利用される。
環境と共に暮らすためには、どのような風景を眺め、何をして過ごすかを明確にイメージすることが大切になる。
今まで当たり前のように見てきた風景は、環境を読み取り建築に取り入れることで新たな発見と豊かさを獲得することができるのである。
公共建築という学びのフィールド
7回目では、渡辺事務所が多く手掛ける公共建築の設計業務の受注の仕組みの一つである設計入札について、基礎的な知識も含めて可能な限りわかりやすく説明しようと試みた。今回は、その仕組みを用いて、渡辺さんが何を考え、何を目指しているのか、具体的に紹介していきたい。
そもそも渡辺さんは、前職の竹下一級建築士事務所から独立を決めたときには、設計入札や公共建築に取り組んでいこうとは考えていなかったそうだ。知り合いの設備設計事務所から磐田市で設計入札に参加したらどうだと誘われたのがきっかけで、自身の竹下時代の経験も活かせそうだということで公共建築の世界に足を踏み入れたとのこと。
最初は定期調査や市立中学校の耐震改修などを設計入札で受注し、入札参加の実質的な条件である売上と行政からの信頼を積み上げていった。建築プロジェクトとしても、2014年に北部地域包括支援センターを、2016年にコミュティ消防センターという小規模な建築で実績を積み、同年に豊岡中央交流センターを、2018年に磐田卓球場ラリーナを竣工させるに至った。
最近でも、コンペで増築工事の設計業務を受注した磐田市総合病院内の処置室だけの小さな改修や駐輪場の基本設計業務を設計入札で受注したり、市内の図書館の定期調査業務を受注したりして、継続的に公共建築の設計・調査業務が事務所に入っているような状態をキープしている。
なぜ公共建築?
なぜ渡辺さんはこのように継続的に公共建築に携わるのか。単刀直入に聞いてみた。
理由は大きく分けて2つ。一つは、行政団体というのは一番信用できるクライアントであるという点。もう一つは、公共建築の設計業務に含まれる教育価値への期待である。
前者については、なんとなくはおわかりになるだろう。県や市といった行政組織は、まずつぶれることはない(射程を数百年単位に伸ばせば話は別だ)。設計料も十分確保されているケースが多く、正当なプロセスを踏みさえすれば安心して仕事に集中できる。指定された期日に確実に振込みもある。
一方、例えば入札参加業者としても事前に暴力団との関わりのないことや納税をきちんとしていること、経営状況が良好なことを行政に対して示さなければならず、自分自身がクリーンであることの証明にもなる。
要望も担当者によって差はあれど、民間のように時に施主の顔を見ながら設計するというわけではなく、あくまでも公正な税金の使い方だけが求められ、その中で最低限の要望を踏まえて意匠を設計することができる。基本的な条件(例えば設計入札への参加基準)をクリアしさえすればクライアントとして十分に安定した関係を見込めるし、意匠性を凝らすことも可能だ。
後者については、ここまでのエッセイでも度々言及してきたように、とにかく建築設計実務の学びの機会としてこのうえないということである。前回紹介した積算業務に代表されるような公共建築のともすれば面倒なプロセスは、私自身も含め面倒だと思っている方が少し不自然なのかもしれない。渡辺さんに言わせると公共建築の設計は建築設計において必要な業務がすべて含まれている「基本形」なのだ。
民間が普通で、公共が大変、という構図ではなく、公共が一般的な基本形で民間はよりシンプルなプロセス、というか民間の設計業務は公共での設計業務の一部を簡略化したものだという認識で渡辺さんは公共と民間の違いを捉えている(民間でも公共同様のプロセスを踏むプロジェクトももちろん存在するということは同時に強調しておきたい)。
つまり、公共建築の設計や監理業務を一通り経験すれば、悟空の重たい道着みたいなもので(例えがやや古くてすみません)、その後の民間の仕事は非常にスムーズに感じられる可能性が高いということだ。この教育効果は、特に若い世代の建築関係者にとって大きなものになる。渡辺さんとしてはこの公共事業の設計プロセスが、ほぼ一級建築士試験の内容(特に施工分野)と重なっているということも大きな価値だそうで、公共案件に触れることで知識に実感を持って国家試験に取り組むこともできるようになる。
「札」を「入」れるという功罪 – 入札による公共建築の設計業務について
前回のエッセイからかなり間が空いてしまった。
今回の主なテーマは、この10回の連載の中でも非常に重要度の高い、公共建築における設計入札制度について、である。渡辺事務所では以前から磐田市の公共建築における設計入札制度に参加しており、これまで代表作の豊岡中央交流センターをはじめ、10を超える公共建築を磐田市内で実現させてきた。
そもそも、公共建築の設計業務の発注は、というか行政からのあらゆる発注は、入札かそれに準ずる公平な選定理由でなされる。日本における入札の起源(主に河川改修やかんがい等の土木工事における施工入札)は16世紀末まで遡るとされている。※1 近代化の過程で、1890年の会計法施行によって一般競争入札が原則となり、それ以降は談合や安値受注とのイタチごっこで度重なる制度の修正を重ねてきたという、決して明朗とは言えない歴史がある。しかしながら、「建築家」がジョサイア・コンドルらによって我が国に輸入される3世紀以上前から続いている慣習制度でもあり、現代に至るまで、日本の大規模建設工事の受発注の仕組みは、この入札制度と共に歩んできたと言って過言ないだろう。
建築を建てる際には、大きく分けて設計入札と上述したような工事入札があり、今回説明する渡辺さん独特の取り組みについては設計入札に関する事柄が多いが、受注後の工事入札に向けた設計事務所側の業務についても踏み込んで書いている。設計入札については、この連載でも何度か話題に出ているということもあるし、渡辺さんの活動をわかりやすく説明できる一つの側面でもあるので、気合を入れて書きたい。
この設計入札制度は、日本の建築畑にいると馴染みのある「コンペ」よりも、実は圧倒的に多くの公共建築を生み出し続けている仕組みであるが、知れば知るほど入札を知らない人に説明するのが難しい。そのことが前回エッセイから何度か渡辺さんにヒアリングしていくうちに分かってきた。結果的に、これは一回のエッセイでは書ききれないなということになってきたので、7回目、8回目を一気に書き切ることにしたい。
7回目はまず、「設計入札って何?」という話から。次回8回目はその現状に対して渡辺事務所がどのように取り組んできたのかという具体的な話として筆を進めるつもりだ。特に今回はかなり専門的な話になるので、難しく感じた方は飛ばして8回目にジャンプしていただいても構わない。
書く前に強く言っておきたいのは、このエッセイでは設計入札の仕組みを肯定するつもりはなく、同時にコンペの取り組みを否定するつもりもないということだ。あくまでも、質の高い公共建築を世に生み出す方法の一つとして、渡辺さんの設計入札の取り組みを紹介したい。公共建築を生み出す方法も、建築のスタンスも、そのヴァリエーションは多い方が建築界の生態系を維持する上で好ましく、私がこれを書くモチベーションはそのヴァリエーションを増やすという点にある。
もう少し踏み込んでいえば、設計入札であろうが、コンペだろうが、受注後の設計プロセスにおける教育価値が公共建築には確かにあるという事実を紹介したいということだ。その意味でいえば、設計入札というより公共建築の設計についての論考ともいえる。
アーキテクチャーフォトで、先週(期間:2021/3/29-4/4)注目を集めたトピックスをまとめてご紹介します。リアルタイムでの一週間の集計は、トップページの「Weekly Top Topics」よりご覧いただけます。
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