



佐伯聡子+タンK.M. / KUUが設計した、神奈川の「大磯ロングハウス」です。
庭作りを趣味とする二家族の二棟の住宅の計画です。建築家は、生活に呼応して変化できる在り方を求め、敷地に“背骨”を通して庭を設けながら片流れ屋根を架ける構成を考案しました。また、不完全や即興性は固定化しない居場所作りの手掛かりを意図しています。
都心から海沿いに大磯へと向かう。平塚駅を越えたあたりから山が迫り、平地がぐっと狭まる地形の変化を体感する。さらに大磯駅から富士山を望む旧東海道をしばらく進むと、街と田畑が曖昧に交わる境界に沿うようにその細長い敷地が現れる。ほぼ敷地の中央に位置する元からあった階段の左右で敷地が分けられ、「庭を作る」という共通の趣味を持つ2家族のための2棟の住宅、「左ハウス(L)」と「右ハウス(R)」になった。
敷地形状に同調するよう主軸となるspine(背骨)を低く長く通し、両側にいくつかの片流れの屋根を架け、その分設された隙間を庭とした。近隣住宅地側はそのスケールを維持し、道路側は一段下がった野畑に広がる眺望を得、現場で自生していた既存の木(エノキ)は2棟間の庭に丁度良く収まった。またSpine沿いに設けた配線用チャンネルから照明やコンセントの配線を自由に取り出し、天井フックと併用することで、通常は建築に固定されがちな建築設備に柔軟な任意性を付与した。
住宅を豊かにするのは「触れること」「使うこと」だと考えている。
手を入れること汚れることを嫌う完結したアートのようでなく、道具のように使い古して欲しい。不完全に見える素材配置や即興的な塗装表現は、将来の手入れへの敷居を下げ、固定化しない居場所作りへの手がかりとなっている。ベニヤ、ポリカーボネイト、セメントボード等の汎用素材の採用も居住者が気兼ねなく更新していける環境を担保するための選択である。

