
SHARE 【ap編集長の建築探索】vol.028 POTATO NINE / 田中昭成+清正崇「第一ダイヤモンド工事駐車場棟」

「ap編集長の建築探索」は、23年の歴史ある建築ウェブメディア「アーキテクチャーフォト」の編集長である後藤連平が、訪問した建築を紹介する連載シリーズです。論考のようなかっちりとした形式ではなく、現地で感じた雰囲気や空気感が伝わるような“ライブ感”のある文体で綴ります。読者の皆様も自身が建築を体験するように読んでいただければ幸いです。
POTATO NINE / 田中昭成+清正崇「第一ダイヤモンド工事駐車場棟」
田中昭成さんと清正崇さんによるユニット「POTATO NINE」が設計した、東京都内の工事会社の為の駐車場建築を拝見した。
また、施工はPOTATO NINEと旧知の鈴吉建設が担ったとのこと。
都心から少し離れた住宅街の中の敷地。この地を拠点としている、コンクリート構造物の切断孔あけや、解体工事施工を行う会社の為に計画されたもの。
元々この地で事業を行ってきたのだけれど、時代を経て周囲に住宅が建ち並ぶようになり、また、夜間に車の出入りがあるということで、騒音への対策などを目的として、屋内型の駐車場が計画されることになったのだと言う。
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訪問して周囲をぐるりと歩いてみると、新築の建物にも関わらず、落ち着いていて街並みに馴染んでいる。
外観の色やヴォリューム感に着目して見てみると、隣接する集合住宅や戸建住宅の色合いを参照していることもよく分かる。そこには、建築家による設計ならではの配慮や眼差しが込められていることがよく分かる。
外観において外周全てに回っている開口部も、この建築の特徴だ。それは、内部に足を踏み入れるとより効果を発揮している。
スレンダーに設計された柱も相まって天井の浮遊感と空間の開放感が凄い、、、、!
そして、斜めに配置された梁が意匠的にも効いている、、、!
構成としては大空間の駐車スペースに、小さな休憩スペースが付属するというシンプルな形式。そして、駐車スペースの天井には重力換気を行う為の仕組みも組み込まれている。
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この建築を見学していて、アノニマスな建築のことが思い起こされた。
建築を学んだり、建築設計を行なっている者ならば、ふと何気ない小屋や倉庫などが目に留まり、その素朴な美しさに魅了されてしまう、という経験をしたことがあると思う。
その背景には、徹底的な合理性であったり、様々な作為から解き放たれた建物だけが持ちえる独特の存在感のようなものがあるからだと思う。
この作品には、そのようなアノニマス建築の特質と、建築家ならではの美意識が、絶妙なバランス感で融合しているように思った、、、、!
街の中に溶け込み、過度に自身を主張せず静かに存在している。しかし、見る人がじっくり眺めるとその意図や美意識が浮かび上がるような建築、、、、、!
そのような感想を持った。このような特質を持った建築が街に増えていくことが、街のクオリティを静かに底上げしていくのだと思う。
田中さん、清正さん、お施主さん、おめでとうございます!
(訪問日:2026年5月29日)
後藤連平(ごとう れんぺい)
アーキテクチャーフォト編集長
1979年、静岡県磐田市生まれ。2002年京都工芸繊維大学卒業、2004年同大学大学院修了。組織設計事務所と小規模設計事務所で実務を経験した後に、アーキテクチャーフォト株式会社を設立。23年にわたり建築情報の発信を続けており、現在は、建築と社会の関係を視覚化するウェブメディア「アーキテクチャーフォト」の運営をメインに活動。著書に『建築家のためのウェブ発信講義』(学芸出版社)など。
