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【ap編集長の建築探索】vol.021 妹島和世建築設計事務所「すみだ北斎美術館」
photo©rem goto

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architecture|art|feature
ap編集長の建築探索墨田区妹島和世後藤連平東京美術館・博物館論考
【ap編集長の建築探索】vol.021 妹島和世建築設計事務所「すみだ北斎美術館」外観、北側の公園から見る。(※諸事情により筆者撮影ではない写真を使用しています) 撮影:尾鷲陽介

「ap編集長の建築探索」は、23年の歴史ある建築ウェブメディア「アーキテクチャーフォト」の編集長である後藤連平が、訪問した建築を紹介する連載シリーズです。論考のようなかっちりとした形式ではなく、現地で感じた雰囲気や空気感が伝わるような“ライブ感”のある文体で綴ります。読者の皆様も自身が建築を体験するように読んでいただければ幸いです。


妹島和世建築設計事務所「すみだ北斎美術館」

TEXT:後藤連平

 
妹島和世建築設計事務所による「すみだ北斎美術館」を訪問した。2016年に竣工した建築であるが、タイミングが合わず訪問できていなかったのだけれど、ついに訪問が叶った、、、!

地元の人たちが集まる公園と高架線路の挟まれていて、美術館としてはそれほど大きくない敷地に建っている。また、公園ではない三方には公道があり、全方位からアクセスがあるという条件。

雑誌やSNSの投稿などの写真で建物の様子はもちろん見ていて、アルミパネルで覆われた鈍いシルバーの外観と、そこにザクっと入るスリットの特徴的な造形が印象的で、こういう形態をつくりたかったのかな?と思っていたところもあった。

しかし、実際に訪問してみて、あらゆる所や、この建築での体験が、この場所にある建築として、美術館として、無意識に思う「こうだったら良いな」が、先回りして高度に実現されている感覚があって、本当に驚いた、、、、、!

「先回り」と書いたのは、説明が難しいのだけれど、例えば、iPhoneは、ユーザーインターフェースが、高度に人の動きや直感を考慮されていて、行動の先に回って全てが作られている。それ故に、使っている時がスムーズすぎて快楽すら感じてしまう側面があると思う。そのような感覚が、この建築では機能のみならず、こういう空間だったら良いなという感覚レベルでも実現されているというか。

以下の写真はクリックで拡大します

【ap編集長の建築探索】vol.021 妹島和世建築設計事務所「すみだ北斎美術館」外観、南側の道路から見る。 photo©rem goto
【ap編集長の建築探索】vol.021 妹島和世建築設計事務所「すみだ北斎美術館」外観、西側の道路から見る。 photo©rem goto
【ap編集長の建築探索】vol.021 妹島和世建築設計事務所「すみだ北斎美術館」1階、公園側からの外部通路 photo©rem goto
【ap編集長の建築探索】vol.021 妹島和世建築設計事務所「すみだ北斎美術館」1階、外部通路、平面中央付近 photo©rem goto
【ap編集長の建築探索】vol.021 妹島和世建築設計事務所「すみだ北斎美術館」1階、外部通路、西の道路側を見る。 photo©rem goto

最初に書いたように、四方からアクセスできる敷地。その四面に大小のスリットがあり、美術館の入口へのアプローチとなっている。四つの道は平面中央で合流して、そこから内部へと入っていく。

そもそも北斎の作品を扱う美術館ということで、自然光を遮断しなければいけないという前提があったのだと思う。そして、公園と線路というどちらかというとやかましい場所とも隔絶する必要がある。そのような、閉鎖的でなければならないことと、全方位からアプローチ出来た方が良いという、ある意味矛盾するような条件を解決するのが、このスリットだということが、現地に行ってみると一瞬で分かり、超機能的なものを造形的なものとして見せてしまうアイデアに本当に驚かされた、、、、!

そして、遠くからみると薄暗く見えていたスリットの中に入ると、開放的なキラキラした空間で驚く、、、!全面がガラス張りになっていて光を反射することや内部が見通せることで、そう感じているのだと思うのだけれど、外からは想像することが出来ない清々しさで、迎え入れられている感覚を覚えた、、、!

以下の写真はクリックで拡大します

【ap編集長の建築探索】vol.021 妹島和世建築設計事務所「すみだ北斎美術館」1階、エントランスホール photo©rem goto
【ap編集長の建築探索】vol.021 妹島和世建築設計事務所「すみだ北斎美術館」4階、展望ラウンジ ホワイエ photo©rem goto
【ap編集長の建築探索】vol.021 妹島和世建築設計事務所「すみだ北斎美術館」4階、3階への階段を見下ろす。 photo©rem goto
【ap編集長の建築探索】vol.021 妹島和世建築設計事務所「すみだ北斎美術館」3階、4階へ続く階段 photo©rem goto

外観で見える建物上部のスリットは、内部において上階の展示室の前にある展望ラウンジへの採光や眺望を担っているのだけど、単純な窓ではなく、空間に切り込みのように入っていることで、実際の大きさ以上に外部に面しているような感覚が生まれていて、開口部の在り方として非常に興味深かった。

以下の写真はクリックで拡大します

【ap編集長の建築探索】vol.021 妹島和世建築設計事務所「すみだ北斎美術館」1階、外部通路から公園側を見る。 photo©rem goto

この建築での体験は、最初にも書いたのだけれど、こうだったら良いなあと誰もが無意識レベルで直感的に思うだろうことに対して、全てを先回りして想像以上の方法で空間化されていると感じた。本当に驚くべき体験。なんでこんなことができるんだろうとも。そして、同時に造形的でもあり、それが建築のキャラを作っている。

この建築のような想像を超えた先回りを具現化してくれるような建築ってほぼ体験したことがないのだけれど、自身の経験を振り返ってみて思い出したのは、スウェーデンで訪れた、ラファエル・モネオが改修設計した「ストックホルム近代美術館」。

この建築は北斎館のような造形的ではないものの、建物の中のどこにいても、美術館でアートを見るという体験を先回りして建築の様々な要素が、体験をサジェストしてくれる感覚があり、ストレスフリーを超えて快楽性すらを感じさせてくれる建築であった。この感覚に近いものを感じた、、、、!

改めて建築でできることの可能を感じさせられる体験であったし、これだけ考え尽くして建築をつくり続けている建築家が日本にいるということに感謝したくなってしまった。
また、この建築をこれから初体験できる人が羨ましいと思ってしまうくらいの建築。お勧めです、、、!

(訪問日:2026年5月3日)


後藤連平(ごとう れんぺい)
アーキテクチャーフォト編集長
1979年、静岡県磐田市生まれ。2002年京都工芸繊維大学卒業、2004年同大学大学院修了。組織設計事務所と小規模設計事務所で実務を経験した後に、アーキテクチャーフォト株式会社を設立。23年にわたり建築情報の発信を続けており、現在は、建築と社会の関係を視覚化するウェブメディア「アーキテクチャーフォト」の運営をメインに活動。著書に『建築家のためのウェブ発信講義』(学芸出版社)など。


  • すみだ北斎美術館のウェブサイト
  • 「ap編集長の建築探索」のアーカイブはこちらから

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