
SHARE 【ap編集長の建築探索】vol.027 太田雄太郎 / 太太と青木工務店「文栄堂渋谷ビル」

「ap編集長の建築探索」は、23年の歴史ある建築ウェブメディア「アーキテクチャーフォト」の編集長である後藤連平が、訪問した建築を紹介する連載シリーズです。論考のようなかっちりとした形式ではなく、現地で感じた雰囲気や空気感が伝わるような“ライブ感”のある文体で綴ります。読者の皆様も自身が建築を体験するように読んでいただければ幸いです。
太田雄太郎 / 太太と青木工務店「文栄堂渋谷ビル」
太田雄太郎さんが主宰する太太と青木工務店が設計監理した、渋谷区の「文栄堂渋谷ビル」の内覧会に伺った。
太田さんは、隈研吾建築都市設計事務所で設計室長を歴任したのち2024年に自身の設計事務所を立ち上げた若い建築家。
現代という住宅ですら建ちにくくなっている時代に、ほぼ最初の新築建築として、このような規模感のあるビルを完成させた太田さんという人物にも興味を持って現地を訪問した、、、!
クライアントは長く文房具の販売を手掛けてきた企業である山崎文栄堂さんとのこと。
渋谷の街に意義ある建築を建てたいという想いを持っていて、当初より木質系のビルを建てられる建築家を探していて太田さんと巡り会ったのだという、、、!
機能としては、最上階の9階に、この地域で働く人たちが、会議や打ち上げなどの為に借りられるレンタルスペースがあり、上層階は事務所、下層階は店舗などを想定して借り手を募集しているそう。
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建物の内部に入る前に、歩いて外観を見て回った。
周囲には、基準階が連続する均一性の高いビルが立ち並んでおり、その中でこのビルは際立った存在感を示しているように感じた、、、!
見ての通り、ジョリパットで仕上げられた壁面と木曽檜を用いた壁面のバランスや、窓の開け方も各層ごとに変わっていく。
(ちなみに、木曽檜の背後にはALCが控えている)
その動的ともいえるファサードが、角地という敷地の特性も味方につけて、静的な街並みと対比的に大きな存在感を持ち得ていた、、、!そんな第一印象をもった。
また、幹線道路に面した敷地なのだけれど、この場所にポジティブな固有性や、何か明るさのようなものも与えているようにも思えた。
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内部に入ると、やはりその特徴は窓辺空間。
自然換気も可能なように木製建具が用いられている。
そして、厚みのある腰壁は、450mm、700mm、850mm、1000mmの4種類があり、腰掛けたり、デスクの代わりに使ったりといった行動を促すようにも意図されている。
実際に見てみると、この厚みが非常に良くて、先に書いた機能面だけでなく、外部との関係が適度に調整されていて、完全に解放されるわけでもなく完全に閉じるわけでもない定説な感じがした。そして、この開き方で空間に個性が宿っている感じもした、、、!
まだ仕上げ前のスケルトンの状態ではあるのだけれど、何か家のような居心地の良さも備えた空間だと思った、、、!
また、この空間に入居した企業から依頼された建築家やデザイナーがこの窓辺空間をどのように扱うかも興味があり、見てみたいと思った、、、!(実際には難しいと思うのだけれども)
フラットというより適切な個性がスケルトンにあるからこそ、それを活かした相乗効果が生まれるのではないかと、、、!
そうそう、最後になるのだけれど、このビルの完成前に太田さんが作家・編集者の徳谷柿次郎さんと作った『ゆれる建築家』という本があり、これも興味深い一品。
縦長でコンパクトに手に収まるサイズの、良い意味での軽さのある書籍で、自然と開きたくなる感覚を持った本。
冒頭で言及した太田さんのパーソナリティはこの本からも十分に感じ取れる。少し読み始めているのだけれど、現代という建築家の生きる道か一本ではなくなった時代に対して、率直な思いが書かれていて共感してしまう内容でもある。
太田さん、青木工務店さん、お施主さん、おめでとうございます!!!
(訪問日:2026年8月22日)
後藤連平(ごとう れんぺい)
アーキテクチャーフォト編集長
1979年、静岡県磐田市生まれ。2002年京都工芸繊維大学卒業、2004年同大学大学院修了。組織設計事務所と小規模設計事務所で実務を経験した後に、アーキテクチャーフォト株式会社を設立。23年にわたり建築情報の発信を続けており、現在は、建築と社会の関係を視覚化するウェブメディア「アーキテクチャーフォト」の運営をメインに活動。著書に『建築家のためのウェブ発信講義』(学芸出版社)など。




