SDレビュー2026の入選作品の展覧会レポート(前編)。“実施を前提とした設計中ないしは施工中のもの”という条件での建築コンペティション。若手建築家の登竜門としても知られる左:「Fragmented」遠山之寛+村上翔、右手前:「都市に触れる」太田雄太郎、右奥:「Iプロジェクト」寺本健一+光本直人+濱名直子 photo©architecturephoto
SDレビュー2026の入選作品の展覧会レポート(前編)。“実施を前提とした設計中ないしは施工中のもの”という条件での建築コンペティション。若手建築家の登竜門としても知られる左手前:「Iプロジェクト」寺本健一+光本直人+濱名直子、中央奥:「都市に触れる」太田雄太郎、右手前:「Fragmented」遠山之寛+村上翔 photo©architecturephoto
SDレビュー2026の入選作品の展覧会レポート(前編)。“実施を前提とした設計中ないしは施工中のもの”という条件での建築コンペティション。若手建築家の登竜門としても知られる左手前:「大径木の子ども食堂」佐々木勝敏+藤野なみか、中央奥:「ORGAN」鈴木岳彦、右手前:「ちいさなものさし」諸江一紀 photo©architecturephoto
SDレビュー2026の入選作品の展覧会レポート(前編)。“実施を前提とした設計中ないしは施工中のもの”という条件での建築コンペティション。若手建築家の登竜門としても知られる左奥:「ちいさなものさし」諸江一紀、右手前:「ORGAN」鈴木岳彦、右奥:「大径木の子ども食堂」佐々木勝敏+藤野なみか photo©architecturephoto
SDレビュー2026の入選作品の展覧会レポート(前編)です。
“実施を前提とした設計中ないしは施工中のもの”という条件の建築コンペティションです。また、若手建築家の登竜門としても知られています。本記事では展覧会の様子を前編と後編に分けて紹介します。会期は2026年9月4日~13日。会場はヒルサイドテラスF棟 ヒルサイドフォーラム。
SDレビュー2026の審査を務めたのは、山梨知彦、冨永祥子、満田衛資、増田信吾でした。展覧会の公式ページはこちら。
SDレビューとは
SDレビューは、実際に「建てる」という厳しい現実の中で、設計者がひとつの明確なコンセプトを導き出す思考の過程を、ドローイングと模型によって示そうというものです。
実現見込みのないイメージやアイデアではなく、実現作を募集します。
1982年、建築家・槇文彦氏の発案のもとに第1回目が開催され、以降毎年「建築・環境・インテリアのドローイングと模型」の展覧会とその誌上発表を行っております。
以下、入選作品を展示順に掲載します。
導入
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SDレビュー2026の入選作品の展覧会レポート(前編)。“実施を前提とした設計中ないしは施工中のもの”という条件での建築コンペティション。若手建築家の登竜門としても知られる展覧会ステートメント photo©architecturephoto
都市に触れる
太田雄太郎
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SDレビュー2026の入選作品の展覧会レポート(前編)。“実施を前提とした設計中ないしは施工中のもの”という条件での建築コンペティション。若手建築家の登竜門としても知られる「都市に触れる」太田雄太郎 photo©architecturephoto

SDレビュー2026の入選作品の展覧会レポート(前編)。“実施を前提とした設計中ないしは施工中のもの”という条件での建築コンペティション。若手建築家の登竜門としても知られる「都市に触れる」太田雄太郎 photo©architecturephoto
東京の都市風景は、いつからか、ガラスに包まれた軽やかで均質なビル群によって構成されるようになった。なかでもテナントビルは、経済的合理性と施工効率を優先した反復可能なシステムとして、都市の表層を覆っている。そのガラスの向こうで営まれている活動や、人の姿や気配は反射する表面に包み隠されている。
本計画では、窓辺に人の身体と振る舞いを受け入れる奥行をつくり、均質化された都市の表層に人間的な風景を取り戻すことを試みた。窓の開口下端を4種類の高さに分類し、各階に分散して配置する。450mmは腰掛け、700mmと850mmは机やカウンター、1,000mmは寄りかかって街を眺める場所となる。異なる高さの開口部と内部空間の奥行によって、窓辺に「働く」「眺める」「腰掛ける」「佇む」といった多様な姿を生み出す。
建築のファサードではなく、そこで過ごす人々の身体と振る舞いが都市の風景をつくることを目指した。
Fragmented
遠山之寛+村上翔
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異質で断片的な都市要素が脈絡乏しく共存する工業地帯に位置する計画地での、締結金物商社の建替計画である。このエリアの産業構造に起因する全体性の欠如した不確実性を、ひとつの閉じた領域として完結させるものにつなげるのではなく、将来的な変化や拡張を柔軟に許容しうる部分集合的な計画として捉えた。
大小4つのボリュームを不整形な敷地形状に沿って配置し、各々に独立性を保ち強い正面性を持たない建築を目指した。建物高さを抑え周囲の住宅と同調しつつ、内部において吹抜けを効果的に配し、抑制された外形に対して知覚上の広がりを生み出した。建築の諸要素のいずれかを突出させるのではなく、それぞれが固有の役割を保ちながら均衡し並存する状態を目指した。
部分が全体に先行する、それはあらかじめ単一の全体像を定めず、断片を相互に接続しながら全体を形成することであり、そのあり方は冗長的でありながら、また開放的でもある。
Iプロジェクト
寺本健一+光本直人+濱名直子
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SDレビュー2026の入選作品の展覧会レポート(前編)。“実施を前提とした設計中ないしは施工中のもの”という条件での建築コンペティション。若手建築家の登竜門としても知られる「Iプロジェクト」寺本健一+光本直人+濱名直子 photo©architecturephoto

SDレビュー2026の入選作品の展覧会レポート(前編)。“実施を前提とした設計中ないしは施工中のもの”という条件での建築コンペティション。若手建築家の登竜門としても知られる「Iプロジェクト」寺本健一+光本直人+濱名直子 photo©architecturephoto
桧の生産量日本一の地域で、植林、伐採、製材、乾燥、加工、販売、施工までを一貫して担う木材総合メーカーの本社屋である。原木が製品化される工場敷地に建ち、川上の資源から川下の建築へ至る営みを可視化する。
用いるのは、独自の乾燥管理によって品質を整えられた国産桧の住宅用無垢製材である。組柱と貫による架構へ再編し、単純なビス接合と反復により非住宅建築を成立させる。製材精度と人工乾燥による寸法安定性が架構を支える。
工場で製品化される木材が、働く場、迎える場、見せる場を形づくる。住宅用に規格化された無垢製材の集積は、その精度に支えられた明快な秩序を生み、固有の陰影とヒューマンスケールをもたらし、光、風、人の活動を受け止める開かれた均衡となる。住宅用に流通する小断面の無垢製材を組み合わせ、原木と建築を結び直すことで、木材産業の循環を本社屋の姿として立ち上げ、今日の非住宅木造建築として展開する試みである。
大径木の子ども食堂
佐々木勝敏+藤野なみか
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SDレビュー2026の入選作品の展覧会レポート(前編)。“実施を前提とした設計中ないしは施工中のもの”という条件での建築コンペティション。若手建築家の登竜門としても知られる「大径木の子ども食堂」佐々木勝敏+藤野なみか photo©architecturephoto

SDレビュー2026の入選作品の展覧会レポート(前編)。“実施を前提とした設計中ないしは施工中のもの”という条件での建築コンペティション。若手建築家の登竜門としても知られる「大径木の子ども食堂」佐々木勝敏+藤野なみか photo©architecturephoto
全国の人工林が利用期を迎えるなか、老齢期の大径木の活用が課題となっている。一方、建主は定年後のライフワークとして子ども食堂の運営、不登校児への学習支援、生活困窮者支援を続けてきたが、会場となる公共施設の利用調整や、寄付物資の運搬と自宅での保管が負担となり、築約50年の自宅も耐震改修を必要としていた。こうした多層的な課題に対し、大径木を用いて地域に開かれた住宅兼子ども食堂を計画した。そこでは、役割を終えた子ども部屋を含む2階と1階中央部を減築し、大径木による架構を挿入する。加えて、既存部と新設部の間に縁側やテラスを巡らせ、床レベルの異なる学習、図書、工作、交流の場と、管理しやすい倉庫を設ける。それにより、子どもや高齢者が活動に応じて居場所を選び、内外を回遊する。本計画は、地域の森林資源を用いて、個人住宅を地域で支え合う場として更新する試みである。
ちいさなものさし
諸江一紀
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SDレビュー2026の入選作品の展覧会レポート(前編)。“実施を前提とした設計中ないしは施工中のもの”という条件での建築コンペティション。若手建築家の登竜門としても知られる「ちいさなものさし」諸江一紀 photo©architecturephoto
名古屋市内に開発と公園化の狭間で取り残された場所がある。かつて別荘地やゴルフ場として開発され、市は都市公園化をめざしたが、高速道路反対運動もあり頓挫した。現在は緑に覆われながらインフラ整備が進まず、複雑な風景が残る。
計画地ではかつての住民が自ら築造と解体を繰り返してきた。今回計画した橋や池も、かつて存在したと後に知った。これは偶然ではなく、地形が時代を超えて人々の営みを促してきたと言える。
これらの建設行為の履歴を引き受け、土地の声に耳を澄ますために「ものさし」としての建築をつくる。橋は身体を通して土地の起伏や距離感を測る。水路は粘土質の畑の水を捌き、温湿度の違いに反応する植生の変化を量る。窓は都市と自然の間合いを図り、既存の建材や樹木の置き直しは積層した時間を計る。
土地を均質化してきた近代都市開発に対し、橋を架け、水路を開く小さな土木が風景を少しずつ編集し、世界とのつながり方を変えていく。
ORGAN
鈴木岳彦
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SDレビュー2026の入選作品の展覧会レポート(前編)。“実施を前提とした設計中ないしは施工中のもの”という条件での建築コンペティション。若手建築家の登竜門としても知られる「ORGAN」鈴木岳彦 photo©architecturephoto
ピアニストとその家族の生活拠点であり、生徒の通う練習拠点であり、人々を招いて音楽と食事を楽しむ交流拠点でもある建築。それらを別々でなくひとつながりに重なり合う場として考えることで「住宅地のピアノ教室」という閉じがちな空間を暮らしと街につなげ、音楽の悦びを人々の日常に響かせたい。
空間は一本の管状で一端にピアノ、もう一端に個室群を置く。音は管内に響き、端部に向かい減衰する。幅や高さを変えつつ上下左右に蛇行させることで響きのグラデーションがうまれる。その中に生活と演奏と交流が重なり合う場を、ステージにもなるピアノ室、観客席にもなるリビング、バーにもなるダイニング……という具合に計画する。そして各空間がそのどちらの場合にも自然だと感じられる状態になるように、各部を設える。
住まい手は畑を耕し、鶏を飼い、料理をし、ヨガをし、その全ての間に音楽をする。その分かち難い生活と音楽の時間を、支え披露する建築を目指している。
■展覧会情報
東京展
会期:2026年9月4日(金)~9月13日(日)会期中無休
11:00–19:00(最終日は16:00まで)
会場:ヒルサイドテラスF棟 ヒルサイドフォーラム
東京都渋谷区猿楽町18-8
───
京都展
会期:2026年10月2日(金)~10月24日(土)
10:00–17:00(入館は16:30まで)
日曜日・祝日は休館
会場:京都工芸繊維大学 美術工芸資料館
京都府京都市左京区松ヶ崎橋上町