



岩元真明+金子真歩+道祖浩満+吉田一輝 / 九州大学岩元真明研究室が設計した、熊本・南小国町の「新嘗祭のテント」です。
豊作を願う祭の為の一日限りの建築です。建築家は、資源循環と再利用の徹底を求め、“製材所から借りた角材”を主要材とし“木材用クランプ”で結合して膜屋根を張る建築を考案しました。また、釘打も不要で安全かつ短期間での施工と解体も実現しています。
熊本県南小国町で開催された新嘗祭のためのテントである。
一日限りの仮設建築だからこそ資源循環と再利用への配慮を徹底し、建材を使い捨てないことが重要だと考えた。そこで、地場の「小国杉」の角材を地域の製材所から借用し、木材用クランプ「つな木」で結合。地域の人々と協働し、組立・解体・再利用が容易な膜構造建築をつくりだした。
敷地は「喫茶 竹の熊」の隣にある稲刈りを終えた田んぼである。12軒の飲食スタンドが並ぶ「片流れテント」と木育ワークショップを行う「タープテント」をL形に配置し、お祭りの広場を囲い込んだ。
「片流れテント」では、新米や旬野菜を提供する農園と飲食店が集まり、祭りの参加者をもてなした。広場に面する北側を大きく開き、日差しを受ける南側では高さを抑えた片流れの屋根である。構造材には敷地に近接する木材工場から小国杉の端材とストック材を借用。45角材を木材用クランプ「つな木」でつなぎ合わせ、シンプルで合理的な架構をつくりだした。
釘やビスなどを使用しない「つな木」は可逆的(リバーシブル)なジョイントであり、角材は祭りの後に木材工場に返却され再利用される。また、カウンターテーブルはフローリング用木材の流用である。テント膜は立体裁断されており、割竹を用いて張力導入を行った。この竹も地産材で、ゆるやかなアーチを描いて空間にアクセントを与える。膜の固定には「つな木」のボルト穴を利用し、簡便に取り外し可能なディテールを開発した。
「タープテント」は、子どもたちが「木育ワークショップ」を楽しむ場であり、祝祭性と安全性を意識してデザインを行った。45角材によって構成されたピラミッド状のやぐらを支点としてメインロープ(8Φ)を張り渡し、約12mのスパンを飛ばしている。
メインロープには荷締用ラチェットベルトを用いて張力を導入し、大きな反力が生じるロープ端部は既存の木塀柱および電柱に固定している。「片流れテント」と同じく、角材、クランプ、テント膜、引張材の全てが容易に解体・再利用可能なリバーシブルデザインである。









