宮崎晃吉 / HAGISOによる、群馬の住宅「前橋の道の輪郭」。路地状の共有地などが見られる街区での計画。建築の時間と住み手の時間との折合いも主題とし、読み替えられながらも生き続ける存在を志向。路地の延長線上の“たまり”となる中庭の周りに諸室を配置する建築を考案外観、南側の道路より見る。 photo©楠瀬友将
宮崎晃吉 / HAGISOによる、群馬の住宅「前橋の道の輪郭」。路地状の共有地などが見られる街区での計画。建築の時間と住み手の時間との折合いも主題とし、読み替えられながらも生き続ける存在を志向。路地の延長線上の“たまり”となる中庭の周りに諸室を配置する建築を考案外観、「通り庭」より中庭を見る。 photo©楠瀬友将
宮崎晃吉 / HAGISOによる、群馬の住宅「前橋の道の輪郭」。路地状の共有地などが見られる街区での計画。建築の時間と住み手の時間との折合いも主題とし、読み替えられながらも生き続ける存在を志向。路地の延長線上の“たまり”となる中庭の周りに諸室を配置する建築を考案1階、リビング側からダイニングとキッチンを見る。 photo©楠瀬友将
宮崎晃吉 / HAGISOによる、群馬の住宅「前橋の道の輪郭」。路地状の共有地などが見られる街区での計画。建築の時間と住み手の時間との折合いも主題とし、読み替えられながらも生き続ける存在を志向。路地の延長線上の“たまり”となる中庭の周りに諸室を配置する建築を考案1階、「アリーナ」 photo©楠瀬友将
宮崎晃吉 / HAGISOが設計した、群馬の住宅「前橋の道の輪郭」です。
路地状の共有地などが見られる街区での計画です。建築家は、建築の時間と住み手の時間との折合いも主題とし、読み替えられながらも生き続ける存在を志向しました。そして、路地の延長線上の“たまり”となる中庭の周りに諸室を配置する建築を考案しました。
群馬県前橋市の駅周辺に建つ住宅。
前橋駅と中心市街地は少し離れており、その間を駅前にしてはのんびりとした宅地が埋めている。グリッド街区に対して、住宅や事務所、たまに飲食店、と小ぶりな建築が並んでいる。
旗竿敷地がせめぎあい、街区の中心部は接道できない宅地も生まれてきており、それらは路地状の共有地によってそのアクセスが確保されていたりする。そんな街区の中の、旗竿形状ながら86坪のやや広めな敷地に住宅を設計することになった。
住宅において、建築そのものの時間とそこに住む人々の時間をどう折り合わせるかという課題は避けて通れない。一方で建築は人間よりも長く存続しうる存在であり、決して安価な消費財ではない。標準的に規定された家族像や「住むため“だけ”の機械」としての住宅が、時間を経るごとに想定と現実の間にギャップを生み出していく。
さらに相続による分割が進み、身の丈に合った住宅像が固定化し、住宅を住宅らしく作ることの閉塞感は住宅の短命化に拍車をかけている。
まずは、街区に潜む獣道のような共有地や路地の延長線上の「たまり」として中庭を位置づけた。この中庭を囲うように、北関東地域特有の冬季の季節風である「からっ風」から守る曲面をもつ壁を配置する。この壁の内側に身を寄せるように中庭と一体的になったアリーナや諸室が並んでいる。
季節に応じた光の入射角をふまえた庇は、立面を分割し建具が過大になるのを避けている。中庭に対して徐々に庇がおりていってすり鉢状となることで、街区の奥の中庭でも大きな空を感じることができる。
曲面壁の裏地としての内部仕上げはラワン合板の下見板張とし、書棚に並ぶ本や華奢な手すりとともに、無機質でシームレスな外観に対してスケールを落としている。
設計を進めていく中でも家族の形は変わっていく。当初は予期していなかった5人目の子供が生まれ、中学生の長男は反抗期を迎える。常に変化する住まい方に対して、それを受け入れる建築のおおらかな全体が都市の部分として定着してくれば、この住宅は読み替えられながらも生き続けていけるはずだ。
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宮崎晃吉 / HAGISOによる、群馬の住宅「前橋の道の輪郭」。路地状の共有地などが見られる街区での計画。建築の時間と住み手の時間との折合いも主題とし、読み替えられながらも生き続ける存在を志向。路地の延長線上の“たまり”となる中庭の周りに諸室を配置する建築を考案俯瞰、敷地上空より見る。 photo©楠瀬友将

宮崎晃吉 / HAGISOによる、群馬の住宅「前橋の道の輪郭」。路地状の共有地などが見られる街区での計画。建築の時間と住み手の時間との折合いも主題とし、読み替えられながらも生き続ける存在を志向。路地の延長線上の“たまり”となる中庭の周りに諸室を配置する建築を考案外観、東側より見る。 photo©楠瀬友将

宮崎晃吉 / HAGISOによる、群馬の住宅「前橋の道の輪郭」。路地状の共有地などが見られる街区での計画。建築の時間と住み手の時間との折合いも主題とし、読み替えられながらも生き続ける存在を志向。路地の延長線上の“たまり”となる中庭の周りに諸室を配置する建築を考案外観、西側より見る。 photo©楠瀬友将

宮崎晃吉 / HAGISOによる、群馬の住宅「前橋の道の輪郭」。路地状の共有地などが見られる街区での計画。建築の時間と住み手の時間との折合いも主題とし、読み替えられながらも生き続ける存在を志向。路地の延長線上の“たまり”となる中庭の周りに諸室を配置する建築を考案外観、南側の道路より見る。 photo©楠瀬友将

宮崎晃吉 / HAGISOによる、群馬の住宅「前橋の道の輪郭」。路地状の共有地などが見られる街区での計画。建築の時間と住み手の時間との折合いも主題とし、読み替えられながらも生き続ける存在を志向。路地の延長線上の“たまり”となる中庭の周りに諸室を配置する建築を考案外観、外壁の詳細 photo©楠瀬友将

宮崎晃吉 / HAGISOによる、群馬の住宅「前橋の道の輪郭」。路地状の共有地などが見られる街区での計画。建築の時間と住み手の時間との折合いも主題とし、読み替えられながらも生き続ける存在を志向。路地の延長線上の“たまり”となる中庭の周りに諸室を配置する建築を考案外観、「通り庭」より中庭を見る。 photo©楠瀬友将

宮崎晃吉 / HAGISOによる、群馬の住宅「前橋の道の輪郭」。路地状の共有地などが見られる街区での計画。建築の時間と住み手の時間との折合いも主題とし、読み替えられながらも生き続ける存在を志向。路地の延長線上の“たまり”となる中庭の周りに諸室を配置する建築を考案「通り庭」より中庭を見る。 photo©楠瀬友将

宮崎晃吉 / HAGISOによる、群馬の住宅「前橋の道の輪郭」。路地状の共有地などが見られる街区での計画。建築の時間と住み手の時間との折合いも主題とし、読み替えられながらも生き続ける存在を志向。路地の延長線上の“たまり”となる中庭の周りに諸室を配置する建築を考案中庭 photo©楠瀬友将

宮崎晃吉 / HAGISOによる、群馬の住宅「前橋の道の輪郭」。路地状の共有地などが見られる街区での計画。建築の時間と住み手の時間との折合いも主題とし、読み替えられながらも生き続ける存在を志向。路地の延長線上の“たまり”となる中庭の周りに諸室を配置する建築を考案1階、左奥:キッチン、手前:玄関、右:「スタディ」 photo©楠瀬友将

宮崎晃吉 / HAGISOによる、群馬の住宅「前橋の道の輪郭」。路地状の共有地などが見られる街区での計画。建築の時間と住み手の時間との折合いも主題とし、読み替えられながらも生き続ける存在を志向。路地の延長線上の“たまり”となる中庭の周りに諸室を配置する建築を考案1階、リビング側からダイニングとキッチンを見る。 photo©楠瀬友将

宮崎晃吉 / HAGISOによる、群馬の住宅「前橋の道の輪郭」。路地状の共有地などが見られる街区での計画。建築の時間と住み手の時間との折合いも主題とし、読み替えられながらも生き続ける存在を志向。路地の延長線上の“たまり”となる中庭の周りに諸室を配置する建築を考案1階、左奥:ダイニング、手前:リビング、右奥:「アリーナ」 photo©楠瀬友将

宮崎晃吉 / HAGISOによる、群馬の住宅「前橋の道の輪郭」。路地状の共有地などが見られる街区での計画。建築の時間と住み手の時間との折合いも主題とし、読み替えられながらも生き続ける存在を志向。路地の延長線上の“たまり”となる中庭の周りに諸室を配置する建築を考案1階、「アリーナ」側からリビングとダイニングを見る。 photo©楠瀬友将

宮崎晃吉 / HAGISOによる、群馬の住宅「前橋の道の輪郭」。路地状の共有地などが見られる街区での計画。建築の時間と住み手の時間との折合いも主題とし、読み替えられながらも生き続ける存在を志向。路地の延長線上の“たまり”となる中庭の周りに諸室を配置する建築を考案1階、「アリーナ」 photo©楠瀬友将

宮崎晃吉 / HAGISOによる、群馬の住宅「前橋の道の輪郭」。路地状の共有地などが見られる街区での計画。建築の時間と住み手の時間との折合いも主題とし、読み替えられながらも生き続ける存在を志向。路地の延長線上の“たまり”となる中庭の周りに諸室を配置する建築を考案1階、「アリーナ」 photo©楠瀬友将

宮崎晃吉 / HAGISOによる、群馬の住宅「前橋の道の輪郭」。路地状の共有地などが見られる街区での計画。建築の時間と住み手の時間との折合いも主題とし、読み替えられながらも生き続ける存在を志向。路地の延長線上の“たまり”となる中庭の周りに諸室を配置する建築を考案1階、「アリーナ」から開口部越しに中庭を見る。 photo©楠瀬友将

宮崎晃吉 / HAGISOによる、群馬の住宅「前橋の道の輪郭」。路地状の共有地などが見られる街区での計画。建築の時間と住み手の時間との折合いも主題とし、読み替えられながらも生き続ける存在を志向。路地の延長線上の“たまり”となる中庭の周りに諸室を配置する建築を考案1階、「アリーナ」から2階への階段を見る。 photo©楠瀬友将

宮崎晃吉 / HAGISOによる、群馬の住宅「前橋の道の輪郭」。路地状の共有地などが見られる街区での計画。建築の時間と住み手の時間との折合いも主題とし、読み替えられながらも生き続ける存在を志向。路地の延長線上の“たまり”となる中庭の周りに諸室を配置する建築を考案2階、廊下から「アリーナ」の吹抜を見る。 photo©楠瀬友将

宮崎晃吉 / HAGISOによる、群馬の住宅「前橋の道の輪郭」。路地状の共有地などが見られる街区での計画。建築の時間と住み手の時間との折合いも主題とし、読み替えられながらも生き続ける存在を志向。路地の延長線上の“たまり”となる中庭の周りに諸室を配置する建築を考案2階、廊下から書斎側を見る。 photo©楠瀬友将

宮崎晃吉 / HAGISOによる、群馬の住宅「前橋の道の輪郭」。路地状の共有地などが見られる街区での計画。建築の時間と住み手の時間との折合いも主題とし、読み替えられながらも生き続ける存在を志向。路地の延長線上の“たまり”となる中庭の周りに諸室を配置する建築を考案2階、書斎側から「アリーナ」を見下ろす。 photo©楠瀬友将

宮崎晃吉 / HAGISOによる、群馬の住宅「前橋の道の輪郭」。路地状の共有地などが見られる街区での計画。建築の時間と住み手の時間との折合いも主題とし、読み替えられながらも生き続ける存在を志向。路地の延長線上の“たまり”となる中庭の周りに諸室を配置する建築を考案2階、廊下 photo©楠瀬友将

宮崎晃吉 / HAGISOによる、群馬の住宅「前橋の道の輪郭」。路地状の共有地などが見られる街区での計画。建築の時間と住み手の時間との折合いも主題とし、読み替えられながらも生き続ける存在を志向。路地の延長線上の“たまり”となる中庭の周りに諸室を配置する建築を考案2階、室1 photo©楠瀬友将

宮崎晃吉 / HAGISOによる、群馬の住宅「前橋の道の輪郭」。路地状の共有地などが見られる街区での計画。建築の時間と住み手の時間との折合いも主題とし、読み替えられながらも生き続ける存在を志向。路地の延長線上の“たまり”となる中庭の周りに諸室を配置する建築を考案2階、室2 photo©楠瀬友将

宮崎晃吉 / HAGISOによる、群馬の住宅「前橋の道の輪郭」。路地状の共有地などが見られる街区での計画。建築の時間と住み手の時間との折合いも主題とし、読み替えられながらも生き続ける存在を志向。路地の延長線上の“たまり”となる中庭の周りに諸室を配置する建築を考案2階、室3 photo©楠瀬友将

宮崎晃吉 / HAGISOによる、群馬の住宅「前橋の道の輪郭」。路地状の共有地などが見られる街区での計画。建築の時間と住み手の時間との折合いも主題とし、読み替えられながらも生き続ける存在を志向。路地の延長線上の“たまり”となる中庭の周りに諸室を配置する建築を考案2階、室3から廊下を見る。 photo©楠瀬友将

宮崎晃吉 / HAGISOによる、群馬の住宅「前橋の道の輪郭」。路地状の共有地などが見られる街区での計画。建築の時間と住み手の時間との折合いも主題とし、読み替えられながらも生き続ける存在を志向。路地の延長線上の“たまり”となる中庭の周りに諸室を配置する建築を考案2階、ウォークインクローゼット photo©楠瀬友将

宮崎晃吉 / HAGISOによる、群馬の住宅「前橋の道の輪郭」。路地状の共有地などが見られる街区での計画。建築の時間と住み手の時間との折合いも主題とし、読み替えられながらも生き続ける存在を志向。路地の延長線上の“たまり”となる中庭の周りに諸室を配置する建築を考案2階、ウォークインクローゼット photo©楠瀬友将

宮崎晃吉 / HAGISOによる、群馬の住宅「前橋の道の輪郭」。路地状の共有地などが見られる街区での計画。建築の時間と住み手の時間との折合いも主題とし、読み替えられながらも生き続ける存在を志向。路地の延長線上の“たまり”となる中庭の周りに諸室を配置する建築を考案2階、脱衣室から浴室を見る。 photo©楠瀬友将

宮崎晃吉 / HAGISOによる、群馬の住宅「前橋の道の輪郭」。路地状の共有地などが見られる街区での計画。建築の時間と住み手の時間との折合いも主題とし、読み替えられながらも生き続ける存在を志向。路地の延長線上の“たまり”となる中庭の周りに諸室を配置する建築を考案2階、浴室 photo©楠瀬友将

宮崎晃吉 / HAGISOによる、群馬の住宅「前橋の道の輪郭」。路地状の共有地などが見られる街区での計画。建築の時間と住み手の時間との折合いも主題とし、読み替えられながらも生き続ける存在を志向。路地の延長線上の“たまり”となる中庭の周りに諸室を配置する建築を考案2階、浴室から脱衣室側を見る。 photo©楠瀬友将

宮崎晃吉 / HAGISOによる、群馬の住宅「前橋の道の輪郭」。路地状の共有地などが見られる街区での計画。建築の時間と住み手の時間との折合いも主題とし、読み替えられながらも生き続ける存在を志向。路地の延長線上の“たまり”となる中庭の周りに諸室を配置する建築を考案外観、敷地内の南側より見る。 photo©楠瀬友将

宮崎晃吉 / HAGISOによる、群馬の住宅「前橋の道の輪郭」。路地状の共有地などが見られる街区での計画。建築の時間と住み手の時間との折合いも主題とし、読み替えられながらも生き続ける存在を志向。路地の延長線上の“たまり”となる中庭の周りに諸室を配置する建築を考案外観、中庭から見る。夜景 photo©楠瀬友将

宮崎晃吉 / HAGISOによる、群馬の住宅「前橋の道の輪郭」。路地状の共有地などが見られる街区での計画。建築の時間と住み手の時間との折合いも主題とし、読み替えられながらも生き続ける存在を志向。路地の延長線上の“たまり”となる中庭の周りに諸室を配置する建築を考案外観、中庭から開口部越しにダイニングとキッチンを見る。夕景 photo©楠瀬友将

宮崎晃吉 / HAGISOによる、群馬の住宅「前橋の道の輪郭」。路地状の共有地などが見られる街区での計画。建築の時間と住み手の時間との折合いも主題とし、読み替えられながらも生き続ける存在を志向。路地の延長線上の“たまり”となる中庭の周りに諸室を配置する建築を考案「通り庭」より中庭を見る。夜景 photo©楠瀬友将

宮崎晃吉 / HAGISOによる、群馬の住宅「前橋の道の輪郭」。路地状の共有地などが見られる街区での計画。建築の時間と住み手の時間との折合いも主題とし、読み替えられながらも生き続ける存在を志向。路地の延長線上の“たまり”となる中庭の周りに諸室を配置する建築を考案外観、敷地内の南側より見る。夜景 photo©楠瀬友将

宮崎晃吉 / HAGISOによる、群馬の住宅「前橋の道の輪郭」。路地状の共有地などが見られる街区での計画。建築の時間と住み手の時間との折合いも主題とし、読み替えられながらも生き続ける存在を志向。路地の延長線上の“たまり”となる中庭の周りに諸室を配置する建築を考案外観、敷地内の南側より見る。夜景 photo©楠瀬友将

宮崎晃吉 / HAGISOによる、群馬の住宅「前橋の道の輪郭」。路地状の共有地などが見られる街区での計画。建築の時間と住み手の時間との折合いも主題とし、読み替えられながらも生き続ける存在を志向。路地の延長線上の“たまり”となる中庭の周りに諸室を配置する建築を考案1階平面図 image©HAGISO

宮崎晃吉 / HAGISOによる、群馬の住宅「前橋の道の輪郭」。路地状の共有地などが見られる街区での計画。建築の時間と住み手の時間との折合いも主題とし、読み替えられながらも生き続ける存在を志向。路地の延長線上の“たまり”となる中庭の周りに諸室を配置する建築を考案2階平面図 image©HAGISO

宮崎晃吉 / HAGISOによる、群馬の住宅「前橋の道の輪郭」。路地状の共有地などが見られる街区での計画。建築の時間と住み手の時間との折合いも主題とし、読み替えられながらも生き続ける存在を志向。路地の延長線上の“たまり”となる中庭の周りに諸室を配置する建築を考案矩計図 image©HAGISO
以下、建築家によるテキストです。
都市と家族を包むエンベロープ
群馬県前橋市の駅周辺に建つ住宅。
前橋駅と中心市街地は少し離れており、その間を駅前にしてはのんびりとした宅地が埋めている。グリッド街区に対して、住宅や事務所、たまに飲食店、と小ぶりな建築が並んでいる。
旗竿敷地がせめぎあい、街区の中心部は接道できない宅地も生まれてきており、それらは路地状の共有地によってそのアクセスが確保されていたりする。そんな街区の中の、旗竿形状ながら86坪のやや広めな敷地に住宅を設計することになった。
住宅において、建築そのものの時間とそこに住む人々の時間をどう折り合わせるかという課題は避けて通れない。一方で建築は人間よりも長く存続しうる存在であり、決して安価な消費財ではない。標準的に規定された家族像や「住むため“だけ”の機械」としての住宅が、時間を経るごとに想定と現実の間にギャップを生み出していく。
さらに相続による分割が進み、身の丈に合った住宅像が固定化し、住宅を住宅らしく作ることの閉塞感は住宅の短命化に拍車をかけている。
まずは、街区に潜む獣道のような共有地や路地の延長線上の「たまり」として中庭を位置づけた。この中庭を囲うように、北関東地域特有の冬季の季節風である「からっ風」から守る曲面をもつ壁を配置する。この壁の内側に身を寄せるように中庭と一体的になったアリーナや諸室が並んでいる。
季節に応じた光の入射角をふまえた庇は、立面を分割し建具が過大になるのを避けている。中庭に対して徐々に庇がおりていってすり鉢状となることで、街区の奥の中庭でも大きな空を感じることができる。
曲面壁の裏地としての内部仕上げはラワン合板の下見板張とし、書棚に並ぶ本や華奢な手すりとともに、無機質でシームレスな外観に対してスケールを落としている。
設計を進めていく中でも家族の形は変わっていく。当初は予期していなかった5人目の子供が生まれ、中学生の長男は反抗期を迎える。常に変化する住まい方に対して、それを受け入れる建築のおおらかな全体が都市の部分として定着してくれば、この住宅は読み替えられながらも生き続けていけるはずだ。
■建築概要
題名:前橋の道の輪郭
所在地:群馬県前橋市
主用途:住宅
意匠設計:HAGISO 担当/宮崎晃吉、久保田啓斗
構造設計:坂田涼太郎構造設計事務所 担当/坂田涼太郎、堀内拓磨
設備協力:ピロティ
施工:安松託建
構造:木造
階数:地上2階
敷地面積:186.56㎡
建築面積:103.21㎡
延床面積:171.43㎡
設計:2023年9月~2024年11月
工事:2024年12月~2025年9月
竣工:2025年9月
写真:楠瀬友将