久保秀朗+都島有美 / 久保都島建築設計事務所が設計した、東京・渋谷区の飲食店「阡寿」です。
会員制寿司店の内装計画です。建築家は、五感を研ぎ澄ませ料理を楽しむ体験を目指し、暗さによって視覚情報を減らし距離感をぼかした“水墨画のような”空間を考案しました。また、茶室の様な動線を用意し高揚感も生み出す事も意図されました。店舗の公式サイトはこちら。
表参道の賑やかなエリアから少し入り込んだ住宅街の中、カウンター6席、個室4席のみのプライベート性の高い会員制寿司店のインテリアデザインの依頼をうけた。
計画地は路地の行き止まりにひっそりと佇むビルの1階で、まわりを住宅に囲まれながらも全面がガラス張りとなっている。そこで、ガラス壁の奥にもう一つのファサードをつくり、ガラスの箱に閉じ込められた小さな茶室のような建物が路地から見えるようなデザインとすることにした。
五感を研ぎ澄まし、一貫ずつ丁寧に握られた寿司を愉しむため、室内は薄暗がりにして視覚からの情報を少なくし、足元からの光で空間の距離感を朦朧とぼかすことを試みた。仕上げについては、墨色をテーマに、室内に立てた壁を左官で仕上げ、淡墨色(うすずみいろ)から濃墨色(こずみいろ)に墨色が変化する、ぼかしを壁面に表現した。
店内に入ってすぐに待合のスペースと玉砂利の小さな庭を設け、寿司職人の立つカウンター席のある客室には、躙り口から茶室に入っていくような空間体験を用意した。白い玉砂利の庭から墨色でぼんやりと暗い空間に入る切り替わりが、食事の空間への高揚感を演出する仕掛けともなっている。
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以下、建築家によるテキストです。
表参道の賑やかなエリアから少し入り込んだ住宅街の中、カウンター6席、個室4席のみのプライベート性の高い会員制寿司店のインテリアデザインの依頼をうけた。
計画地は路地の行き止まりにひっそりと佇むビルの1階で、まわりを住宅に囲まれながらも全面がガラス張りとなっている。そこで、ガラス壁の奥にもう一つのファサードをつくり、ガラスの箱に閉じ込められた小さな茶室のような建物が路地から見えるようなデザインとすることにした。
五感を研ぎ澄まし、一貫ずつ丁寧に握られた寿司を愉しむため、室内は薄暗がりにして視覚からの情報を少なくし、足元からの光で空間の距離感を朦朧とぼかすことを試みた。仕上げについては、墨色をテーマに、室内に立てた壁を左官で仕上げ、淡墨色(うすずみいろ)から濃墨色(こずみいろ)に墨色が変化する、ぼかしを壁面に表現した。
店内に入ってすぐに待合のスペースと玉砂利の小さな庭を設け、寿司職人の立つカウンター席のある客室には、躙り口から茶室に入っていくような空間体験を用意した。白い玉砂利の庭から墨色でぼんやりと暗い空間に入る切り替わりが、食事の空間への高揚感を演出する仕掛けともなっている。
踏み石のある庭の奥の扉は個室への入口である。
専用のクローク、トイレを備え、他の客と顔を合わせることがないようになっている。
小さな店でありながらも、距離感の朦朧とした、水墨画のような抽象的かつ象徴的な空間となった。
■建築概要
施設名:阡寿(せんじゅ)
所在地:東京都渋谷区神宮前2丁目21番15号1F
用途:会員制寿司店
施主:株式会社阡寿
企画/キュレーション:トロン東京株式会社
設計監理:株式会社久保都島建築設計事務所
設備設計:有限会社ZO設計室
音楽監修:waltz
アート提供:株式会社タグボート(tagboat Inc.)
植栽、生花、盆栽監修:野の花 司
グラフィックデザイン:金井理明(株式会社金ノ井)
施工:有限会社鈴健
延床面積:61.7㎡
設計期間:2021年7月~2021年10月
工事期間:2021年11月~2022年6月
開業:2022年7月
撮影:ナカサアンドパートナーズ