SHARE 大坂崇徳+大坂美保子 / アーキラボ・ティアンドエムによる”千歳の中庭”
大坂崇徳+大坂美保子 / アーキラボ・ティアンドエムが設計した北海道千歳市の住宅”千歳の中庭”です。
以下、建築家によるテキストです。
北海道千歳市に整備中のニュータウン。農地を区画割してできたばかりの宅地で、建蔽率40%、雪捨て場としての空地確保のため外壁の後退距離の限度1mという規制の下、隣接する東西および南側の区画にも近い将来住宅が建つであろうことから三方の立面はほとんどが消えると予想された。外壁の後退距離制限で隣地分と合わせて境界に少なくとも2m、さらに建蔽率制限から生まれる空地は余白として十分にも思われるが、普段から遮るものが何もない広く続く空や大地がすぐそこにある環境において、それらは心許ない余地でしかなく、三方のファサードがどのように消えるかは想像の域を出ないため、消されたときにも影響を受けずに快適であることと、残す60%の敷地が最大限の用途を持った生活に寄り添う余白になるよう考慮し、中庭型平面を採用した。
敷地中心から南に向かって7.1×5.3mの中庭を残し、半階埋もれた水回りからスロープ動線、居間、畳階段、寝室と中庭に巻き付くようにレベルを変化させて配置、どこにいても中庭を介した向こうに家族を見通す距離と関係により、開放的で居心地のよい場所をつくることができた。また、外部を閉じ陽だまりの中庭に求心力を持たせながらも開口を適度に抑制し室の巻きつきと呼応させたことで、中庭やそこから繋がる外気、さらにその向こうにいる家族との関わり方を居場所や動きで多様に楽しめる構成になった。
水平に広がる景色の中の余白に意識を向け高さ方向のボリュームを平屋サイズに抑えたため冬は半分ほどが雪に埋もれ、閉じた外観とも相まって隣地に住宅が建ち並んでからも住宅街の中での谷のように、この住宅が近隣にとっての生活に寄り添う余白の一部になればと思う。
■建築概要
「千歳の中庭」
所在地:北海道千歳市
主要用途:専用住宅
敷地面積:213.3㎡
建築面積:85.2㎡
延床面積:103.8㎡
構造:木造
規模:地上2階
施工:丸繁 赤坂建築
竣工:2010年11月