


GROUPが設計した、東京・新宿区のアートスペース「新宿ホワイトハウスの庭」。様々な変遷を経た磯崎新による初めての建築物の外部空間をバー・カフェ・アートスペースのための庭に作り直しました。施設の場所はこちら。
60年以上の年月のなかで所有者が幾度も変わり、増改築を繰り返してきた「新宿ホワイトハウス」。
そもそもは美術家・吉村益信の住居件アトリエとして建設された住居であり、建築家・磯崎新による初めての建築物でもあった。
2021年、Chim↑Pomの卯城竜太、アーティストの涌井智仁、ナオ ナカムラの中村奈央が運営する会員制のアートスペース「WHITEHOUSE」として新たにオープンするにあたって、GROUPが改修を担当することになった。
改修内容は、建物と塀の間の幅1.5mほどの細長い外部空間を、バー・カフェ・アートスペースのための庭として作り直すことだった。建物を調査してみると、三間立方の吹抜けという磯崎のコンセプトに追従するように架構が最小限の部材でグリッド状に組まれていて開口部の脇に柱が通っていないなど、既存の構造体を過度に頼るのは難しい状況が判明した。
そこで私たちは、「状況に応じた自立性の調整」という方針を選択した。
開口部にはめ込んだ門型フレームにより構造的に独立したチケットカウンター。壁の中に内側から差し込んだ梁と、郵便ポストの角にぴたりと接する1本の柱で支え、住居の物干しも兼ねた半円屋根。同じく既存躯体とすれ違うかたちで壁内にフレームを挿入することで成立している真鍮エントランス扉。老朽化したブロック塀の鉄筋を補強する役割を持つ塀カウンター。既存の樹木によってその場に留まっている、建物と少しだけ距離を開けて浮かぶ床。外部空間を「庭」として運用していくための必要最低限の諸要素は、時に周囲を頼りながら、時に自立的に、既存環境に介入している。