


武田清明建築設計事務所が設計した、東京・練馬区の住宅「鶴岡邸」のレポートです。周辺環境の自然と対話する建築の在り方を躯体のもつ質感などで実現でしようとした設計となっています。
こちらはアーキテクチャーフォトによるレポートです
武田清明建築設計事務所が設計した、東京の住宅「鶴岡邸」が竣工した。
建物は2階建ての長屋であり、1階と2階では別世帯が入居する。屋上は共用の庭園として設計されている。
目の前が自然豊かな公園であり、道路を挟みその園内にある池に面する敷地にこの建築はたっている。建物は道路境界から若干の距離をとるような設計でありその間には植栽が配されている。同じ前面道路に立ち並ぶ他の住宅群が塀を建てたり、大きな生垣等でプライバシー確保に余念がない設計であること比較すると非常に開放的なつくりだと言える。時間が経ち植物が成長していくとまた違った表情を見せるとは思う。
建物を特徴づけているのは、地上から持ち上げられたヴォールトスラブである。内外を分けるガラス面がセットバックする設計がなされており、深い軒先をつくっていてそこに影が落ちる。幾何学的な形状が用いられていることも相まって、その外観は池の反対側からでも明確に認識されるほどの存在感を持ち得ている。正面ファサードの前に立ち建物を見上げてみると、2階外周部や屋上にも植栽が配置されており、建物全体が大きなプランターのようにも見える。この感想は植物が育つ頃にはよりその印象を強くするだろう。
建物1階に入ってみると、大きなガラス面いっぱいに公園と池の景色が取り込まれている。建具の足元には砕石が敷かれていたり、段差を解消するのに石が使われていたりする。そのようなデザインは、建具があるものの、建物の中と外を繋ぐ役割を果たしており、室内に外部を取り込むことに貢献しているように感じられた。
2階部分に移動してみると、ヴォールトスラブの張り出した部分が小さな庭としてデザインされていることが分かる。これによって二階でありながら地面とつながっているような感覚をもたらすと共に、スラブのエッジが前面道路を隠すことによって、建物内の植栽と公園の植栽が連続し、その緑と水辺を身近に感じさせてくれる。
屋上では、その効果はより顕著だった。全面に土が敷かれ緑化されており、その場で過ごすための居場所もあらかじめデザインされている。スラブの際まで土が入り込む設計がなされているため、まるで池のほとりにいるような感覚を味わうことができる。それほど隣地の水面が近くにあるように錯覚させるのである。
この場に身を置いてみることで、建築家がこの敷地だから享受できる自然環境を、如何に建物に連続させるかということに注力したことが実感として体の中に入ってくる。
さて、建物全体を見てきて改めて考えたいのは、この建築において特徴的なヴォールトスラブだから実現されたことは何だったのかという問いである。筆者が現地で武田と対話する中で出てきたキーワードに「ダムのような」というフレーズがあった。この言葉を聞いたときに、何かこの建築の核心に触れることができたような感覚があった。建築は当たり前であるが人工物である。しかしダムなどの土木スケールの構築物をみるときに、一般的な建築物とは異なる感覚を持つことがあることが思い出された。山間部にあり山々の自然と対話するような構築物の存在である。
思い返せば90年代に一世を風靡した、ミニマリズムの代表的建築家ジョン・ポーソンの著書『Minimum』の中にも、デザインインスピレーションを掻き立てられる存在としてダムの写真が紹介されている。
武田は、敷地周辺の自然と建築を調和させるという視点に立った時に、実際に敷地内に植栽を配置するといった方法に加え、別の視点として土木構築物のもつ感覚を建築に与えるという方法を重ねることで、建築物自体をも自然と繋がりを持たせようとしたのではないだろうか。
10年後、20年後に植栽が育ち、ヴォールトスラブが経年変化した姿を想像する。その姿こそ武田が構想し理想とする建築の完成形なのかもしれない。













