東京大学生産技術研究所今井公太郎研究室が設計と施工を手掛けた、移動式シェルター「PENTA-HARD」です。
3Dプリントのアルミ製仕口を用いた建築です。建築家は、安価・軽量・自由を目標とし、専門性と情報量が集中する仕口を個別の形が作れる3Dプリントに置換して特殊技術から解放しました。また、その他部材は標準化し互換性と簡易性も実現しました。
3Dプリントによる仕口(ジョイント)を用いた実験的なセルフビルト建築の初号機である。
自分たちで容易に組み立てられる安価で軽量な移動式シェルターであり、ノマディックで自由なライフスタイルを将来実現することを目標にしている。
最大の特長は、仕口が3Dプリントにより製造されることで、全体的に変化や動きを感じさせる柔らかい形態の空間ができることである。ひとつひとつの仕口の形状をすべて変えられるため、仕口に取り付けられた部材はそこからさまざまな角度に伸びることが可能になるからである。
3Dプリント建築とこれまでの建築との最大の違いは、設計者が同時に製造者になることであり、さらに製造と施工の専門性と情報量は仕口に集中するので、その部分を3Dプリントに置換することでそれらの専門性から解放される点である。
3Dプリントの導入は、建築の特定の部分に高い自由度を与えることを技術的に可能にする。建築形態の複雑性を部分に集約することで,その他を単純化して全体としては秩序づけられた互換性を獲得できる。
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ジョイント部分
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施工中の様子
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以下、建築家によるテキストです。
建築の複雑性を仕口に集約する
3Dプリントによる仕口(ジョイント)を用いた実験的なセルフビルト建築の初号機である。
自分たちで容易に組み立てられる安価で軽量な移動式シェルターであり、ノマディックで自由なライフスタイルを将来実現することを目標にしている。
最大の特長は、仕口が3Dプリントにより製造されることで、全体的に変化や動きを感じさせる柔らかい形態の空間ができることである。ひとつひとつの仕口の形状をすべて変えられるため、仕口に取り付けられた部材はそこからさまざまな角度に伸びることが可能になるからである。
仕口以外の部材、すなわち3Dプリント仕口が繋ぐアルミパイプはすべて同じ長さで標準化し、外壁パネルも同様にすべて同じ大きさの正三角形とし、真壁の位置に乾式で規格的に取り付ける。
このために開発した幾何学システム(特開:2020-66951)は、正四面体を主体とするリジッドな立体フレームに、同じ部材長の四角錐(PENTA-hedron)や五角錐など側面同士の角度を操作することで変形が可能な立体フレームを混ぜ合わせたものである。
いずれの立体フレームも正三角形の面が主であるため、構造的には立体トラスに近いものになり、適度に強くかつフレキシブルなフレーム,いわば丸くないジオデシックドーム(フラードーム)が実現できる。
重機を用いずに人力で組み立てられるよう、フレームの各辺は2等分した軽量のアルミパイプとし、外壁パネルも各面で4等分している。その素材はアルミと、同様に軽量の透明もしくは半透明のポリカーボネートを組み合わせて構成している。
3Dプリント建築とこれまでの建築との最大の違いは、設計者が同時に製造者になることであり、さらに製造と施工の専門性と情報量は仕口に集中するので、その部分を3Dプリントに置換することでそれらの専門性から解放される点である。
3Dプリントの導入は、建築の特定の部分に高い自由度を与えることを技術的に可能にする。建築形態の複雑性を部分に集約することで,その他を単純化して全体としては秩序づけられた互換性を獲得できる。
建築を安価にする目的で始まったプロジェクトであるが、結果的には,秩序と自由,設計と製造・施工の境界線を横断する試みになった。
■建築概要
作品名:PENTA-HARD
所在地:東京大学柏キャンパス(オープンキャンパス会場、会期後1か月ほどで撤去)、その後、東京大学駒場リサーチキャンパス等の3か所に設置
建築主:ゼンショーホールディングス
建築設計:東京大学生産技術研究所 今井公太郎研究室 担当/今井公太郎 伊東優 国枝歓 山口大翔
共同研究:ゼンショーホールディングスグループ建設本部
構造:東京大学大学院新領域創成科学研究科社会文化環境学専攻 担当/佐藤淳
東京大学大学院工学系研究科建築学専攻 担当/福島佳浩(Graph Studio)
外壁:旭ビルウォール 担当/近藤悦生 和久井智 山下敏郎 七井篤史
建築施工:東京大学生産技術研究所 今井公太郎研究室 担当/今井公太郎 伊東優 国枝歓 山口大翔 菅野成一
協力/田端祥太 石垣輝海 伊藤圭祐
プロトタイプ製作協力:東京大学生産技術研究所 試作工場 担当/板倉善宏 涌井勇輔
主な使用機器:3Dプリントジョイント出力装置 EOS M290(金属粉末 AlSi10M)(有我工業所,プロトタイプは今井公太郎研究室)
構造:主体構造 アルミニウム構造(3Dプリント)、杭・基礎 移動式スチール製基礎フレーム
建築面積:35.01m2
延床面積:25.57m2
階数:1階
最高高:3,219mm
天井高:2,250〜3,120mm
主なスパン:3,300mm(頂点間距離) 2,522〜3,957mm(接地点間距離)
設計期間:2019年8月〜2021年3月
施工期間:2021年4月(3日間)
竣工年月:2022年5月
撮影:新建築社、鈴木豊
動画:Sam King
東京大学駒場リサーチキャンパスに設置された際の写真
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