
SHARE 【ap編集長の建築探索】vol.16 若手建築家9組「第2回 発掘展」

「ap編集長の建築探索」は、23年の歴史ある建築ウェブメディア「アーキテクチャーフォト」の編集長である後藤連平が、訪問した建築を紹介する連載シリーズです。論考のようなかっちりとした形式ではなく、現地で感じた雰囲気や空気感が伝わるような“ライブ感”のある文体で綴ります。読者の皆様も自身が建築を体験するように読んでいただければ幸いです。
若手建築家9組「第2回 発掘展」
渋谷で行われている若手建築家のグループ展「発掘展」を拝見した。
(会期は2026/4/30まで)
出展者は、林恭正、中島成隆、一色暁生、小林佑輔、野村亮介、立石遼太郎、福田俊、渡邉明弘、五十嵐理人の9名の建築家。
この連載コーナーを読んでくださっている読者の方々は、何らかのSNSで、彼らの活動を目にしたことがあるのではないだろうか。
この展示は、主催者である、渡邉さん、五十嵐さん、アラウンドアーキテクチャーの佐竹さんが、SNSなどでその活動を知った建築家にDM等でオファーを出して実現したのだという。
先週は、神楽坂で、坂牛卓さんとその教え子の建築家たちによる「卓袱会建築展」が行われていたりと自主企画の展覧会が続いているなと思っていた。(残念ながらこちらはタイミングが合わず伺うことができなかった)
そんなこともあり、このような自主企画で行われる建築展とはどのようなものなのだろうかと、現地を伺う前から考えていた。
「発掘展」は、渋谷にあるコミュニティセンターの中のスペースを会場としていて、場のセレクトも面白い。駅からも近く、また様々な人々が別の目的でも訪問する場所であり、建築業界だけに向けた展示ではない趣旨も伝わってくる。
展示物は、パネルと模型という建築展としてはオーソドックスなつくり。各自其々の個性を活かしたパネルが展示されているけれど、中身には、フォーマットがあり、そこに各自の経歴や好きな建築家などの情報も含まれており、各建築家の背景を想像するのも楽しい。
会場を巡りながら、この出展メンバーに何か共通点はあるのだろうかと考えていた。こうやって集まってひとつの展示が成立している背景には、共通する建築に対する考えやスタンスがあるのではないかと。
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ちょうど会場にいた、渡邉さんや五十嵐さんとも話している中での気づきなのだけど、この9名の建築家に共通するのは、作品の方向性というより、メディアとの距離感の取り方や、メディアに対するスタンスなのではないかと思った。
思い返すと、皆さんそれぞれが、Instagramで発信を行なっているし、紙の媒体のみならず積ウェブメディアなどにも作品が掲載されるなど、積極的な発信をしていることに気づく。
ふと自身の生業でもある建築メディアと建築家の関係を思い返すと、現代ほど多様なメディアが存在して、また、これほど発表先の選択肢の多い時代もないのではないかと思う。
紙の媒体しかなかった時代には(もちろん様々な雑誌は存在していたけれど)、そこに如何にピックアップされるかが勝負だったと思うのだけれど、いまやSNSを使えば自身で発信も出来る。そして、世界中に建築メディアが存在していて、アプローチする先も無数にある時代。
そんな選択肢が無数にある時代だからこそ、現代は、建築家のメディアとの向き合い方にも個性が宿る時代になっているとも言えるのではないだろうか。
紙媒体でしか絶対に作品を発表しない建築家。紙でもウェブでも分け隔てなく発表する建築家。紙媒体とウェブ媒体とで、発表する作品を分ける建築家。ウェブは海外のサイトにしか出さない建築家。などなど、様々なスタンスで現代の建築家はメディアと付き合っていると思う。(もちろんどれが良いとかの話ではないです。念のため)
発掘展の9人のメンバーのことを考えると、メディアの使い方、メディアとの付き合い方に共通点があるのではないかと思った。
メディアとの距離感が多様で、建築家自身もそのスタンスに意識的でなければいけない時代であるが故に、その姿勢や思想を通して共感する仲間を見つけられたり、同志としての意識を育めるのではないかと思った。
そして、そのような仲間を見つけられるということは素晴らしいことだとも思った。
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また、そんなことを考えていると、僕自身が、設計事務所での実務から離れて、建築メディアを生業とし始めた時代の頃の気づきも思い出した。
それは、独立して、自身の事業を起こして商売をするということは、まるでドラクエの仲間探しのようなものだ。という感覚。
いろいろな人と出会う中で、自身に共感してくれる人、また助けてくれる人を探して、一人づつ増やしていく。
そうして出会った仲間が、仕事をくれたり、また時には協同したりして、徐々に繋がりが増えていき、ネットワークが広がっていく。僕自身、そうやってなんだかんだでここまでやってこれたという感覚がある。
発掘展は、僕自身も行ってきた「仲間探し」を展覧会というフォーマットを借りて行っているとも言えるのではないか。
そう考えると、さらに共感したし応援したい気持ちも高まった、、、!
9名の建築家の皆さん、佐竹さん、展覧会の開催おめでとう御座います、、、!!!
(訪問日:2026年4月25日)
後藤連平(ごとう れんぺい)
アーキテクチャーフォト編集長
1979年、静岡県磐田市生まれ。2002年京都工芸繊維大学卒業、2004年同大学大学院修了。組織設計事務所と小規模設計事務所で実務を経験した後に、アーキテクチャーフォト株式会社を設立。23年にわたり建築情報の発信を続けており、現在は、建築と社会の関係を視覚化するウェブメディア「アーキテクチャーフォト」の運営をメインに活動。著書に『建築家のためのウェブ発信講義』(学芸出版社)など。


