



坂牛卓+中川宏文 / D.A.が設計した、山梨・富士吉田市の「富士山ジビエセンター DEAR DEER」です。
野生鹿の処理加工と加工品の販売を行う施設です。建築家は、両者機能の共存を求め、処理加工機能を収めた切妻の量塊の周りにランドスケープと店舗に繋がる“裳階”を配する建築を考案しました。また、見学窓や展示などでジビエ文化の教育も担うことも意図されています。施設の場所はこちら(Google Map)。
このような処理加工施設は、嫌悪施設として市街地から離れた場所に設置されていることが多く、環境保全や持続可能な社会のあり方を考える上でとても重要な施設であるにもかかわらず、一般の人たちが親しみにくい場所にある。
しかし、本施設は年間200万人が訪れる道の駅エリアに隣接したカラマツ林の一角を敷地とし、処理加工機能だけでなく、ジビエ加工品の販売を通した集客機能や、地産地消やジビエ文化、命の大切さについて考えるきっかけとなるような教育機能が求められた。
前述した社会的背景や地理的要因から、処理加工施設と集客・教育施設の相反する機能を敷地の中にどのよう共存させるかが重要な課題であった。
そこで、処理加工所の長細いボリュームは、接道に沿うように配置することによって個体の搬入から加工までをスムーズに行えるよう機能的に計画した。
集客・教育機能を担う店舗、展示、サイン、見学窓部分などのアプローチ部分はカラマツ林側に配置し、建築とカラマツ林に囲まれたランドスケープをつくることによって、この場所を訪れた人々が自然の中でゆっくりと過ごせる場所を計画した。
建物は加工室や保管室が機能的におさめられた切妻大屋根のボリュームと、加工食品などを販売する集客(教育)機能がおさめられた木造+鉄骨造の軽やかな裳階の2つで構成されている。
裳階は、平面トラスと鉄骨柱の架構によってリズムを生み出し、訪れた人々を建物奥の店舗スペースへと導く。加えて軒高を低く抑えて建築全体の重心を下げ、デッキテラスや芝生広場への連続性を高めている。
切妻大屋根がつくる水平性と周辺の木立の垂直性、優雅な曲線を描く裳階とランドスケープの有機的なかたちは、この場所に、人、建築、ランドスケープ、自然の調和した風景を生み出している。

















