



竹山聖 / 設計組織アモルフが設計した、埼玉・さいたま市の「双恵幼稚園」です。
“子供が世界に触れる場所”として構想された施設です。建築家は、思い掛けない出会いの創出も意図し、保育室群の中心に“外と内の二つの中庭”を配置する構成を考案しました。また、子供達の可能性の拡大を願って宇宙を感じる要素も散りばめられました。
幼稚園は子供が世界に触れる場所だ。
この世の中には家族や自分以外の人々が生きていて、一緒に何かをするためにはルールがあって、でもそんな約束事に則って一緒に何かを達成したら、自分一人でやるよりはるかに大きな喜びがある。自身の可能性もまた広がる。そんなこんなをそれなりに幼な心に刻みつけながら、別の誰かと一緒にいることの戸惑いと喜びのなかに、出会いと出来事のステージを見出していけるような場所、それが幼稚園だ。
幼稚園は教育施設である、そのようなイメージを大切に考えてほしい、と園長夫妻から最初に要望を受けた。このことを受けて、保育室の配置はグリッド上に規則的に配列された柱による秩序を基本とすることにした。
それら保育室群の中心にアトリウム(内の中庭)および天空のテラスと大地のテラス(外の中庭)を配して、思いがけない出会いがもたらされる場が生まれることを期待した。楕円形の吹き抜けには階段が置かれて、これはみごとに上と下の視線が交錯する立体的な出会いの場となってくれたと思う。アトリウムの天井には、さまざまな思考と試行の果てに、北極星の方向に向かう天窓が置かれることになった。
グリッドからやや逸脱する形をもつ遊戯室にはグレースホールという名称があらかじめ与えられていて、十字架の位置や天井の高さ、光の入り方などに配慮を重ねながら、子供たちの未来の記憶に残る空間ができたのではないかと考えている。遊戯室空間の矩形のボリュームを切り取るように南西側に大きく開かれた高窓には、旧園舎にあって卒園生たちの記憶に残っているというステンドグラスを、そのスケールを拡大してより光の印象を強めるようにデザインしCosmological Garden(宇宙の庭)と命名した。
すでに気づかれているように、この幼稚園の空間構成や部位の形にはその端々に宇宙のメタフォアが用いられている。
これは出会いの場の形として構想された外と内の二つの中庭に、やや角度をずらした二つの楕円形を配したことにはじまっている。双恵はDouble Graceの訳語であり、この二つの慈愛の心を二つの楕円で表象してみたらどうかと考えたからなのだが、楕円は惑星軌道を想起させ、そうか、幼稚園が世界と出会う場所であるなら、宇宙に思いを馳せる場所であってもいいわけだ。世界と出会い、宇宙という大自然の秩序の存在に触れることによって、子供たちの未来はより豊かなものになるのではないか、その時は気づかなくても、あとになって振り返って、人生の折々にその可能性を広げる契機を与えてくれるようになるのではないか。そんな祈りのような気持ちをこめて、幼稚園空間のあちこちに宇宙の物語を感じさせるエレメントを散りばめることにした。











