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2026.6.08Mon
2026.6.07Sun
矢板建築設計研究所による、長野・北佐久郡の「大きな屋根の家」。南東向きの明るい斜面地での計画。設計者が重視する“場所感”の思考に基づき、大屋根の下に大開口を備えたリビングをバルコニーで囲う構成を考案。愛を伴う“場所感”は自我のなす作為が消え去った時にのみ現れる
photo©小川重雄

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architecture|feature
小島大輔構造設計事務所島津設計建築工房・市川矢板久明矢板建築設計研究所矢板直子建材(外装・床)建材(外装・壁)建材(外装・屋根)建材(内装・床)建材(内装・壁)建材(内装・天井)建材(内装・建具)建材(内装・キッチン)建材(内装・造作家具)建材(内装・その他)建材(外構・壁)建材(外構・その他)住宅図面あり長野小川重雄
矢板建築設計研究所による、長野・北佐久郡の「大きな屋根の家」。南東向きの明るい斜面地での計画。設計者が重視する“場所感”の思考に基づき、大屋根の下に大開口を備えたリビングをバルコニーで囲う構成を考案。愛を伴う“場所感”は自我のなす作為が消え去った時にのみ現れる外観、南側の道路より見る。(建築家による解説:屋根は斜面に沿って架けられる) photo©小川重雄
矢板建築設計研究所による、長野・北佐久郡の「大きな屋根の家」。南東向きの明るい斜面地での計画。設計者が重視する“場所感”の思考に基づき、大屋根の下に大開口を備えたリビングをバルコニーで囲う構成を考案。愛を伴う“場所感”は自我のなす作為が消え去った時にのみ現れる外観、東側の道路より見る。(建築家による解説:南北に長い大きな屋根が架けられる) photo©小川重雄
矢板建築設計研究所による、長野・北佐久郡の「大きな屋根の家」。南東向きの明るい斜面地での計画。設計者が重視する“場所感”の思考に基づき、大屋根の下に大開口を備えたリビングをバルコニーで囲う構成を考案。愛を伴う“場所感”は自我のなす作為が消え去った時にのみ現れる2階、階段側からダイニングとリビングを見る。(建築家による解説:階段を上りきると外部環境の一部となった空間が広がる) photo©小川重雄
矢板建築設計研究所による、長野・北佐久郡の「大きな屋根の家」。南東向きの明るい斜面地での計画。設計者が重視する“場所感”の思考に基づき、大屋根の下に大開口を備えたリビングをバルコニーで囲う構成を考案。愛を伴う“場所感”は自我のなす作為が消え去った時にのみ現れる2階、リビングからバルコニー越しに外部を見る。(建築家による解説:ダイニングからリビングをL型にバルコニーが囲む) photo©小川重雄

矢板久明+矢板直子 / 矢板建築設計研究所が設計した、長野・北佐久郡の「大きな屋根の家」です。
南東向きの明るい斜面地での計画です。建築家は、自身が重視する“場所感”の思考に基づき、大屋根の下に大開口を備えたリビングをバルコニーで囲う構成を考案しました。また、愛を伴う“場所感”は自我のなす作為が消え去った時にのみ現れます。

軽井沢へ移住する小さなお子さんのいる家族のための住宅である。土地探しの末、南東向きの明るい30度ほどの斜面地を敷地とした。

その斜面に沿って大きな屋根を架け、アプローチとなる南側には、人を迎えるように屋根と3m張り出したバルコニーを設け、これを谷側にも折り返し、リビングを囲う様にL字に巡らせた。
そして内部と外部をつなげるよう、南に2m、谷側に7mの大開口を設け、窓をすべて引き込むと、リビングと一体となった主空間が立ち現れる様にした。

建築家によるテキストより

バルコニーには囲われ感のある手摺壁を設えたので、適度な「場所感」を得た。この手摺壁により、9m下の道路レベルに建つ家々は視界から隠れ、視線は森から空へと抜けていく。そして30cm幅の手摺笠木は机にもなり、低く抑えた手摺壁ではあるが十分な安心感を得たように思う。
このバルコニーまで連続した主空間は、平面は2倍正方形、高さは3対4の矩形からなる立方体の領域として、全体の比例秩序の中に挿入され、特別な場所として山の斜面に浮かび上がった。

この南へ張り出したバルコニーは、山側では屋根を支える壁梁で吊り、谷側では黒く塗られた鉄の方杖で支えている。南北に架けられた壁梁は、構造体であると同時に、山側では玄関や本棚、キッチンといった暮らしを支える場を囲い、リビングと緩やかに仕切っている。階段を登りこの壁梁を潜ると、一気に視界はひらけ、バルコニーと一体となった主空間が立ち現れる。

建築家によるテキストより

ここで私は敢えて「場所感」という言葉を使った。場所の定義は、プラトンのコーラやアリストテレスのトポスとして、古代より数多く語られてきたが、難解な哲学的議論でもあった。しかし、私にとっての場所とは、どこに想いが宿っているかという極めて個人的な感覚によって捉えている。
そこには 「豊かに暮らしてほしい」という願いが込められ、作り手の心が滲み出ていることが大切であり、そのような場所を「場所感」のあるところと述べた。

建築家によるテキストより

以下の写真はクリックで拡大します

矢板建築設計研究所による、長野・北佐久郡の「大きな屋根の家」。南東向きの明るい斜面地での計画。設計者が重視する“場所感”の思考に基づき、大屋根の下に大開口を備えたリビングをバルコニーで囲う構成を考案。愛を伴う“場所感”は自我のなす作為が消え去った時にのみ現れる外観、東側の道路より見る。 photo©小川重雄
矢板建築設計研究所による、長野・北佐久郡の「大きな屋根の家」。南東向きの明るい斜面地での計画。設計者が重視する“場所感”の思考に基づき、大屋根の下に大開口を備えたリビングをバルコニーで囲う構成を考案。愛を伴う“場所感”は自我のなす作為が消え去った時にのみ現れる外観、東側の道路より見る。(建築家による解説:南北に長い大きな屋根が架けられる) photo©小川重雄
矢板建築設計研究所による、長野・北佐久郡の「大きな屋根の家」。南東向きの明るい斜面地での計画。設計者が重視する“場所感”の思考に基づき、大屋根の下に大開口を備えたリビングをバルコニーで囲う構成を考案。愛を伴う“場所感”は自我のなす作為が消え去った時にのみ現れる外観、東側の道路より見る。(建築家による解説:バルコニーは東にL型に連続する) photo©小川重雄
矢板建築設計研究所による、長野・北佐久郡の「大きな屋根の家」。南東向きの明るい斜面地での計画。設計者が重視する“場所感”の思考に基づき、大屋根の下に大開口を備えたリビングをバルコニーで囲う構成を考案。愛を伴う“場所感”は自我のなす作為が消え去った時にのみ現れる外観、南側の道路より見る。(建築家による解説:玄関と3m張り出した庇とバルコニーを見る) photo©小川重雄
矢板建築設計研究所による、長野・北佐久郡の「大きな屋根の家」。南東向きの明るい斜面地での計画。設計者が重視する“場所感”の思考に基づき、大屋根の下に大開口を備えたリビングをバルコニーで囲う構成を考案。愛を伴う“場所感”は自我のなす作為が消え去った時にのみ現れる外観、敷地内の道路より見る。(建築家による解説:外壁カラマツ下見張り) photo©小川重雄
矢板建築設計研究所による、長野・北佐久郡の「大きな屋根の家」。南東向きの明るい斜面地での計画。設計者が重視する“場所感”の思考に基づき、大屋根の下に大開口を備えたリビングをバルコニーで囲う構成を考案。愛を伴う“場所感”は自我のなす作為が消え去った時にのみ現れる外観、南側の道路より見る。(建築家による解説:屋根は斜面に沿って架けられる) photo©小川重雄
矢板建築設計研究所による、長野・北佐久郡の「大きな屋根の家」。南東向きの明るい斜面地での計画。設計者が重視する“場所感”の思考に基づき、大屋根の下に大開口を備えたリビングをバルコニーで囲う構成を考案。愛を伴う“場所感”は自我のなす作為が消え去った時にのみ現れる1階、エントランス(建築家による解説:1階より700mm低いレベルにある) photo©小川重雄
矢板建築設計研究所による、長野・北佐久郡の「大きな屋根の家」。南東向きの明るい斜面地での計画。設計者が重視する“場所感”の思考に基づき、大屋根の下に大開口を備えたリビングをバルコニーで囲う構成を考案。愛を伴う“場所感”は自我のなす作為が消え去った時にのみ現れる1階から2階への階段(建築家による解説:2階まで続く本棚に沿って上る) photo©小川重雄
矢板建築設計研究所による、長野・北佐久郡の「大きな屋根の家」。南東向きの明るい斜面地での計画。設計者が重視する“場所感”の思考に基づき、大屋根の下に大開口を備えたリビングをバルコニーで囲う構成を考案。愛を伴う“場所感”は自我のなす作為が消え去った時にのみ現れる2階、左:1階への階段、右手前:リビング、右奥:ダイニング(建築家による解説:飛梁りはキッチンまで連続して空間を支える) photo©小川重雄
矢板建築設計研究所による、長野・北佐久郡の「大きな屋根の家」。南東向きの明るい斜面地での計画。設計者が重視する“場所感”の思考に基づき、大屋根の下に大開口を備えたリビングをバルコニーで囲う構成を考案。愛を伴う“場所感”は自我のなす作為が消え去った時にのみ現れる2階、階段側からダイニングとリビングを見る。(建築家による解説:階段を上りきると外部環境の一部となった空間が広がる) photo©小川重雄
矢板建築設計研究所による、長野・北佐久郡の「大きな屋根の家」。南東向きの明るい斜面地での計画。設計者が重視する“場所感”の思考に基づき、大屋根の下に大開口を備えたリビングをバルコニーで囲う構成を考案。愛を伴う“場所感”は自我のなす作為が消え去った時にのみ現れる2階、リビングからバルコニー越しに外部を見る。(建築家による解説:リビングダイニング の7mの窓、右に見える2m窓は全て開放される) photo©小川重雄
矢板建築設計研究所による、長野・北佐久郡の「大きな屋根の家」。南東向きの明るい斜面地での計画。設計者が重視する“場所感”の思考に基づき、大屋根の下に大開口を備えたリビングをバルコニーで囲う構成を考案。愛を伴う“場所感”は自我のなす作為が消え去った時にのみ現れる2階、左手前:ダイニング、右奥:リビング(建築家による解説:大きな屋根の下にバルコニーまで繋がる一体の空間) photo©小川重雄
矢板建築設計研究所による、長野・北佐久郡の「大きな屋根の家」。南東向きの明るい斜面地での計画。設計者が重視する“場所感”の思考に基づき、大屋根の下に大開口を備えたリビングをバルコニーで囲う構成を考案。愛を伴う“場所感”は自我のなす作為が消え去った時にのみ現れる2階、左:ダイニング、中央奥:リビング、右:キッチン(建築家による解説:ダイングからバルコニーまで一体の空間となる) photo©小川重雄
矢板建築設計研究所による、長野・北佐久郡の「大きな屋根の家」。南東向きの明るい斜面地での計画。設計者が重視する“場所感”の思考に基づき、大屋根の下に大開口を備えたリビングをバルコニーで囲う構成を考案。愛を伴う“場所感”は自我のなす作為が消え去った時にのみ現れる2階、リビングからバルコニー越しに外部を見る。(建築家による解説:ダイニングからリビングをL型にバルコニーが囲む) photo©小川重雄
矢板建築設計研究所による、長野・北佐久郡の「大きな屋根の家」。南東向きの明るい斜面地での計画。設計者が重視する“場所感”の思考に基づき、大屋根の下に大開口を備えたリビングをバルコニーで囲う構成を考案。愛を伴う“場所感”は自我のなす作為が消え去った時にのみ現れる2階、東側バルコニーから外部を見る。 photo©小川重雄
矢板建築設計研究所による、長野・北佐久郡の「大きな屋根の家」。南東向きの明るい斜面地での計画。設計者が重視する“場所感”の思考に基づき、大屋根の下に大開口を備えたリビングをバルコニーで囲う構成を考案。愛を伴う“場所感”は自我のなす作為が消え去った時にのみ現れる2階、リビング、梁と開口部の詳細(建築家による解説:飛梁は屋根を支えバルコニーを吊る) photo©小川重雄
矢板建築設計研究所による、長野・北佐久郡の「大きな屋根の家」。南東向きの明るい斜面地での計画。設計者が重視する“場所感”の思考に基づき、大屋根の下に大開口を備えたリビングをバルコニーで囲う構成を考案。愛を伴う“場所感”は自我のなす作為が消え去った時にのみ現れる2階、バルコニー(建築家による解説:南に3m張り出している) photo©小川重雄
矢板建築設計研究所による、長野・北佐久郡の「大きな屋根の家」。南東向きの明るい斜面地での計画。設計者が重視する“場所感”の思考に基づき、大屋根の下に大開口を備えたリビングをバルコニーで囲う構成を考案。愛を伴う“場所感”は自我のなす作為が消え去った時にのみ現れる2階、バルコニー(建築家による解説:南のバルコニーはオープンリビングとなる) photo©小川重雄
矢板建築設計研究所による、長野・北佐久郡の「大きな屋根の家」。南東向きの明るい斜面地での計画。設計者が重視する“場所感”の思考に基づき、大屋根の下に大開口を備えたリビングをバルコニーで囲う構成を考案。愛を伴う“場所感”は自我のなす作為が消え去った時にのみ現れる2階、リビングから階段側とキッチンを見る。(建築家による解説:本棚は可動梯子が用意されている) photo©小川重雄
矢板建築設計研究所による、長野・北佐久郡の「大きな屋根の家」。南東向きの明るい斜面地での計画。設計者が重視する“場所感”の思考に基づき、大屋根の下に大開口を備えたリビングをバルコニーで囲う構成を考案。愛を伴う“場所感”は自我のなす作為が消え去った時にのみ現れる2階、キッチンから書斎側を見る。(建築家による解説:奥は夫人の書斎) photo©小川重雄
矢板建築設計研究所による、長野・北佐久郡の「大きな屋根の家」。南東向きの明るい斜面地での計画。設計者が重視する“場所感”の思考に基づき、大屋根の下に大開口を備えたリビングをバルコニーで囲う構成を考案。愛を伴う“場所感”は自我のなす作為が消え去った時にのみ現れる1階、客間 photo©小川重雄
矢板建築設計研究所による、長野・北佐久郡の「大きな屋根の家」。南東向きの明るい斜面地での計画。設計者が重視する“場所感”の思考に基づき、大屋根の下に大開口を備えたリビングをバルコニーで囲う構成を考案。愛を伴う“場所感”は自我のなす作為が消え去った時にのみ現れる外観、東側の道路より見る。夜景(建築家による解説:大きな屋根が敷地の家族の場所を創り出す) photo©小川重雄
矢板建築設計研究所による、長野・北佐久郡の「大きな屋根の家」。南東向きの明るい斜面地での計画。設計者が重視する“場所感”の思考に基づき、大屋根の下に大開口を備えたリビングをバルコニーで囲う構成を考案。愛を伴う“場所感”は自我のなす作為が消え去った時にのみ現れる外観、南東側の交差点より見る。夜景(建築家による解説:帳が落ち、屋根の下に家族の生活の光が灯る) photo©小川重雄
矢板建築設計研究所による、長野・北佐久郡の「大きな屋根の家」。南東向きの明るい斜面地での計画。設計者が重視する“場所感”の思考に基づき、大屋根の下に大開口を備えたリビングをバルコニーで囲う構成を考案。愛を伴う“場所感”は自我のなす作為が消え去った時にのみ現れる配置図 image©矢板建築設計研究所
矢板建築設計研究所による、長野・北佐久郡の「大きな屋根の家」。南東向きの明るい斜面地での計画。設計者が重視する“場所感”の思考に基づき、大屋根の下に大開口を備えたリビングをバルコニーで囲う構成を考案。愛を伴う“場所感”は自我のなす作為が消え去った時にのみ現れる1階平面図 image©矢板建築設計研究所
矢板建築設計研究所による、長野・北佐久郡の「大きな屋根の家」。南東向きの明るい斜面地での計画。設計者が重視する“場所感”の思考に基づき、大屋根の下に大開口を備えたリビングをバルコニーで囲う構成を考案。愛を伴う“場所感”は自我のなす作為が消え去った時にのみ現れる2階平面図 image©矢板建築設計研究所
矢板建築設計研究所による、長野・北佐久郡の「大きな屋根の家」。南東向きの明るい斜面地での計画。設計者が重視する“場所感”の思考に基づき、大屋根の下に大開口を備えたリビングをバルコニーで囲う構成を考案。愛を伴う“場所感”は自我のなす作為が消え去った時にのみ現れる南側立面図 image©矢板建築設計研究所
矢板建築設計研究所による、長野・北佐久郡の「大きな屋根の家」。南東向きの明るい斜面地での計画。設計者が重視する“場所感”の思考に基づき、大屋根の下に大開口を備えたリビングをバルコニーで囲う構成を考案。愛を伴う“場所感”は自我のなす作為が消え去った時にのみ現れる東側立面図 image©矢板建築設計研究所
矢板建築設計研究所による、長野・北佐久郡の「大きな屋根の家」。南東向きの明るい斜面地での計画。設計者が重視する“場所感”の思考に基づき、大屋根の下に大開口を備えたリビングをバルコニーで囲う構成を考案。愛を伴う“場所感”は自我のなす作為が消え去った時にのみ現れる断面図 image©矢板建築設計研究所
矢板建築設計研究所による、長野・北佐久郡の「大きな屋根の家」。南東向きの明るい斜面地での計画。設計者が重視する“場所感”の思考に基づき、大屋根の下に大開口を備えたリビングをバルコニーで囲う構成を考案。愛を伴う“場所感”は自我のなす作為が消え去った時にのみ現れる断面図 image©矢板建築設計研究所
矢板建築設計研究所による、長野・北佐久郡の「大きな屋根の家」。南東向きの明るい斜面地での計画。設計者が重視する“場所感”の思考に基づき、大屋根の下に大開口を備えたリビングをバルコニーで囲う構成を考案。愛を伴う“場所感”は自我のなす作為が消え去った時にのみ現れるプロポーション図 image©矢板建築設計研究所

以下、建築家によるテキストです。


「場所感」の生まれる時

軽井沢へ移住する小さなお子さんのいる家族のための住宅である。土地探しの末、南東向きの明るい30度ほどの斜面地を敷地とした。

その斜面に沿って大きな屋根を架け、アプローチとなる南側には、人を迎えるように屋根と3m張り出したバルコニーを設け、これを谷側にも折り返し、リビングを囲う様にL字に巡らせた。
そして内部と外部をつなげるよう、南に2m、谷側に7mの大開口を設け、窓をすべて引き込むと、リビングと一体となった主空間が立ち現れる様にした。


バルコニーには囲われ感のある手摺壁を設えたので、適度な「場所感」を得た。この手摺壁により、9m下の道路レベルに建つ家々は視界から隠れ、視線は森から空へと抜けていく。そして30cm幅の手摺笠木は机にもなり、低く抑えた手摺壁ではあるが十分な安心感を得たように思う。
このバルコニーまで連続した主空間は、平面は2倍正方形、高さは3対4の矩形からなる立方体の領域として、全体の比例秩序の中に挿入され、特別な場所として山の斜面に浮かび上がった。

この南へ張り出したバルコニーは、山側では屋根を支える壁梁で吊り、谷側では黒く塗られた鉄の方杖で支えている。南北に架けられた壁梁は、構造体であると同時に、山側では玄関や本棚、キッチンといった暮らしを支える場を囲い、リビングと緩やかに仕切っている。階段を登りこの壁梁を潜ると、一気に視界はひらけ、バルコニーと一体となった主空間が立ち現れる。

ここで私は敢えて「場所感」という言葉を使った。場所の定義は、プラトンのコーラやアリストテレスのトポスとして、古代より数多く語られてきたが、難解な哲学的議論でもあった。しかし、私にとっての場所とは、どこに想いが宿っているかという極めて個人的な感覚によって捉えている。
そこには 「豊かに暮らしてほしい」という願いが込められ、作り手の心が滲み出ていることが大切であり、そのような場所を「場所感」のあるところと述べた。

一方、建築界では「空間」という言葉を使い、意識して久しく、素晴らしい建築空間も数多く作られてきた。
しかし、それらは視覚的な空間表現に軸足が置かれ、設計者の実験的検証の場となった建築も多い様に思える。空間に必要な感覚こそ「場所感」であり、そこに願いや祈りを込める事ではないであろうか。

子の成長を願う母のような心があれば、その空間はおのずと豊かな場所となるはずである。その心こそ「愛」に違いない。この言葉は建築界では使われて来なかったが、最近では恩師・槇文彦先生が「無償の愛」という重要な言葉で我々に問いかけた。そこから見えてきた心がこの愛を伴う「場所感」である。

その心は丁寧に作られたディテールや、家族の集うテーブルなどの家具に始まり、それが部屋に満ち、建築全体に広がり、街へと連鎖していく。それは我を忘れてひたすらにそこに集う人たちに良かれと願い、自我のなす作為が消え去った時にのみ、現れてくるように思う。

ここに紹介した比例も、ここに住む人のために良き場所をと願いつくった建築が、いつのまにか美しい比例を獲得していたことに気づいたのである。

私にはプラトンの言うイデアの似姿として、創造主デミウルゴスが創った宇宙の幾何学に建築が共鳴するかのように思えた。これこそが、愛の顕現であるかのように。

■建築概要

建物名称:大きな屋根の家
所在地:長野県北佐久郡
主要用途:住宅
家族構成:夫婦+子供2人
設計:矢板建築設計研究所 担当/矢板久明、矢板直子、小沼翔太、栗原佳子
構造:小島大輔構造設計事務所 担当/小島大輔
設備:島津設計 担当/島津充宏
コーディネート:SUVACO
施工:建築工房・市川 担当/市川邦一、市川優太
設備:長野スーパー 担当/倉島久吉
電気:市川電気 担当/市川晃明
基礎工事:新開建設 担当/小井戸袈裟義
建方・造作大工:YUIKEN 担当/油井隆雄
プレカット:カネト 担当/高見澤崇、西村健(タツミ)、佐藤淳一(タツミ)
屋根工事:ヨダ工業 担当/依田卓也
金属工事:浅間鋼機 担当/小平一己 井出雄一
塗装工事:ヨダ建装 担当/依田幸司
木製建具・造作家具:ミツルヤ製作所 担当/禰津吉通、藤森隆史
外構・造園:箱根植木 担当/保永博文 長澤仁志、岡田和久
地域地区:長野県景観条例 軽井沢町の自然保護対策要綱
防火指定:法第22条指定地域
道路幅員:南側5.4m 東側5m
駐車台数:2台
主体構造・構法:木造
基礎:ベタ基礎
階数:地上2階
軒高:8,338mm
最高の高さ:9,176.5mm
敷地面積:605.56㎡
建築面積:96.04㎡(建蔽率15.86%、許容30%)
延床面積:139.71㎡(容積率23.07%、許容50%)
地階:12.00㎡
1階:60.16㎡
2階:67.55㎡
設計期間:2023年8月~2024年3月
工事期間:2024年4月~2025年2月
撮影:小川重雄

建材情報
種別使用箇所商品名(メーカー名)
外装・屋根屋根

カラーGL鋼板 平葺き

外装・床テラスデッキ

唐松 t=30(第三木材)OS

外装・壁外壁

唐松t=12下見板貼り(第三木材)OS

外装・建具開口部

木製建具(ウッドテック秋富)
アルミサッシ:サーモスⅡ(LIXIL)

内装・床リビング、ダイニング、キッチン 床

チーク無垢フローリングt=15mm(IOC)

内装・床主寝室、子供室、書斎1・2 床

チークフローリングt=12mm(IOC)

内装・壁主要箇所 壁

PB t=12.5mmの上 漆喰塗り(ブルーモンタナ)

内装・天井リビング、ダイニング、キッチン 天井

唐松板貼り t=12mm(第三木材)OS

内装・天井主寝室、子供室、書斎1・2 天井

PB t=9.5mm 漆喰塗り(ブルーモンタナ)

内装・建具リビング、ダイニング、キッチン ブラインド

木製ブラインド(JBS)
シェード(ハンターダグラス)

内装・キッチン厨房機器

(モービリティーポ)

内装・造作家具リビング、ダイニング、キッチン 造作家具

テレビ台+ベンチシート(ミツルヤ製作所)

内装・設備リビング、ダイニング、キッチン 薪ストーブ

Hwam Classic 4(DLD)

内装・その他リビング、ダイニング、キッチン クッション

(LOSKA)

外構・壁壁

浅間石練積み擁壁

外構・その他階段

枕木階段

※企業様による建材情報についてのご意見や「PR」のご相談はこちらから
※この情報は弊サイトや設計者が建材の性能等を保証するものではありません

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    塩入勇生+矢﨑亮大 / ARCHIDIVISIONによる、北海道・札幌市の「maison y maison」。代々受け継がれた土地の設計者実家の増改築。終の棲家であり未来に繋がる存在を求め、増築した上で既存の半分を共同住宅・テナント・共用部に転用し保存する計画を考案。地域の活動が入り込み新たな交流も生まれる
  • 2024.10.23Wed
    キー・オペレーションとパーク・コーポレーションによる、富山市の「十全化学本社社屋」。医薬関係の製造企業の新社屋。自由な交流の尊重を意図し、“集中”と“交流”の切替が可能となるゾーニングの建築を考案。四周のバルコニーは環境調整や気分転換の役割に加えて“陰影のあるファサード”も生み出す
  • 2024.10.07Mon
    宮崎晃吉 / HAGISOによる、茨城・笠間市の「ATAGO FOREST HOUSE」。自然公園にある建物と周辺環境を整備する計画。“地域の憩いの場”で“観光拠点”を目指し、“心も体も切り替わる中継地点”としての建築を志向。既存への“円弧状のテラス”などの増築と共にサインまでも見直す
  • 2024.9.12Thu
    teamSTARによる、神奈川・横須賀市の「Villa A」。眼前に海が広がる敷地。海底を思わせるホールから“貝殻をイメージした螺旋階段”を登り、富士山と海に向けた“アーチ屋根”に覆われた主要階に到達する構成を考案。屋根の形は土地の高低差に合わせ階段状とする
  • 2024.8.19Mon
    トラフと園田慎二による、神奈川・箱根町の「彫刻の森美術館 森の足湯」。“アートと自然が共存する屋外空間”の足湯の改修計画。環境にふさわしい存在を目指し、“美しい山の風景”を望みながら浸かれる空間を考案。15種の“多様な表情の石種”を組合わせた造形で彫刻群との調和も意図
  • 2024.4.26Fri
    STA土屋辰之助アトリエによる、千葉・いすみ市の別荘「SHouse IS」。眼の前に川と海を望む敷地での計画。建具を用いた流動性を高める設計などで、常に“外部”を感じながらも“包まれる”様な感覚の内部空間を構築。リビングでは“シンプルな表現”で自然への開放性を確保する
  • 2023.11.16Thu
    浅利幸男 / ラブアーキテクチャーによる、東京・府中市の「花藏院霊園『ようようの庭』」。社会変化への対応も主題とした墓地。現代的な墓の在り方を考慮し、“個別墓”と“合祀墓”を連携した“生命の循環”にも対応する形式を考案。其々の墓を“苔庭”と“築山”に分散配置し回遊式の日本庭園として造る
  • 2023.11.06Mon
    伊瀬和裕 / テトラワークスによる、広島・三原市の「糸崎の家」。三方を道が囲む海を見下ろす敷地。外からの視線の遮断と存在する自然との接続を求め、敷地の形に沿った“くの字”形状で環境に応じて窓のサイズ等を調整した建築を考案。リビングの大開口から瀬戸内の景色を取込む
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    最も注目を集めたトピックス[期間:2026/6/1-6/7]

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    architecture|feature
    最も注目を集めたトピックス
    最も注目を集めたトピックス[期間:2026/6/1-6/7]

    アーキテクチャーフォトで、先週(期間:2026/6/1-6/7)注目を集めたトピックスをまとめてご紹介します。リアルタイムでの一週間の集計は、トップページの「Weekly Top Topics」よりご覧いただけます。(弊サイトでは、作品記事についてSNS広告を活用した再発信を行う場合がありますが、その流入はランキングに影響しないよう設定しています)


    1. 石上純也の「徳島文化芸術ホール」をテーマとした展覧会が、開催中止に。主催者のJIA 四国支部 徳島地域会と石上純也建築設計事務所がコメントを公開
    2. kurosawa kawara-tenによる、千葉・大多喜町の「SさんAさんのための家」。プライベートを大切にする家族の為の二世帯住宅。道のある南側に水廻りを配して視線を遮り、北側に“木の塊”の様な居住空間を配置する構成を考案。カーテンウォールは採光に加えて世帯間の緩衝地帯としても機能
    3. 石上純也の「徳島文化芸術ホール」をテーマとした展覧会が、2026年6月1日に開幕。開催場所は、徳島市万代町の“第一倉庫”。約2,000枚の実施設計が完了している建築の模型やドローイングを展示
    4. 佐久間徹設計事務所による、東京の「吉祥寺の書庫」。数万冊の書籍を収納する為の住宅。効率の良い収蔵と共に“過ごす時間が楽しくなる”場を求め、中庭を囲むように書棚と廊下を配置する構成を考案。幅に変化のある回廊は歩くたびに“本と緑との距離感”が変わる
    5. トラフによる、京都市の「GODIVA Bakery ゴディパン 京都四条店」。錦市場に隣接する場所のベーカリーショップ。“街の延長としての店舗”を求め、歴史ある街並みと呼応しつつ“開かれた構え”のファサードを考案。丸みのある庇・木製建具・イラストで“人を引き寄せる表情”も意図
    6. 篠原一男による「上原曲り道の住宅」(1978年) をレポート。“第三の様式”の作品のひとつとして知られる。篠原が重要視した“ずれ”を強調する、鉄筋コンクリートの柱が広間にそびえる建築。詩人の鈴木志郎康とその家族の住まい
    7. 大野力 / sinatoによる、東京・千代田区の「12 KANDA」。パブリックな用途も含むシェアオフィス。個室群の“街への対峙”も意図し、屋外避難階段を表側でバルコニーと繋げて“日常動線”にする構成を考案。基準階の反復ではなく異なる“形と機能”が積層する建築を造る
    8. 服部信康+古賀将太による、愛知・豊橋市の住宅「馬小屋と橙の納屋」。様々な規模や機能の建物が混在する地域に計画。“家族が同じ気配を共有する暮らし”を求め、大屋根の下に“馬小屋の様に潔い一室空間”を配する構成を考案。“納屋状”の離れで主屋との間に“中間的な環境”も創出
    9. 石上純也の「徳島文化芸術ホール」をテーマとした展覧会が開催予定。約2,000枚の実施設計が完了している建築の模型やドローイングを展示。ホール計画が混迷を極める中で様々な可能性を考える機会を提供。関連シンポジウムの企画も進行中
    10. ランサ・アトリエによる、サーペンタイン・パヴィリオン2026「a serpentine」。毎年一組が選ばれ造られる期間限定の建築。“身近な素材や形態を再解釈”する設計姿勢に基づき、周辺の建物や伝統的な蛇行する壁から着想した煉瓦壁を用いた建築を考案。壁の意味も再考して“透過性”を付与する
    11. 熊谷・石上純也・IAO竹田・アクト環境・ピーエス三菱・野村建設JVによる「徳島文化芸術ホール(仮称)」の基本設計概要が公開。花弁を想起させるテラスの連なりが特徴的な建築。テラスからの新しい鑑賞体験や壁面を活用した映像発信も計画。“ホールの新たなあり方”や街に開き人を引き込む事も追求
    12. OMA / クリス・ヴァン・ドゥインによる、中国の「杭州プリズム」。集合住宅や事務所などを内包する複合ビル。私的用途と都市空間が分離する状況に挑戦し、基部に誰もがアクセス可能な“屋外アトリウム”を配する構成を考案。イベントやコミュニティ活動での交流を最大化する
    13. 青木淳と品川雅俊の建築設計事務所「AS」のウェブサイトがリニューアル。建築作品の写真に加えて、詳細図やドローイングなども多数掲載
    14. 妹島和世による、岡山・玉野市の「Power Base モジュール工場」。自然エネルギーに関わる企業“Power X”の為に計画。約6300㎡の蓄電池モジュールの生産拠点施設。快適な労働環境の構築も意図
    15. 藤田時彦 / atelier umiによる、兵庫・尼崎市の美容室「OUD」。公園に面するビルの地上階での計画。木々の借景化とイベント時の使用を考慮し、細フレームの“ガラス引戸”として内外を繋げられるファサードを考案。内部では時間を経て“味わい”を得た躯体を活かす設計を意識
    16. OHMURA NAKAMURA ATELIERによる、埼玉・日高市の「横手の家」。南から北に地盤レベルが段々と下がる造成地での計画。南の隣家から影が落ちる環境に対し、片寄棟屋根の2つの量塊をずらして重ね合わせる建築を考案。ズレから生まれる“スリット窓”から光を導くと共に眺望も確保
    17. フォスター+パートナーズによる、中国・上海のギャラリー「Jia Art」。同事務所が手掛ける都市計画の中心に位置する施設。開発を象徴する存在として、地域の花に着想を得て“四枚の花びら”を模した形態の建築を考案。光を反射するガラスリブで“動きと表情のある外観”も生み出す
    18. 石上純也建築設計事務所による、山口の「House & Restaurant」。旧知の友人の為の住宅兼店舗。“時間と共にその重みを増していく”空間の要望に、地面に穴を掘りコンクリートを流して土の中の躯体を掘り起こしガラスを嵌める建築を考案。不確定要素を許容し使い方の発見更新を繰り返して作る
    19. 鎌倉市の新庁舎等基本設計プロポーザルで、日建設計が最優秀者に選定。コンセプトは「ひとつながりの未来の庁舎『鎌倉ONE』」。提案のイメージも公開
    20. 【ap Masterpiece】OMAによる、フランスの「ボルドーの家」(1998年)

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    最も注目を集めたトピックス
    2026.06.08 Mon 07:07
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    2026.6.06Sat
    • フランク・ゲーリーの展覧会の会場の様子を収録した動画。逝去後はじめての展覧会としてビバリーヒルズのガゴシアンで開催。2026年6月に公開されたもの

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